新宿駅南口地区基盤整備事業は、慢性的な交通渋滞や分断された乗り換え動線、老朽化したインフラといった課題を一体的に解消するために進められている大規模プロジェクトです。今回は、小学生と保護者を対象とした「新宿駅南口地区基盤整備事業 親子現場体験イベント」を取材しました。
イベントは国土交通省 東京国道事務所の主催です。参加した約20組の小学生と保護者は、まず事業全体についての説明を受けます。
新宿駅南口周辺では、次の3つの工事を同時に進めています。
・鉄道・高速バス・一般車・タクシー・歩行者を集約する交通結節点整備
・大正期に架けられた老朽橋を更新する跨線橋架け替え
・新宿駅と副都心線新宿三丁目駅を結ぶ地下歩道新設
駅前広場の整備から地下深部の通路まで、南口一帯を立体的に組み替える計画です。
新宿駅南口整備イメージ 出所：東京国道事務所
●新宿交通結節点整備
新宿駅南口の工事現場へ移動します。参加した小学生にはポラロイドカメラとしおりが配られ、取材形式で見学します。最初に訪れたのは、新宿駅南口の線路上空を活用する「新宿交通結節点整備」の現場です。国道20号（甲州街道）南側の線路上に約1.47ヘクタールの人工地盤を構築し、その上に広場や交通施設を載せる工事が進められています。
人工地盤の上部へ移動します。作業で使用している100t吊クローラークレーンを間近で見られるよう、展示されていました。
参加した小学生たちは、人工地盤を支える基礎杭の深さ27mを、自分たちの歩幅で測って予想します。クローラークレーンのアームの長さを参考に、専用の測定器で確認することで、数字だけでは実感しにくい「支えの深さ」を身体感覚で理解できる仕組みです。
新宿交通結節点整備が完成すると、人工地盤上部には次のような施設を整備する予定です。
2階：駅施設と歩行者広場
3階：タクシー・一般車乗降場
4階：高速バス関連施設
周辺に分散している高速バス機能を集約し、新宿の乗り換え拠点機能を強化する狙いがあります。
●跨線橋架け替え
続いて、新宿駅南口正面で進められている「跨線橋架け替え」の現場へ移動します。
甲州街道を見下ろすと、跨線橋架け替え工事の全体を一望できます。この橋は1925年に完成し、80年以上にわたって南口の交通を支えてきました。
一日あたり約6万台以上が通過する道路交通を止めず、耐震性を確保しながら跨線橋を更新し、道路幅は30mから50mへ拡幅する工事が進められています。
参加者は、用意された3つの体験ブースを巡りながら見学します。巨大構造物の工事を、体験を通じて学べる構成です。工事状況説明ブースでは、跨線橋架け替えの工程を示すパネルが展示されていました。
橋を広げている様子 出所：東京国道事務所
古い橋を新しい橋に架け替えている様子 出所：東京国道事務所
作業機械説明ブースでは、高所作業車について詳しい説明を受けます。
ボルト・ナット回し体験ブースでは、小学生が全力で作業を体験していました。
●地下歩道
最後に「地下歩道」の現場へ移動します。東京メトロ副都心線・新宿三丁目駅と新宿駅を結ぶ、重要な歩行者動線を整備する工事です。
明治通りの下を通る東京メトロ副都心線は、甲州街道との交差部に新宿三丁目駅が設けられます。写真は、同駅の駅事務室となる箇所です。
奥には、東京メトロ丸ノ内線などと接続するエスカレーターと階段が設置されます。
東京メトロ副都心線・新宿三丁目駅改札口のイメージ図です。
新宿三丁目駅改札口のイメージ図 出所：東京メトロ
ホーム長は通常約300mですが、将来の東急東横線乗り入れに備えた折り返し線が組み込まれるため、新宿三丁目駅は靖国通りの新宿五丁目から新宿四丁目南（新宿髙島屋付近）まで、約800mに及ぶ長さとなります。
新宿三丁目駅の平面図 出所：東京メトロ
改札口とホーム階を結ぶエスカレーターと階段が設置されます。
新宿髙島屋方面へ続く通路です。
さらに進むと、国道20号の出入口通路が見えてきました。
東京メトロ副都心線のホーム階へ移動します。
作業車が通過する様子も見られました。
東京メトロ副都心線・新宿三丁目駅ホームのイメージ図です。1面2線の島式ホームとなります。現場と見比べると、完成に近づいている様子が分かります。
新宿三丁目駅ホームのイメージ図 出所：東京メトロ
2008年6月に予定されている東京メトロ副都心線の開業に向け、工事は着実に進んでいます。
見学を終えた小学生は、感想や撮影した写真をしおりに書き込み、親子現場体験イベントは終了となりました。
参加した小学生からは、「新宿でこんなに多くの工事が行われていることに驚いた」「道路や鉄道が完成したら、今日見学した現場を思い出しながら比べてみたい」といった声が聞かれました。
