下水道 江東幹線その2工事

江東幹線は、江東区内の浸水被害を軽減するために整備されている下水道管です。
2017年(平成29年)7月20日、「江東幹線その2工事」を取材しました。

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東京都江東区内の下水道の整備が始まった昭和初期、降った雨の約半分は地面に浸み込み、残りの半分が下水道に流れていました。道路が舗装され空き地もなくなった今、大雨の際には雨水が下水道へ集中してしまい、浸水被害がたびたび発生しています。
江東区内の浸水被害を軽減するため、江東幹線(こうとうかんせん)と呼ばれる大きな下水道管が整備されています。

葛西橋通りの豊住公園前交差点付近の木場公園用地内に、工事始点となる巨大な建設ヤードが設置されています。防音ハウスを設置し、工事騒音を低減するようにしています。

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江東幹線の概要を示すパネルが設置されています。造られる下水道の大きさと位置、現在の施工箇所がわかります。

建設ヤードの中に設置された中央監視室で、トンネル工事について管理されています。

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大雨と呼ばれる1時間で50mmの降雨に対して、約80%を取り込める下水道の整備が工事の目的です。工事費は約86億円となっています。

下水道管となるトンネルは、シールドマシンと呼ばれる円筒形の機械で掘り進められています。前面についた回転するカッターで地中を掘り進めながら、同時に、壁となるセグメントを組み立てます。

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シールドマシンは外径6,840mm、全長9,090mmあります。
シールドマシンが掘った土は、水(泥水)と混ぜて泥水にして、ポンプで建設ヤードへ送られます。送られた泥水は土と水(泥水)に分けられ、一部の水(泥水)は再びシールドマシンへ送られて、残った泥水は圧縮して土と水に分けられます。この方法から「泥水圧式シールド工法」と呼ばれます。

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シールドマシンの操作や機器の管理は中央監視室で集中管理され、トンネルを昼夜間の2交代制で掘り進みます。

工事始点である深さ約33mの発進立坑から発進したシールドマシンは、江東ポンプ所付近にある、辰巳の森緑道公園内に設置中の深さ約45mの到達立坑まで、約4.3kmのトンネルを造ります。江東幹線は、下流側へ1m進むと約0.5mm下がる勾配になっています。
シールドマシンは時速約1.5mで進み、1m進むとダンプトラック約10台分の土が出ます。
工事は以下に分けられています。
江東幹線工事:延長2,173.25m
江東幹線その2工事:延長2,090.65m・工期は2018年(平成30年)2月2日まで

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トンネルを掘る地中の大部分は柔らかい粘土で、一部は硬い砂利です。
地下水にメタンガスを含む地層があり、水に溶けているメタンガスはトンネル内部に侵入すると気化してしまいます。このため、引火の要因となるシールドマシン内部の蛍光灯や電気機器はすべて、爆発しないもしくは爆発が周囲に広がらない防爆仕様となっています。

トンネルの大きさは内径6.0m、外径6.7m(一部6.67m)です。土被りと呼ばれる地面からトンネルまでの深さは25.28m〜37.98mあります。

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直線や曲線の箇所では鋼材とコンクリートを合成した特殊二次覆工一体型セグメントが使われ、計画管接合部や急曲線部では鋼製セグメントが使用されます。

建設ヤードの中を見てみます。セグメント置場があり、シールドマシンに送られるセグメントが用意されています。

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ゼグメントを6つ組み合わせることで円筒となり、内径6m・幅1.5mのトンネルの壁ができます。動物の中で一番背が高い体高約5.3mのキリンがすっぽりと入るトンネルです。

奥に泥水処理設備があり、手前にはセグメントや資材を搬入する資材投入開口があります。天井には、セグメントを資材投入開口から立坑の中へ下ろすための20t吊り天井クレーンが設置されています。

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資材投入の開口部から発進立坑を覗きます。シールドマシンは分解された状態で発進立坑の底へ降ろされ、発進立坑の中で組み立てられて発進しました。

