中央道(岡谷JCT〜伊北IC) 改良工事

NEXCO中日本

NEXCO中日本では「高速道路リニューアルプロジェクト(大規模更新・修繕事業)」として、高速道路の改良工事を行なっています。
中央道(E19中央自動車道)の、長野県の岡谷JCT〜伊北ICにある、老朽化した天竜川橋と辰野トンネルの改良工事を取材しました。

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2017年7月4日に取材したのは、以下の改良工事です。
・老朽化した天竜川橋(上り線)のコンクリート床版を新しい床版に取り換える工事
・老朽化した辰野トンネル(下り線)の覆工コンクリートを補強する工事
天竜川橋と辰野トンネルは、いずれも1981年(昭和56年)3月30日に開通して、約36年が経過しています。
辰野トンネルについてはNEXCO中日本の高速道路リニューアルプロジェクトとして、最初のトンネル工事となります。

改良工事のため、2017年の5月29日6時から7月17日24時までの土日を含む47日間、(E19)中央自動車道の岡谷JCT(おかやジャンクション)〜伊北IC(いほくインターチェンジ)で昼夜連続対面通行規制が行われています。

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上り線の天竜川橋付近を規制により閉鎖し、下り線の追越車線を上り線として、上下線各1車線を確保した対面通行規制が行われています。

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下り線の辰野トンネル付近を規制により閉鎖し、上り線の追越車線を下り線として、上下線各1車線を確保した対面通行規制が行われています。

中央道の上り線を進むと、天竜川橋の手前で1車線の対面通行になります。

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天竜川橋(てんりゅうがわばし)です。

橋梁の形式は「鋼2径間連続非合成鈑橋桁」、橋長は100.3mあります。

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老朽化して劣化が見られる床版の取替と、高性能床版防水の施工が行われます。

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老朽化して劣化が見られるRC床版を撤去して、プレキャストPC床版の設置が行われました。

既設のRC床版は、鉄筋コンクリート(Reinforced Concrete)の床版です。コンクリートの床版に鉄筋が入っています。舗装表面のひび割れから雨水や凍結防止剤がしみ込み、鉄筋が錆びて、コンクリート床版が損傷していました。

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既設のRC床版を切断します。

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写真提供:NEXCO中日本

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RC床版を剥離、撤去します。

あらかじめ別の場所で造られたプレキャストPC床版を設置します。

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PC床版は、プレストレストコンクリート(Prestressed Concrete)の床版です。
コンクリートは、圧縮する力に強く、引っ張る力に弱い特性があります。鉄筋の数倍の強度があるPC鋼材を緊張した状態にして周りをコンクリートで固め、コンクリートが硬化した後に緊張力を開放すると、コンクリートに圧縮力が与えられて強い床版となります。

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PC床版1枚の大きさは、長手方向2.0m、横断方向に9.852m、厚さ220mmです。

高性能床版防水工は、PC床版の上に何層ものコーティングを施すことで、耐久性を向上させるものです。

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この日は台風の影響による雨天のため、高性能床版防水工の施工は中止となりました。

天竜川橋の近くに、対面通行規制管制室が設置されています。

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工事における対面通行を24時間監視する施設です。大型のタッチパネルが設置されています。

Bluetoothやモバイルスピードセンサー(MSS)を用いて渋滞の長さや車の通過時間を把握し、道路に設置されたLED板へリアルタイムに情報が提供されます。

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設置された24台のビデオカメラにより、車両の流れを監視しています。

辰野トンネルへ移動します。

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辰野トンネル(たつのトンネル)の下り線は延長220mです。リニューアルの看板が設置されています。

老朽化して劣化が見られる天井部分には、炭素繊維シートや、はく落防止シートを貼付ける施工が行われ、側壁部分では鉄筋コンクリートの塩害防止のための表面被覆を貼付ける施工が行われます。

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損傷した監査廊および水路の取替や、損傷した舗装の打替え工事、通信管路の取替工事も同時に行なっています。

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完了した路肩部の監査廊および点導水補修の箇所です。

トンネルを掘る際に多く用いられるNATM(ナトム)工法は、コンクリートの裏面に防水層があり、湧水や雨水が漏れてこない構造になっています。30年以上前に掘られた辰野トンネルでは防水層が設置されていないことから、湧水や雨水が漏れやすく、排水のための水を導く必要があります。

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トンネル上部からの水は、地面の排水溝まで導かれていました。

舗装された路面の目地に、アスファルトの流し込みが行われています。

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不規則なひび割れを防ぐため、目地を切削することで、乾燥時のひび割れを目地部分に集中させることができます。

高所作業車により、覆工コンクリート補強が行われています。

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ひび割れ発生の樹脂注入補修と断面修復を行った後に、炭素繊維シートや、はく落防止シートを貼り付けます。

ひび割れ箇所に、注射器のような器具でエポキシ樹脂が注入されます。エポキシ樹脂は固着性が高い接着剤です。

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ひび割れが小さければ、ひびにエポキシ樹脂を注入して修復します。ひび割れが大きければ、ひび割れ付近のコンクリートを除去した後にエポキシ樹脂で断面修復します。

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修復した箇所に、はく落防止シートまたは炭素繊維シートを貼ります。接着剤として、エポキシ樹脂を使用します。

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炭素繊維シートは、覆工コンクリートのひび割れ変状が大きいものについて、補強とはく落防止を目的として施工します。

湿度が高いと作業できないため、日数の余裕はありません。対面通行規制による通行止めの期間だけでは完了できないので、通行止め解除後も交通に支障のないよう、車線規制により作業は続きます。

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高速道路リニューアルプロジェクトとは、高速道路の本体構造物のライフサイクルコスト(役目を終えるまでにかかる全ての費用)の最小化、予防保全(故障や不具合が生じる前に行う保全方法)および性能向上の観点から、必要かつ効果的な対策を講じることにより、高速道路ネットワーク機能を長期にわたって健全に保つために行うものです。

安全と安心は、次の世代へつながれていきます。

公式:高速道路リニューアルプロジェクト_NEXCO 中日本