国道357号 空港北トンネル防災設備点検

一般道路

空港北トンネルは、羽田空港と京浜島とを結ぶ国道357号の、車専用のトンネル。一年に一度、トンネルを通行止めにして防災設備の点検が行われるということで、「国道357号 空港北トンネル防災設備点検」を取材をしました。
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2007年は、10月27日23時30分から10月28日5時まで、防災設備の点検のために全面通行止めとなります。事故などの車両火災発生時、防災のための設備が正常に動作するかどうかを確認する、放水試験が行われます。

総延長:1,487m、車線数:東行き(千葉方面)2車線・西行き(神奈川方面)3車線、設計交通量:4,100台/時間。1993年に共用を開始しました。
国道357号と首都高速道路湾岸線とが並行する構造となっていて、羽田空港の滑走路の下を通り、空港や環状8号へアクセスできます。
空港北トンネルは、京浜島にある「京浜島換気所」で監視や管理が行われています。操作制御設備として監視盤、操作卓、グラフィックパネルなどが設置され、設備の運転状況を監視して、場合によってはトンネルを通行している車に対して警報表示などを行います。
photo photo photo photo昼間が3名、夜間は4名の、監視員の方々が勤務されています。
この日は点検ということで、道路を規制する業務を含めて100名ちかくの方々が出勤されたようです。
photoメインのパネルを見ることにより、交通量や設備の状態などが一目瞭然になっています。
通行止めになるまでの時間、換気所を見せていただくことができました。
上の階には会議室があり、窓からは羽田空港を一望することができます。着陸による順番待ちの飛行機が数機、滑走路の上空で待機している光景が印象的でした。
地階には、換気動力室や自家発電機室など、トンネルの維持に必要な機械が備わっています。
photo photo photo photo photoトンネルでは、災害時の停電が事故を招く恐れがあります。電気が途切れることのないよう、自家発電機が待機されています。
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自家発電設備として、発電機が1台、燃料貯油槽に12000リットルの燃料などがあり、約40時間は何にも頼ることなく発電を行うことができます。
photo photo photo photo通行止めの時刻が近づいてきたため、中央操作制御設備のスペースへと戻ります。人も集まり、緊張感が伝わってきます。設備の中には、運転中の車へダイレクトに情報を伝える手段として、ラジオの電波に割り込むための装置もありました。
photo以前、拝見した「国道20号 新宿御苑トンネル防災設備点検」よりも通行止めは大がかりで、規制車の配備は10箇所にも及びます。事前の準備として、1ヶ月前より通行止めの告知の看板を80箇所に設置、2週間前より電光掲示板にて告知、朝のニュースなどで情報を放送したとのこと。
0時を過ぎて一般の交通が遮断されました。防災設備の点検のため、トンネルへと移動します。
photo photo photo photo photo港湾や滑走路の下を通るため、トンネルは一直線の下り坂となっています。
トンネルには非常用施設として「消火・水噴霧設備」「通報設備」「警報設備」「避難誘導設備」など、たくさんの対策が用意されています。この日の防災設備の点検は、1箇所の消火栓と、すべてのスプリンクラー(=水噴霧装置)による放水の確認となります。まずは消火栓の点検です。
photo photo photo photo photo photo消火栓は50mおきに上下線合わせて58台設置され、ホースの長さを30mとすることで、火災におけるすべての範囲をカバーします。消火栓から出るのは、消化剤ではなく、水となります。
スプリンクラーの点検がはじまりました。煙の発生と同じような状態をつくる装置で、設備が正常に機能するか確認します。
photo photo photo photo25mを1区画として、東行きと西行き合計108区画、片側車線だけで59区画にスプリンクラーが設置されています。
photo photo photo photoスプリンクラーは車線の左側上部に備わり、道路の隅々まで水が届くようになっています。一部、換気機設備のジェットファンがある場所においては、水をすべてに行き渡らせるため、右側上部にもスプリンクラーがついています。
photo photoスプリンクラーの点検は、首都高速道路を挟んだ反対車線でも同時に行われています。東行きと西行き両方の点検における管理を京浜島換気所だけで行うため、対応は東行きと西行き交互となり、点検には多くの時間がかかることになります。
photoジェットファンは、トンネルの中の空気を排風および送風することによって、排気ガスによる視界の不良を回避します。
点検が行われた後方には、噴霧された弁にキャップをはめる作業が進められています。
photo photo photo photo設置されている消火器の交換も行われていました。2本1組の消火器は、50m間隔、東行き西行き合計118ヵ所に設置されています。
港湾を抜ける位置から、トンネルは一直線の上り坂となります。
photo photo photo photo photo非常口は小さい扉と大きい扉があり、開けるとセンサーが感知して京浜島換気所へ知らされます。火災が発生した場合、並行する首都高速道路湾岸線へと避難することになります。
滑走路の直下にあたる位置は、トンネルの開口部となっています。見上げると月が静かに輝いていました。
photo photo時計を見ると2時を少し過ぎたところ。1回きりの休憩時間もわずかなもので、すぐに点検へと戻ります。
ひとつの区画のスプリンクラーを確認し、数分かけて点検し、次の区画のスプリンクラーを確認するという作業が続きます。
photo photoようやくトンネルも終わりが見えてきました。この先には羽田空港があります。
後方では、排水管清掃車と側溝清掃車による清掃が行われています。
photo photo photo photo防災設備の点検に合わせて、清掃は必ず行われるようです。
734mの第1トンネル、134mの開口部、619mの第2トンネル、すべての点検を終えると、時計は3時15分を指していました。
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photoひととおりの作業が一段落したため、来た道を歩いて京浜島換気所まで戻り、防災設備の点検は完了となります。
photo取材して驚いたのは、新宿御苑トンネル防災設備点検と同じく、誰一人として飲み物やタバコを口にせず、一気に点検を終えてしまうということ。限られた時間の中で、作業に従事し業務を完了させる責任の重さを知ることができました。
トンネルの利用者として、無理な運転をせず、有事の際には慎重な対応ができるよう努めたいものです。
取材を応じてくださいました、国土交通省東京国道事務所の植松様に心よりお礼申し上げます。