エレベーターを使用して発進立坑の下へ降ります。

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30秒ほどで発進立坑の底へ着きました。

西側には、シールドマシンの掘り進めたトンネルの坑口があります。
シールドマシンまで延びるレールが敷かれています。サーボロコと呼ばれる電気機関車で、人やセグメントを人車や台車で運びます。

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発進立坑から到達立坑まで4,263.9mあり、取材時点で掘削は4,200mまで進んだことが示されています。

天井を見上げると、先ほど上から覗いた資材投入の開口部があります。

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サーボロコに連結された人車で、最大8人がシールドマシンが掘り進めているトンネルの先端へ移動できます。

トンネルの上部には、空気を送る管が通っています。切羽と呼ばれるトンネルの先端の空気を、地上へ排気しています。

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トンネルの脇には、シールドマシンが使用する水などの配管が通っています。

サーボロコに連結された人車に乗り、トンネルを掘り進めているシールドマシンを目指します。

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制限速度は8km/hで、1区間単線で1車両のみ走行できます。

片側には歩行用通路があり、歩いて移動できます。

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曲線や分岐の箇所では、制限速度が3km/hになっています。計画管接合部や急曲線部では、鋼製セグメントが使用されています。

曲率半径R=50mの箇所です。

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シールドマシンは急なカーブを曲がるため、中折れ式となっています。

待避線と通過線がある、分岐と合流の箇所です。信号機は、右側が通行できることを示す青の右矢印が点灯しています。

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待避線には、セグメントを積んだ台車が停まっています。

先へ進みます。

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赤色の電飾で囲われた範囲の中に、退避所が設置されています。遠くからでも認識しやすくなっています。

退避所には、メタンガスが出た際や停電時に使用する、避難袋があります。中身は、ろ過式避難用防煙マスク、ゴーグル、ロープ、ライトです。

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天井には、坑内ガス濃度測定装置のメタンガス検知部が設置されています。中央監視室でガス濃度を管理および自動記録して、濃度が1.0%を超えると作業を中止し、坑内より避難します。

45分ほどの時間をかけて、シールドマシンの近くに到着しました。

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シールドマシンを動かすための機材の台車が並びます。

シールドマシンの背面が見えてきました。

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シールドマシンの背面です。これから使用されるセグメントが置かれています。

シールドマシンは通常、1分間に前面のカッタを約0.76回転させて、25mm程度掘進します。

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シールドマシンは自らが設置したセグメントを足場にして、21本のシールドジャッキで前面へ押し出しながら掘削していきます。

1週間前の7月13日、江東幹線の一部を見学した地元の小学生が、記念として発進立坑でセグメントに寄書きしました。

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寄書きされたセグメントはシールドトンネル先端に運ばれ、この日、トンネルの一部として姿を現していました。

移動してきた工事始点の方向を見ます。

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トンネルに軌条設備があるためわかりづらかったシールドトンネル本来の円筒形を見ることができます。

発進立坑へ戻ります。行きはサーボロコが人車を引っ張り、帰りはサーボロコが人車を押します。

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江東幹線に直径1800mmの下水道管を接続する予定の箇所として、計画管流入位置Φ1800と書かれています。計画管を接続するため、合成セグメントではなく鋼製セグメントが使用されています。

地上にある建築物が示されています。この箇所の地上部分には江東区木場5丁目の沢海橋があります。

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勾配9‰(パーミル)の終点があります。1m進むと9.0mm上がることになる勾配です。

移動する場面の動画を用意しました。

クリックすると再生します

45分ほどの時間をかけて、発進立坑へ戻ってきました。

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これにて「江東幹線その2工事」の取材は終了となります。

第一基幹施設再構築事務所の武見工事第一課長は「本工事は浸水被害の軽減が期待できる重要な工事と考えています。3つの地下鉄や運河の下を通過する難工事ですが、完成に向け慎重に施工管理しながら着実に進めています。」と語りました。

江東幹線により、浸水被害が減ることを願います。

公式:東京都下水道局