東京ゲートブリッジ(名称確定以前の仮称:東京港臨海大橋)は、大田区城南島と江東区若洲とを結ぶ東京港臨海道路に架けられる橋。
橋を支える「側径間下部トラス桁」の、若洲側における架設作業が始まりました。
東京臨海部における慢性的な渋滞を緩和し、物流の効率化を図り、産業の国際競争力の強化につなげることを目的として、大田区城南島から中央防波堤外側埋立地を経て江東区若洲までの約8kmを結ぶ、東京港臨海道路(とうきょうこうりんかいどうろ)が整備されています。
このうち、大田区城南島から中央防波堤外側埋立地までの約3.4kmは2002年度に供用が開始されていて、途中には臨海トンネルがあります。
中央防波堤外側埋立地から江東区若洲までの約4.6kmは2011年に供用が予定されていて、途中の約2.9kmは東京ゲートブリッジとなります。
東京港臨海道路は往復6車線、橋梁部は往復4車線となります。
東京ゲートブリッジのスケールは、以下のようになっています。
・全長:2,933m(東京から浜松町までとほぼ同じ)
・水面からトラス最上部までの高さ:87.8m(25階建てビルに相当)
・海上区間の長さ:1.618m(レインボーブリッジの約2倍)
・主橋梁部に使用される鉄骨の量:約2万トン(東京タワーの約4倍)
羽田空港に近接しているため、飛行機が橋の上を飛ぶことによる空域制限があり、高さを98.1m以上にすることができません。また、東京港第三航路に大型の船が出入りするため、船舶が橋の下を通ることによる桁下の高さ制限があり、高さ54.6m以上を確保しました。
制約の条件をクリアするため、高い主塔を必要とする吊橋や斜張橋(しゃちょうきょう)でなく、「トラス橋」という形式が採用されています。
「若洲側から見た東京ゲートブリッジのイメージ」国土交通省関東地方整備局 東京港湾事務所様より借用
トラス橋は短い材料を使って三角形の構成して、つなぎ合わせることで橋桁の重さを分散させることができます。
東京ゲートブリッジでは、トラス桁が上部と下部にそれぞれ2基ずつ、合計4基が架設されます。強度の高い鋼材を使用し、新しい技術を導入することで、大幅なコストダウンがはかられています。
まず、下部のトラス桁である「側径間下部トラス桁」が架設されます。
中央防波堤外側埋立地側の側径間トラス桁は、江東区有明の有明ヤードで組立てられ、2009年の9月11日に陸上から海上に吊り出す「浜出し」という作業を経て、9月15日に「中央防波堤外側埋立地側 側径間下部トラス桁 浜出し・海上架設」が行われました。
若洲側の側径間トラス桁は、千葉県富津市の富津ヤードで組立てられ、9月23日に浜出し、9月26日に海上輸送、9月28日に海上架設が行われました。
【2009年9月23日】若洲側 側径間トラス桁 浜出し
富津ヤードで組立てられた側径間下部トラス桁を、3隻のクローラークレーン船で吊り上げ、架設箇所まで海上輸送するための台船に載せます。
富津ヤードでは、9時30分頃より組立てられた側径間下部トラス桁が、3隻のクローラークレーン船の吊具により架台から約15m吊り上げられていました。
3隻のクローラークレーン船は、左から「武蔵」(3,700トン吊級)、「第50吉田号」(3,700トン吊級)、「海翔」(4,100トン吊級)。クレーンのアームの高さは約120mあります。
一般公開の会場となっている、木更津港富津地区1号荷捌き(にさばき)地へと移動します。
3隻のクローラークレーン船は移動して、側径間下部トラス桁を吊り下げ、台船の上に載せます。
側径間下部トラス桁は、長さ232m、幅24m、高さ35m。1基あたり東京タワーの1.5倍分となる約6千トンの鉄骨が使われています。
色彩については、以下のように決定されています。
・海、空、若洲臨海公園といった背景に調和しつつ、適度な存在感を表現する色彩として、パープルブルー(PB)系の色彩を採用する。
・トラス部と桁は2トーンに塗り分け、桁をトラスより濃い目の色合いとすることで、全体の印象を引き締め、陸と陸を結ぶラインを強調し橋梁の機能を鮮明に見せる。
側径間下部トラス桁に設置されている階段を見るだけでも、大きいことがわかります。
側径間下部トラス桁を載せるための台船「オーシャンシール」(載荷重量24,000トン)です。
12時頃、3隻のクローラークレーン船が前進し始めました。
祝日ということもあり、多くの人が見守っています。
側径間下部トラス桁を吊り下げ、台船の上に載せます。
荷重バランスを保つため、3隻のクレーン操作には息のあった、高度な技術が要求されます。
