静岡県浜松市と長野県飯田市を結ぶ三遠南信自動車道の一部となる東栄(とうえい)IC─鳳来峡(ほうらいきょう)IC間が、2026年3月14日に開通。開通前の2026年2月18日、一般向けに「三遠南信自動車道 東栄IC〜鳳来峡IC 開通メモリアルプレイベント」が開催されました。
三遠南信(さんえんなんしん)とは、静岡県西部の遠州、愛知県東部の東三河、長野県南部の南信州を指す地域名です。三遠南信自動車道は、一般国道474号として整備が進められている高規格道路で、静岡県浜松市から愛知県東三河、長野県南信州を南北に結びます。今回、東栄IC─鳳来峡IC間7.1kmの開通により、三遠南信自動車道(約100km)のうち、佐久間道路・三遠道路(約27.9km)が全線開通となり、浜松市天竜区の佐久間川合ICから新東名高速道路の浜松いなさJCTまでが一本の道路としてつながりました。
三遠南信自動車道の全体地図 出所:浜松河川国道事務所
イベントは参加自由で、三遠南信自動車道の本線から約300m離れたイベント会場と本線にて、午前10時から15時まで開催されました。会場ではステージイベントやキッチンカーなど物品販売のメモリアルマルシェが用意され、本線を自由に歩ける「メモリアルウォーキング」などが企画されました。主催は三遠南信自動車道建設促進奥三河期成同盟会(新城市・設楽町・東栄町・豊根村)、協力は国土交通省中部地方整備局浜松河川国道事務所・愛知県・浜松市・中日本高速道路株式会社・三遠南信地域連携ビジョン推進会議です。
会場全体の地図 出所:三遠南信自動車道建設促進奥三河期成同盟会
イベントの見どころの一つが、浜松河川国道事務所による人数限定の「トンネル避難坑探検ツアー」です。抽選で1回あたり約30人程度、全5回開催され、参加者を決める抽選には長蛇の列ができました。
イベント会場の全景
ステージでのオープニングセレモニーは、設楽町観光大使さやか結さんがMCを担当。主催者代表として新城市の下江洋行市長、開催地代表として東栄町の村上孝治町長がそれぞれ、長年の悲願であった道路の開通を喜びました。続いて東三河地域代表として愛知県の江口幸雄副知事が観光や交流の促進、地域医療などへの効果に期待を示し、最後に事業者代表として、国土交通省中部地方整備局浜松河川国道事務所の白井広樹所長は今回の開通が地域の利便性向上につながると述べました。
10時、設楽町の土屋浩町長と豊根村の伊藤浩信村長によるフラッグでの合図で、イベントがスタートしました。ステージではトークショーやダンスなどの催しが続きます。
ステージイベントスタートのフラッグ
本線でのイベントのためイベント会場から300mほど坂を登ると、三遠南信自動車道の本線が見えてきました。本線を右側へ進むとメモリアルウォーキングの三遠三輪(さんえんみわ)トンネル、左側に進むとトンネル避難坑探検ツアーが行われる三遠池場坂(さんえんいけばざか)トンネルになります。
三遠南信自動車道の本線
まずは片道約1kmのウォーキングルートをたどるため、東栄IC方面の三遠三輪トンネルへ入ります。三遠三輪トンネルは延長841mの2車線(対面通行)のトンネルです。
三遠三輪トンネルの坑口
トンネルの断面は単純な円形ではなく、上部・側部・下部で異なる半径の円弧を組み合わせた構造になっています。円形にすると必要以上に掘削量が増えるため、必要な空間を確保しながら掘削量を抑える形状です。
上部・側部・下部で異なる半径の円弧を組み合わせたトンネルの断面
トンネル内には非常用電話が設置されています。事故や火災が発生した場合には管制センターへ通報できる仕組みです。
トンネル内の非常用電話
メモリアル展示として、はたらくクルマや各種パネルなどの展示が続きます。
トンネル内のメモリアル展示
浜松河川国道事務所のブースでは、マインクラフトで構築した三遠南信自動車道上でクイズに挑戦できる「マイクラ×奥三河クイズラッシュ」が用意され、子供だけでなく大人も長い列をつくり、ゲームでの建設現場体験を楽しみました。
精巧に組まれたマイクラ×奥三河クイズラッシュ
