東京港臨港道路南北線及び接続道路 現場公開

一般道路

 東京港臨港道路南北線は、東京都及び国土交通省が整備した中央防波堤地区と有明地区を結ぶ道路です。開通前日の2020年6月19日、報道関係に現場公開が行われました。

 東京港では輸出入におけるコンテナ貨物の取扱量増加に対応するため、中央防波堤外側地区に新たなコンテナターミナルを整備しています。一方、中央防波堤地区へのアクセスは東京港トンネルや東京ゲートブリッジが整備されているものの、中央防波堤地区と有明地区を南北方向に結ぶアクセスは青海縦貫線(第二航路海底トンネル)のみとなっていました。

 青海縦貫線はコンテナ貨物の輸送車両の集中で顕著な交通混雑が発生しており、今後のコンテナ貨物量の増加や中央防波堤地区の開発に伴って、周辺ではさらなる激しい交通混雑が予想されます。新たな南北方向のアクセスとなる東京港臨港道路南北線及び接続道路(東京港海の森トンネル、海の森大橋)を整備することで中央防波堤地区における貨物需要に適切に対応し、東京港全体の物流機能を強化します。

photo開通区間の広域地図 資料:東京都

東京港臨港道路南北線及び接続道路の開通により、以下の効果が期待されます。
 ・物流機能の効率化
 ・国際競争力の強化
 ・地域の安全安心の確保

 海の森大橋、臨港道路南北線が東京港臨海道路を横断するための臨海道路横断橋、臨海道路横断橋から東京港臨海道路に接続するランプ橋を合わせ「平成27年度中防内5号線橋りょうほか整備工事」として2015年10月~2019年11月に整備を進めました。開通区間のうちトンネル部分(2.5km区間)を国土交通省、それ以外の橋梁部や取付道路等を東京都が整備。東京港臨港道路南北線の一部となる東京港海の森トンネル(愛称:海の森トンネル)と海の森大橋の名称は公募で決定しました。

 まずは、東京港臨港道路南北線を都心に向かう有明地区方面へ進みます。左手には中防不燃ごみ処理センター、右手には東京都建設発生土再利用センターが建っています。

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 東京港海の森トンネル、地上部を含む延長は2459.5mです。

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 地上部、アプローチ部を通り、海上部へ向かいます。

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 東京港海の森トンネルの海上部は沈埋トンネル工法で進めました。沈埋函と呼ばれる巨大な箱型トンネルを海中に沈めて設置(沈設)する工法です。

沈埋トンネル工法には以下のような特徴があります。
 ・海底の浅い箇所に設置できるため、トンネル延長を短くできる
 ・大きな支持力を必要としないため、軟弱地盤にも対応できる
 ・ドックなどで製作するため、水密性が高く高品質なトンネルを築造できる

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 沈埋函は7つの函(1号函~7号函)で構成されています。1つの函は長さ約134m、幅約27.8m、高さ約8.3mで、これまでに国内で製作された沈埋函の中では最長となります。造船所のドックなどで製作し、完成後に現地へ曳航して海中に沈めて設置しました。7つの函すべてで930.8mになります。

photo工事に関する詳細図 資料:東京都

 通常、沈埋トンネルは通常8年から10年の工期を要しますが、約4年という短い工期で貫通しました。短い工期で進めるため、以下のような工夫が盛り込まれました。
 ・沈埋函の数を減らす
 ・陸上部における勾配を上げる
  →陸上のアプローチ区間の施工延長を短くすることで、施工規模を小さくできる
 ・キーエレメント工法を採用する
 ・沈埋函の製作工程をドックと海上に分散する

 道路の側面には消火設備や非常口を設置しています。非常口を開けると、安全な避難通路を通って地上へ避難できます。

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 トンネル内を車で走行していると沈埋函と沈埋函の区切りを連想させるような境目がありますが、沈埋函の区切りではなく、沈埋函のクラウンシール継ぎ手部分の舗装面伸縮装置箇所になります。これは、沈埋トンネルの不等沈下や地震動に伴う変形に追従させるための函体内部の可とう性継手であり、従来の沈埋函端部の継手方式より2倍以上の変形吸収性を有するものです。

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 折り返し、臨港道路南北線を東京湾方面に向かう中央防波堤地区方面へ進みます。

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 東京港海の森トンネルを抜けると、中央防波堤内側地区へ出ます。直進して海の森大橋を渡ることで、東京港臨海道路が通る中央防波堤外側地区へ行くことができます。

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 海の森大橋は、中央防波堤内側地区と中央防波堤外側地区の間に流れる東西水路を跨ぎます。橋長249.5m、全幅員34.3m、重量約6,000t、鋼単純ニールセンローゼ橋(アーチ橋)です。長大な橋梁を海上から一括架設するという、技術的に難易度の高い工事となりました。

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 基礎や橋脚などの下部工と並行して、橋桁など上部工を架設付近の地組ヤードで地組立します。橋桁を多軸式特殊台車に搭載した状態で大型台船に載せるロールオン作業と、運搬し橋台・橋脚の上に据え付ける一括架設作業の2段階で架設が進みました。
 ロールオン作業として、あらかじめ編成しておいた多軸式特殊台車を大型台船に載せて海上から運搬し、橋桁の下部へ滑り込ませます。橋桁を多軸式特殊台車で支持し、大型台船に移動させます。

photo工事に関する詳細図 資料:東京都

 続けて一括架設作業として、大型台船を回転させながら橋桁を運搬します。潮位の変化と台船の中のバラスト水を調整して、大型台船を橋桁の下から退出させます。その後、油圧ジャッキを活用して、アーチ橋を所定の高さまで降下(サンドル降下)しました。

photo工事に関する詳細図 資料:東京都

 橋梁の銘板は、小池百合子東京都知事による揮毫です。漢字とひらがなの2種類が両方向に設置されています。

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 東京ゲートブリッジ・中央防波堤地区・海の森大橋に囲まれた東西水路が、東京2020大会の海の森水上競技場です。大会ではボートとカヌー(スプリント)を実施し、大会後は国際大会が開催できるボートとカヌーの競技場及び育成・強化の拠点になります。

photo海の森水上競技の完成予想図 資料:東京都

 海の森大橋を進みます。

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 臨海道路との交差点へ着きました。直進すると中央防波堤外側コンテナふ頭、左折すると東京ゲートブリッジへ向かうことができます。

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■開通区間の概要
 区間:10号地その2地区(江東区有明四丁目)─中央防波堤外側地区(同区海の森三丁目地先)
 延長:約3.7km
 車線:往復4~6車線
 費用:約1900億円
 事業期間:2014年度~2020年度
 発注者:東京都