鬼怒川工事見学会(新石下地先・向石下地先)

河川

茨城県常総市では、鬼怒川の水害を防ぐため、治水事業が進められています。
2017年8月26日、地域住民への工事見学会が行われました。

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約2年前、2015年9月9日から11日にかけて、関東地方と東北地方で豪雨がありました。鬼怒川の堤防が決壊したことで、鬼怒川と小貝川に挟まれた広範囲が水没し、茨城県常総市では人的および家屋が全半壊する激甚な被害を受けています。
現在、「鬼怒川緊急対策プロジェクト」の一環として、堤防の新設および護岸の整備が行われています。

工事見学会は、時間をずらして以下の2箇所で行われました。
・鬼怒川左岸22km付近(茨城県常総市新石下地先)
・鬼怒川右岸23km付近(茨城県常総市向石下地先)

●新石下地先で実施している工事
新石下築堤工事沿川地区の住民を対象に、10時から鬼怒川左岸22km付近の会場で工事見学会が始まりました。
メイン会場となるテントで、工事の説明が行われます。

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延長約1,140mの区間において、もとの堤防の高さから約1.5mの盛土を行い、新たな堤防をつくります。斜面に芝を張り、堤防の上部をアスファルト舗装して、水路を設置します。

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主な工種は以下の通りです。
施工延長:約1,140m
盛土量:約71,900㎥
張芝面積:約28,500㎡
天端舗装:約6,700㎡

3社で区画を分けて、ICT(情報通信技術)を駆使して日々の品質チェックなど連携・調整をはかりながら、施工が行われました。

■工事の概要
工事費(消費税を含む):約4億円
発注者:国土交通省 関東地方整備局
施工者:(株)野澤實業・(株)高橋芝園土木・田部井建設(株)

いろいろな工事の体験コーナーが用意されています。

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体験コーナーを回り、配布された体験・チャレンジシートにシールを集めることで、ヨーヨー釣り、かき氷、わたあめ、ポップコーンと交換できます。

高所作業車乗車体験です。高所作業車に乗り、高所から新石下築堤を見ます。
鬼怒川の下流方面です。右手から鬼怒川、工事用道路、今回工事を行った鬼怒川堤防となります。壁が水色の水色新石下排水樋管があります。

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鬼怒川の上流方面です。鬼怒川に架かる石下大橋が見えます。

測量機器展示・実演があります。ドローンやレーザースキャナを間近で見ることができます。

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今回の工事で、ドローンは堤防を立体的に測量するため使用されました。

建設機械の試乗体験・展示があります。バックホウに乗ることができます。

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バックホウは今回の工事において、堤防を階段状に掘削してすべりによる崩れを防止する「段切り」や、法面整形を行うために使用されました。法面(のりめん)とは、切土や盛土でつくられる人工的な斜面です。

含水比測定体験があります。機器を使って、土に含まれている水の量を測定することができます。

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砂、粘性土、再生砕石を配合して、工事で使用する改良土をつくります。改良土に含まれる水の量は、最適になるよう調整されています。

芝張り体験です。法面に芝を張る作業を体験できます。

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芝には日本芝と西洋芝があり、ここでは多く利用される日本芝が張られます。西洋芝は美しい反面、非常にデリケートなので、使用される場所が限られます。

堤防ウォーキングとして、堤防天端道路を歩きます。

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堤防天端道路は家屋よりも高い位置にあり、堤防が街を守る存在であることを実感できます。

測量体験、大声チャレンジ、振動体験があります。騒音計に向かって大声を出して大きさを測定できます。

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測量機を使って、距離の測量を体験できます。角度や水準、高低差などを測定することが可能です。

新石下地先で実施している工事の見学はここまでとなります。

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工事について、従来は計測作業や計測結果の書類作成・整理に労力を要していました。今回は作業の多くを自動化することで、品質管理が効率化されたとのことです。

●向石下地先で実施している工事(向石下築堤護岸工事)
向石下築堤工事沿川地区の住民を対象に、13時30分から鬼怒川右岸23km付近の会場で工事見学会が始まりました。
メイン会場となるテントで、工事の説明が行われます。

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延長約230mの区間において、盛土による堤防のかさ上げ、拡幅およびコンクリートブロック積みを行っています。

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主な工種は以下の通りです。
施工延長:約230m
盛土量:約7,000㎥(10tダンプ約1,400台分の土量)

■工事の概要
工事費(消費税を含む):約4.7億円
発注者:国土交通省 関東地方整備局
施工者:松浦建設(株)・名倉建設(株)

高所作業車に乗ることができます。

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高所から向石下築堤を見ます。

鬼怒川の下流方面です。鬼怒川に架かる石下橋が見えます。

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鬼怒川の上流方面です。

クレーンが配置され、大型積みブロックが施工されています。

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大型積みブロックが展示されています。ブロックを11段積み、高さ約7mの擁壁を築きます。居住の地区からは、擁壁が約1.2m見えることになります。

ブロックの施工が実演されました。

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大型積みブロックが慎重に積み上げられていきます。

向石下築堤護岸工事を進めるため、工事用道路の工事も行われています。約1kmにおいて盛土や根固めブロックなどで基盤を造成し、工事用道路を整備します。

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主な工種は以下の通りです。
施工延長:約1,000m
盛土量:約8,000㎥(10tダンプ約1,600台分の土量)
根固めブロック:約500個(1個あたり約2t)
袋詰め値固め:約1,600袋

まず、川の中に根固めブロックを設置します。
根固めブロックの強度は19.5N/mm²(ニュートン毎平方ミリメートル)で、10cm角のコンクリートで19.5tの重さに耐えられる強さとなります。
水セメント比は60%です。水とセメントの割合で、水が多いほど混ぜやすく型枠にも打ち込みやすい反面、コンクリートの強度は低下します。

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根固めブロックの上に袋詰め根固めを積みます。袋詰め根固めは、袋の中に15cm〜20cmほどの割栗石(わりぐりいし)が入っています。
根固めブロックと袋詰め根固めにより、法面に密着させて工事用道路を安定させることができます。

向石下地先で実施している工事の見学はここまでとなります。

国、県、市町で構成する鬼怒川・小貝川上下流域大規模氾濫に関する減災対策協議会では、今年度も9月3日〜10日を「水防災意識強化月間」と定め、関東・東北豪雨を風化させずに、住民一人ひとりが常に水防災を意識する社会を再構築するよう、集中的に普及・啓発活動に取り組んでいます。

参考:国土交通省 関東地方整備局 下館河川事務所 – ホーム