首都高速道路 中央環状線が2015年3月7日の全線開通から10周年を迎えることを記念して、大橋JCT内部の施設等の見学および大橋JCTを舞台とした光の演出が催されました。
大橋JCTは渋谷駅から1駅の池尻大橋駅近くある、ローマのコロッセオに似た外観を持つ密閉型ジャンクションです。
2025年3月8日と9日の両日、事前にネットで応募し約400名の中から抽選で当選した両日合計約140名の参加者が大橋JCTに集合しました。今回の探検ツアー・光の演出は首都高速道路の若手社員が企画して進められました。
出入り口付近には、中央環状線の歴史や工事の技術を紹介したパネルを展示しています。
参加者はグループに分かれて大橋JCTの内部へ進みます。
1周約400m、4層ループ構造で、地上約35mの3号渋谷線と地下約36mの中央環状線という高低差約70mの道路をつなぎます。国立競技場の陸上トラックと同じくらいの長さをらせん状に2周描いて接続します。
大橋JCTの概要図 出所:首都高速道路
大橋JCTでは、地球温暖化やヒートアイランド対策、生物多様性に寄与する次の「3つの緑の形成」に取り組んでいます。
1)自然再生の緑:おおはし里の杜(もり)
2)公園の緑:目黒天空庭園
3)街並みの緑:壁面緑化
まずは大橋JCTの内側に位置する地上約30mの大橋換気所屋上へ移動して、通常は立ち入りできない「おおはし里の杜」を巡ります。換気所の勾配を利用し、かつての目黒川周辺の自然を復元した自然再生緑地です。約1,100m²の緑地内には、稲刈りが終わった冬期も水をはる「冬期湛水(たんすい)水田」を整備しています。地元の小学生が田植えや稲刈り、脱穀、自然観察会などの体験を毎年行っています。
おおはし里の杜には400種類ほどの動植物が生育・生息している
おおはし里の杜から屋上を移動して、目黒区立公園「目黒天空庭園」を通ります。全国初となるジャンクションの屋上に造られた公園で、午前7時から午後9時まで自由に出入りできます。面積は約7,000m²あります。
目黒天空庭園では開業当初からワイン用のブドウを栽培、収穫している
大橋JCTを出て目黒川沿いを歩くと、常緑のオオイタビによる「壁面緑化」が行われていることがわかります。
オオイタビは年間30~50cm程度と成長が遅く、時間をかけて大橋JCTを緑にしていく
火災などが発生した際に使用する避難通路の地上出口から、大橋JCT内へ入ります。
階段を下りると、避難通路の扉にたどり着きました。扉の向こうが車道になります。火災などの際は車道から扉を開けて、こちらの避難通路を通り地上へ脱出します。扉を開けることができるのは有事の際のみです。
再び地上を通って大橋JCT内へ戻りました。1階部分にある首都高車両が出入りするシャッター扉へ向かいます。
24時間365日体制で山手トンネルを巡回する首都高バイク隊などが出入りするシャッター扉が開かれると、大橋JCTを走行する一般の車が見えてきました。
同じ1階部分に大橋換気所へ移動します。トンネル内の排ガスは排気ファンで吸い込み、低濃度脱硝設備を通ってきれいな空気にした後、ファンの大きな音を消すための消音装置を抜けて高さ45mの換気塔で約100m上空へ放出します。外気を取り入れる青色の送気ファンを3台と、トンネル内部の空気を上空高く吹き上げる排気ファンを6台設置しています。
消音装置室の壁一面に積み上げられている消音装置の1つが用意され、装置の中で大声を出して騒音が吸収される体験を行いました。騒音の混じった空気は、吸音材のグラスウールを充填した消音装置の内側を通り抜けることで、モーター音や風切音といった騒音が吸収されます。
出入り口付近に戻ります。首都高パトロールのパトロールカーやパトロールバイクに触れることができます。
中央環状線全線開通10周年を記念した光の演出が始まりました。
大橋JCTの壁面に映された映像です。
最後は10本のロウソクに見立てた光がともされ、中央環状線全線開通の10周年を祝います。
雨天だった8日と比べて、よりきれいに灯された9日のライトアップ 提供:首都高速道路
参加した親子は「普段、入ることができない大橋JCTがどのようになっているのか分かって楽しかった。ライトアップもきれいで、よい思い出になった」と感想を述べていました。参加者には記念品として、「大橋」にかけた漆黒の「箸」と箸置きのセットなどが手渡されました。