西武新宿線 中井駅~野方駅間 連続立体交差事業(2025年12月・新井薬師前駅)

 西武鉄道新宿線は、西武新宿駅と本川越駅を結ぶ全長47.5kmの路線です。このうち、中井駅付近から野方駅付近までの約2.4kmでは鉄道を地下化し、道路と鉄道を連続的に立体交差化する「西武鉄道新宿線 中井駅~野方駅間 連続立体交差事業」を実施しています。2025年12月18日、地下化工事が進む新井薬師前駅を取材しました。

DSC02198 西武新宿線 中井駅~野方駅間 連続立体交差事業(2025年12月・新井薬師前駅)新井薬師前駅の北側に隣接する工事現場と新井薬師前第1号踏切道

 連続立体交差事業は、東京都が事業主体となり、地元区市および鉄道事業者と連携して実施する都市計画事業です。本事業では東京都と西武鉄道が施行協定を締結し、同協定に基づいて西武鉄道が鉄道工事を行っています。全体事業費は約1,219億円で、国、東京都、中野区および西武鉄道が費用を負担しています。鉄道事業者主体の事業と誤解されがちですが、踏切除却による交通渋滞の解消などを目的とした「道路整備」の一環として進められています。

 本事業により7か所の踏切が除却され、交通渋滞の解消が図られます。都市計画道路は補助第220号線、補助第26号線(中野通り)、中野区画街路第4号線の3路線と交差しています。また、新井薬師前駅と沼袋駅が地下駅になります。

map-1 西武新宿線 中井駅~野方駅間 連続立体交差事業(2025年12月・新井薬師前駅)工事区間の詳細地図 出所:東京都

 中井駅~野方駅間における連続立体交差事業の主な事業効果には、次のようなものがあります。
 ・踏切による交通渋滞や踏切事故の解消
 ・鉄道による地域分断の解消
 ・鉄道の安全性の向上、踏切経費の節減
 ・駅周辺の整備、交通アクセスの改善

 中井駅~野方駅間の工事は5つの工区に分けて進められていて、このうち第5工区がシールド工法により掘進を行う区間です。新井薬師前駅部は、中井方面取付部とともに第1工区に当たり、開削工法により掘削を行う区間です。

20260109_nakainogata 西武新宿線 中井駅~野方駅間 連続立体交差事業(2025年12月・新井薬師前駅)工事の進捗状況(2026年1月時点) 出所:西武鉄道

 工事は区間や構造に応じて、施工方法が使い分けられています。駅部や地上から地下への移行区間である取付部では、地上から掘削してトンネルを構築する開削工法を採用し、駅間などの一般部ではシールド工法により施工します。なお、シールド機は駅部では掘進を行わず、開削により構築した空間内をそのまま通過します。

 新井薬師前駅については、約4年前の2022年1月に取材しました。

 新井薬師前駅の北側には、作業構台で覆われた施工ヤードが設けられています。工事完了後、駅は現在よりもやや北側の地下に移動する予定。現在の駅舎と線路は撤去され、新しい駅の南側には中野区が約3,700m²の交通広場を整備する計画です。

DSC01276 西武新宿線 中井駅~野方駅間 連続立体交差事業(2025年12月・新井薬師前駅)新宿方面から見た新井薬師前駅と北側の施工ヤード

 第1工区(中井方面取付部)に設けられたシールド発進立坑の北側から地下へ移動します。

DSC02160 西武新宿線 中井駅~野方駅間 連続立体交差事業(2025年12月・新井薬師前駅)地上から見るシールド発進立坑

 線路を工事桁で受け替え、地上からおよそ12mの深さまで掘削し、山留支保工の解体を終えました。現在はシールド機の掘進に向けた準備工事が進められており、掘削した土砂を地上へ搬出するための設備や、後続台車・資機材を運搬するための軌条敷設に向けた作業床を構築しています。