15時頃、台船への吊り下げがほぼ完了しました。
この後、側径間下部トラス桁から吊具を切り離し、この日の作業は完了になりました。
【2009年9月26日】若洲側 側径間トラス桁 海上輸送
台船に載せた側径間下部トラス桁を、架設箇所まで海上輸送します。
6時過ぎに富津の岸壁を離れた台船は、側径間下部トラス桁を載せて、東京ゲートブリッジの架設箇所を目指します。海上から眺めると、次第に近づいてくることがわかります。
9時頃には東京湾アクアラインを通過しました。
台船の100m前には、主曳船「昇陽丸」(275トン)が曳航します。
台船の右隣と100m後には、補助曳船が曳航します。
台船の長さは140m、側径間下部トラス桁は232.1mあり、大きくはみ出していることがわかります。
先頭の主曳船の船首から末尾の補助曳船の船尾までは340mあります。
東京港の外から、東京方面を眺めてみます。すでに架設を終えた中央防波堤外側埋立地側の側径間下部トラス桁と、これから架設する若洲側の側径間下部トラスが来る場所にて待機するクローラークレーン船を確認することができます。
東京タワーを見ることもできます。
「中央防波堤外側埋立地側 側径間下部トラス桁 浜出し・海上架設」で架設を終えた、中央防波堤外側埋立地側の側径間下部トラス桁です。
これから架設する若洲側の側径間下部トラスが来る場所にて待機するクローラークレーン船です。
10時頃、2つの側径間下部トラスを同時に見ることができる位置まで移動してきました。
台船で作業する人々の動きが慌ただしくなっています。
2つの側径間下部トラスを向かい合わせにするため、台船は大きく約90度、移動します。
まるで車のように動きがスムーズで、驚かされます。
側径間下部トラスを台船から吊り上げ、橋桁に吊り下げるためのクローラークレーン船の前に入域します。
主曳船と2隻の補助曳船が停泊しました。
9月28日に行われる海上架設の準備へと移ります。
側径間下部トラスは、クローラークレーン船により吊り上げられ、橋桁に吊り下げられることになります。
橋桁と、橋桁の上に吊り下げる側径間下部トラスです。
9月28日に、側径間下部トラスは橋桁の上に載ることになります。
正面から見た、側径間下部トラスです。台船の上にいる人の大きさから、規模を知ることができます。
正面から見た、橋桁となります。
作業は順調に進み、予定より早く作業が完了したとのことです。
これにより、東京ゲートブリッジの若洲側における海上輸送が完了しました。
【2009年9月28日】若洲側 側径間トラス桁 海上架設
側径間下部トラス桁を台船から吊り上げ、橋桁の上に吊り下げて架設します。
7時頃より台船から吊り上げられた側径間下部トラスは、3隻のクローラークレーン船の吊具により架台から約15m吊り上げられていました。
7時30分頃、NHK総合で状況が中継されていました。
3隻のクローラークレーン船が前進することにより、橋桁へと近づきます。
よく見ているとわかる早さで吊り下げられています。
慎重に作業が進められます。
多くの作業員の方々が橋桁の上でも作業をしています。
3隻のクローラークレーン船は、左から「武蔵」(3,700トン吊級)、「第50吉田号」(3,700トン吊級)、「海翔」(4,100トン吊級)となります。
一般公開の会場となっている若洲海浜公園でも、多くの人が見守っています。
正面から見ると、作業の進み方がよりよくわかります。
12時頃、橋桁への吊り下げがほぼ完了しました。
9月15日に架設が完了した中央防波堤外側埋立地側の側径間トラス桁です。
間近や真下から見ると、いっそうの迫力を感じることができます。
作業は順調に進み、予定よりも早く作業が完了したとのことです。
これにより、「東京ゲートブリッジ 若洲側 側径間下部トラス桁 浜出し・海上輸送・海上架設」が完了しました。
東京ゲートブリッジが完成し、東京港臨海道路が全線開通すると、新木場・千葉方面と羽田・横浜方面との移動おいて、慢性的な渋滞となっている有明・青海を通らずにアクセスが可能となり、中央防波堤外側埋立地と新木場との移動時間が従来に比べ約4割短縮されます。
これにより東京臨海部における渋滞が緩和され、物流は円滑となり、年間約300億円にもなる経済効果があるとのことです。
東京ゲートブリッジを含む、東京港臨海道路の全線開通を楽しみにしています。
取材を応じてくださいました、国土交通省東京港湾事務所の相澤様ならびに中村様へ心よりお礼申し上げます。