リニア中央新幹線 リニアが走る町、富士川町フェスティバル

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 リニア中央新幹線の建設現場を実際に歩くことができるイベント「リニアが走る町、富士川町フェスティバル」が、2025年11月9日に山梨県南巨摩郡富士川町の第一南巨摩トンネルおよび最勝寺ヤードで開催されました。

 この日は、富士川町主催の「甲州富士川まつり」と、JR東海主催のさわやかウォーキング「リニアが走る町 富士川町を満喫~甲州富士川まつりとリニア中央新幹線トンネル工事現場~」を連携して実施。事前申込不要・参加費無料で、会場では9時から16時まで、工事紹介コーナーや写真撮影コーナー、展示ブース、丸太切り体験などを楽しむことができます。

 展示ブースでは、山梨県による森林整備の紹介のほか、大成建設・早野組JVによる動くリニア模型の展示、大林組・鴻池組JVによる3Dプリンタ施工技術やカーボンニュートラルへの取り組み紹介動画を放映。また、峡南森林組合による丸太切り体験や木工体験も用意されました。

photo会場での展示ブース

 写真撮影コーナーには、リニア車両実寸大相当のイベント記念横断幕や、リニア車両デザインの顔出しパネルが設置されました。

photoリニア車両実寸大相当の記念横断幕を展示

 第一南巨摩トンネルの坑口でヘルメットを受け取り、普段は入ることができないトンネル内を約60m歩くことができます。

photo第一南巨摩トンネルの坑口付近

 工事紹介コーナーでは、リニア中央新幹線が走る未来を描いたオリジナルムービーの上映や、工事概要をまとめたパネルを展示。第一南巨摩トンネルの位置を示したパネルは人気の撮影スポットになっていました。

photo第一南巨摩トンネルの位置を示したパネル

 富士川町内の山岳部では、南アルプス市境から南西方向に地上を進み、最勝寺地区付近から山岳地帯に入ります。現在、この山岳部では「第三南巨摩トンネルほか」と「第四南巨摩トンネル(東工区)」の2つの工区で、トンネル工事などが進められています。第三南巨摩トンネルほか新設工事では、第一南巨摩トンネルを含む3本のトンネルと2か所の橋りょうを新設します。

photo第三南巨摩トンネルほか新設工事の概要 出所:JR東海

 第一南巨摩トンネルは掘削延長約710mで、2022年3月から本坑(中央新幹線が実際に走行するトンネル)の掘削を開始。約1年7カ月後の2023年10月に貫通しました。山梨リニア実験線を除く中央新幹線の品川─名古屋間では、本坑として初めての貫通です。2023年10月13日には貫通式が行われました。

 トンネル断面は幅約12.8m、高さ約7.6mで、掘削にはNATM(New Austrian Tunneling Method)を採用。掘削と同時に吹付けコンクリートや支保工を行い、地山の安定を確保しながら施工しています。

photoトンネル坑口付近で目を引く強度向上のための下準備となる黄色い部材

photo本線トンネル断面図 出所:JR東海

 現在、トンネル内ではインバートの工事を進めています。インバートとは、トンネル底面に逆アーチ型のコンクリートを設けた覆工部分です。下からの押し上げ圧力に耐えるため、この構造が必要になります。

photo第一南巨摩トンネルでのインバート工事 出所:JR東海

 リニア車両の模型も展示されています。山梨リニア実験線では、2013年に走行試験を開始した第1世代車両「L0系」と、その試験データをもとに改良を加えた「L0系改良型試験車」の2種類が走行しています。

photoL0系改良型試験車の模型

 AR(拡張現実)によるリニア中央新幹線走行体験ブースも設けられました。専用タブレット端末のカメラで、トンネル内に掲示された巨大なコードを読み込むことで、リニア中央新幹線が走行する映像を体験できます。

photoトンネル内に掲示された巨大なコード

photoAR(拡張現実)によるリニア中央新幹線のイメージ。実際は上下線が走行

 トンネルを約60m進んだ先では、インバートなどコンクリート工事が進行中です。

photo第一南巨摩トンネルの名古屋方

 第一南巨摩トンネルの先では現在、三枝川橋りょう部の準備工に着手し、橋りょう工事および第二南巨摩トンネル工事のための仮桟橋設置を進めています。また、2025年9月には小室非常口ヤードから非常口トンネル(斜坑)の掘削を開始しました。

photo第一南巨摩トンネルの名古屋方坑口付近 出所:JR東海

 JR東海 山梨西工事事務所の鈴木一真所長は「周辺地域の魅力発信や、リニアが走る未来の姿をイメージできる機会になれば」と話しました。参加した親子からは「リニアに早く乗ってみたい」「早く開通してほしい」といった声も聞かれました。

 山梨県内におけるリニア中央新幹線の延長は、山梨リニア実験線(延長42.8km)を含む83.4km(地上区間27.1km、トンネル区間56.3km)になります。県内には駅1か所のほか、変電所3か所、保守基地3か所、山岳部に非常口9か所を設置。全線(品川─名古屋間)285.6kmのうち約86%がトンネル区間であり、地上区間は約40kmで、その多くが山梨県内に位置します。

photo山梨県の路線概要 出所:JR東海

 JR東海が建設を進めるリニア中央新幹線は、時速約500kmで走行する超電導リニア方式の新幹線で、品川─名古屋間を最速40分、品川─大阪間を最速67分で結びます。計画では、品川駅─神奈川県駅─(山梨リニア実験線)─山梨県駅―長野県駅─岐阜県駅─名古屋駅を結びます(中間駅はいずれも仮称)。

■工事の概要
 施工場所:山梨県南巨摩郡富士川町
 発注者:東海旅客鉄道株式会社
 受注者:大成建設株式会社・株式会社早野組

公式:リニア中央新幹線|JR東海