中日本高速道路は、道路パトカーや働く標識車など、はたらくクルマを展示しました。
三遠南信自動車道の開通を祝う標識車
1kmほど歩くと、三遠三輪トンネルの坑口が見えてきました。
三遠三輪トンネルの坑口
東栄IC付近でウォーキングは折り返しになります。東栄ICから先は静岡県に入り、浜松方面出入口のみの浦川IC、佐久間川合ICまでつながります。
東栄IC付近
ウォーキングルートを折り返し、鳳来峡IC・浜松方面へ戻ります。下には国道151号が通っています。
東栄IC付近から眺める浜松方面
トンネルの壁面には「35」「30」などの表示が見られる箇所があります。これはコンクリートで仕上げられた覆工の厚さを示すもので、数字の値(cm)に対応しています。地盤条件の違いに応じて覆工の厚さが変えられています。
覆工コンクリートの厚みを記す数字
トンネル避難坑探検ツアーとして、浜松河川国道事務所の職員によるガイドで三遠池場坂トンネルに入ります。三遠南信自動車道の東栄IC─鳳来峡IC間には橋梁8橋とトンネル4本があり、その中で最も長いトンネルが延長3566mの三遠池場坂トンネルです。三遠池場坂トンネルは延長3kmを超える長大トンネルのため、本線のトンネル「本坑」の横に、事故や火災が発生した際の避難路として「避難坑」が設けられています。
三遠池場坂トンネル坑口から見る本線(本坑)と避難坑(右側の小さいトンネル)
長大な三遠池場坂トンネルでは、非常設備が約50m間隔で設置されています。
ツアーのため内部が公開された非常設備
中央自動車道と接続する飯田山本IC・JCTから80kmの位置を示す三遠南信自動車道の距離標が設置されています。
中央自動車道から80kmの位置を示す距離標
鳳来峡IC・浜松方面を約500mまで歩きました。三遠南信自動車道のこの区間は、日本列島を横断する大断層「中央構造線」の影響を受ける地域に位置しています。三ヶ日、佐久間、豊橋付近を通るこの断層帯は地質が複雑で、掘削すると岩盤が崩れやすい場所もあると説明されました。
三遠池場坂トンネルの内部
事故や火災などが発生した際と同様に、本線から「連絡坑」を通って避難坑へ移動します。ツアーでは、参加している子どもが通常は閉ざされている避難坑への扉を開く体験も行われました。天井には、火災時に排煙設備として機能するジェットファンが設置されています。
避難坑につながる連絡坑の扉
本線と避難坑をつなぐ連絡坑の内部です。三遠池場坂トンネルには11カ所の避難坑が設けられています。
本線と避難坑をつなぐ連絡坑の内部
鳳来峡IC・浜松方面を見ると、一直線に避難坑が延びています。自動車が走行する本線の壁面はコンクリートの覆工で整えられています。一方、避難坑は避難や緊急車両の通行を目的とした通路のため、壁面は岩盤がむき出しの状態になっています。
避難坑(鳳来峡IC・浜松方面)
避難坑を進み、東栄IC方面へ戻ります。避難坑の一部区間では、消防車や救急車などの緊急車両がすれ違えるように幅が広く確保されています。幅を広げた箇所では、岩盤が弱くならないよう鉄筋による補強が施されています。
避難坑(東栄IC方面)
一般的な山岳トンネルの場合、本線の建設費は1mあたりおよそ300万円から700万円程度とされています。三遠池場坂トンネルでは、おおよそ1mあたり約500万円程度との説明がありました。一方、避難坑は構造が簡素なため、建設費は1mあたり100万〜200万円程度とされています。
避難坑の出口付近
避難坑を出ると、三遠三輪トンネルの前に戻ってきました。
避難坑出口付近の様子
三遠南信自動車道の開通を目前に控え、参加した約1,000人が完成したばかりの本線やトンネルでのイベントを楽しみました。
今回の開通により、三遠南信自動車道の愛知県内区間の工事が完了しました。2026年3月14日に東栄IC─鳳来峡IC間の本線上で関係者約300人が出席し開通式が行われ、同日15時に開通しました。三遠南信自動車道は、新東名高速道路と中央自動車道を結ぶ広域道路ネットワークを形成し、災害時の代替路や地域医療の支援などが期待されています。


