環2築地虎ノ門トンネル 見学ツアー

一般道路

 築地虎ノ門トンネルは、環2(環状⼆号線)の築地─虎ノ門間をつなぐトンネルです。2024年12月6日に行われた「環2築地虎ノ門トンネル 見学ツアー」を取材しました。

 見学ツアーは東京都道路整備保全公社主催、東京都第一建設事務所の協力で催され、今回で2回目になります。36倍もの倍率で当選した16名は、築地虎ノ門トンネルの築地換気所(中央区築地)に集合しました。

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 換気所の会議室で、公社職員および東京都第一建設事務所職員による挨拶と築地虎ノ門トンネルの概要や管理についての説明が行われました。トンネルの管理は東京都道路整備保全公社が東京都より受託して行っています。公社は主に東京都などからの委託により都内で道路整備や維持管理を行い、道路施設の見学ツアーなどを企画・運営しています。

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 環状二号線は、江東区有明を起点とし中央区や港区などを経て千代田区神田佐久間町を終点とする都市計画道路で、皇居を中心とした環状を描きます。新橋から神田佐久間町までの延長約9.2kmは1946年に都市計画決定、1950年に道路幅員を100mから40mへ変更して整備が進みました。1993年に起点を新橋から有明に変更し、2022年に築地─新橋の約1.4kmが開通したことで、総延長約14kmが全線開通になりました。通称として、虎ノ門─神田佐久間町間のほとんどを外堀通り、有明─虎ノ門間を環二通りと呼びます。

photo環2(環状⼆号線)の位置 資料:東京都

 環状二号線ではこれまで、以下のようなイベントが催されました。

 築地虎ノ門トンネルの延長は1,840mで、汐留と新橋に出入り口となるランプを設けています。内回りの出口付近には築地換気所、外回りの出口付近には虎ノ門換気所を設置しています。

photo築地虎ノ門トンネルの断面図 資料:東京都

 換気所はトンネル内の排気ガスをきれいな空気にして上空へ放つ施設です。トンネルの内回り、外回りそれぞれの出口付近壁面には吸気口が設置されています。吸気口から排風機で吸い込まれた排気ガスは電気集塵機を通って汚れを取り除かれ、消音装置で騒音を低減した後、換気塔で上空に放出されます。

 築地換気所は地上3階、地下3階で、管理棟、換気所、換気塔で構成されます。
 最初に管理棟を見学します。3階にある監視室ではトンネル内に設置している監視カメラ等を用いて24時間監視し、事故等の緊急対応にあたっています。監視室の窓からは、再開発が予定されている築地市場跡地を望むことができます。

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 電気室へ移動します。電気室の受変電設備は、6,600Vで受電した電圧をトンネル施設の各機器に必要な電圧に降圧して供給します。

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 参加者は設備を操作して、管理を体験することができました。

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 換気所の外へ出て、自家発電機室の非常用発電設備を見ます。

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 停電に備えて設置している非常用発電設備は、ディーゼルエンジンと発電装置で構成されています。停電が発生した際には非常用発電機が起動し、発電した電力によってトンネルの機能を維持します。非常用発電設備によって24時間程度、トンネルの機能を維持させることができます。

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 管理棟から換気塔へ移動します。

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 換気塔を外部の真下から見上げます。換気所の設備できれいにしたトンネル内の空気を換気塔の上部へ送り、上空で排出します。

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 換気塔に入ります。換気塔の地下部は25m、地上部は45mあります。

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 換気塔の内部から見上げます。階段が外壁に沿って螺旋状に設置されています。

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 下部は、地下3階の排風機室等に繋がっています。

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 地下1階へ移動し避難通路を進むと、トンネルにつながる扉が見えてきました。火災などの際、車道から避難するための避難口です。

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 築地側出入口付近の交通量は約25,000台/日(2023年6月)です。トンネルは規格や交通量に合わせて高規格順にAA、A、B、C、Dという等級が定められていて、築地虎ノ門トンネルはA等級に指定されています。

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 トンネルの側面には管理用通路を確保し、監視カメラや緊急事態が発生した際にトンネル内利用者に情報を伝えるラジオ再放送拡声設備、火災検知器、非常電話、通報・消火設備、トンネルの外へ避難するための避難通路、換気ファンなどを設置しています。

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 ポンプ室へ移動します。降雨の際は、トンネル内のザグ点と呼ばれる勾配の凹部に雨水を集め、ポンプ室のポンプで汲み上げて下水道へ流します。ポンプ室には1分間に最大8トンの水を汲み上げることができるポンプを4台備え、同時に3台稼働できます。

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 流入した雨水は、スクリーンで大きなゴミを取り除き、ポンプにて下水道へ排水します。

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 地下3階の電気集塵機室に入ります。電気集塵機室では、トンネル内を走行する車の排気ガスに含まれる微細なゴミやチリを取り除きます。

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 電気集塵機は奥行きのある複数のステンレス製の極板で構成されています。極板に電圧をかけることで静電気が発生し、極板に微細なゴミやチリが付着する仕組みです。

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 空気は直径約3mの排風機の内部を通り、消音装置へ送られます。

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 電気集塵機室を出て、排風機を見ます。排風機は1秒間に約12回転します。

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 排風機を起動させる様子が公開され、参加者は周囲の声が聞こえないほどの音を体感しました。

 メンテナンスのために排風機を工場に運んで分解整備する際は、天井に備えつけられた橙色の走行レールを用いてクレーンで搬出口から搬出します。

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 設備の搬出入を行う搬出入路を通り、地上へと搬出してメンテナンス工場へ移送されます。

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 消音装置室に移動します。消音装置は換気塔から空気を排出する際の騒音を低減させるための円筒形の装置で、筒の中には吸音材としてグラスウールが充填され、壁一面に積み上げられています。筒の内外を空気が通り抜けることにより、モーター音や風切音といった騒音がグラスウールに吸収されます。

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 騒音を消音装置で取り除く実験が行われました。防犯ブザーを消音装置内に置くと、グラスウールによって音がかなり小さくなることがわかります。

 消音装置の裏側へ移動します。

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 換気塔の真下へ入ります。

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 換気塔の真下から見上げました。きれいになった空気は、換気塔の上空へと放たれます。

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 緊急時などで避難路になる階段室を通り、地上へと移動します。

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 最後に徒歩で汐留非常口へ移動して、道路からの避難を体験します。

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 車道まで降りた後、非常口から避難ルートで地上へ戻ります。

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 避難通路の途中には、地上での現在地を表示しています。

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 緊急時には非常口の出入口が開き、トンネル内から避難します。

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 汐留非常口は常時、周辺の景観に配慮して目立たない形で閉鎖されています。

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 見学の参加者から「実際にボタンを操作したり音を体感することで、築地虎ノ門トンネルをより身近に感じることができた」と声が聞かれました。東京都道路整備保全公社では今後も見学会を継続して開催し、多くの利用者に理解を深めてもらいたいとのことです。