DSC02140 西武新宿線 中井駅~野方駅間 連続立体交差事業(2025年12月・新井薬師前駅)シールド発進部の全景。写真左側は掘削土砂を地上へ搬送する設備を設ける空間

 今回の工事では、単線トンネル用シールド機を2台使用し、新井薬師前駅東側の発進立坑から野方駅方面へ向けて掘進していく計画です。現在は、シールドの掘進に向けた準備が進んでいます。

DSC01204 西武新宿線 中井駅~野方駅間 連続立体交差事業(2025年12月・新井薬師前駅)組み立てが進むシールド機の後部

 外径7,040mmの泥土圧シールド機を使用して、外径6,900mmのセグメントトンネルを構築します。添加剤を混ぜた土砂を改良土として切羽前面に充満させ、シールド機の推進力で土圧を維持しながら掘り進みます。切羽全体に均等に土圧を作用させて安定を確保し、スクリューコンベヤで土砂を搬送します。

DSC01212 西武新宿線 中井駅~野方駅間 連続立体交差事業(2025年12月・新井薬師前駅)中井駅~野方駅間で使用する泥土圧シールド機 写真:西武鉄道

 シールド発進立坑から新宿方面の掘割区間(地表から掘り下げた区間)でも、作業床の構築が進んでいます。

DSC02146 西武新宿線 中井駅~野方駅間 連続立体交差事業(2025年12月・新井薬師前駅)シールド発進立坑から新宿方面の掘割区間

 新井薬師前駅の北側にある施工ヤードへ移動します。

DSC01223 西武新宿線 中井駅~野方駅間 連続立体交差事業(2025年12月・新井薬師前駅)新井薬師前駅の北側にある施工ヤード

 地下を掘削した際に出た土砂は、施工ヤードの開口部から地上に設置したクラムシェルのバケットで引き上げ、ダンプカーで搬出しました。また、鉄骨部材(山留材)をヤード内に搬入し、掘削の進捗に合わせて、山留支保工を設置しました。

DSC01261 西武新宿線 中井駅~野方駅間 連続立体交差事業(2025年12月・新井薬師前駅)施工ヤードの開口部

 現在、施工ヤードの地下では、施工ステップの工程「4」に当たる掘削、支保工設置が完了した状況です。

figure-araiyakusimae 西武新宿線 中井駅~野方駅間 連続立体交差事業(2025年12月・新井薬師前駅)新井薬師前駅の施工ステップ 出所:西武鉄道

 新井薬師前駅部の地下には、深さ約16m、幅約16〜17m程度の空間に新しい駅を構築します。地下1階に改札口、地下2階にホームを配置する2層構造で、ホーム延長は約170m、幅員は約7〜8mとなる計画です。現在の新井薬師前駅は相対式ホーム2面2線ですが、地下化後は島式ホーム1面2線となり、これまでと同じく8両編成の列車が停車します。

DSC02168 西武新宿線 中井駅~野方駅間 連続立体交差事業(2025年12月・新井薬師前駅)新井薬師前駅部地下状況(野方方面を望む)

 新宿方面を見ます。先ほど第1工区(中井方面取付部)から見た、シールド発進部の到達側にあたる部分になります。

DSC01228 西武新宿線 中井駅~野方駅間 連続立体交差事業(2025年12月・新井薬師前駅)新井薬師前駅部地下状況(新宿方面を望む)

 中井方面取付部から発進したシールド機は、約104m掘進して新井薬師前駅部に到達する予定です。シールド機が到達する位置は、壁面に描かれた青色の円で示されています。開削工区側では止水対策として、到達隔壁と呼ばれる鋼製の壁を設置し、到達隔壁と褄部土留(青色の円が描かれた壁面)との間に流動化処理土を充填したうえで、シールド機を到達させます。なお、褄部土留については、シールド機による直接切削は行わず、人力により撤去する計画です。

DSC01227 西武新宿線 中井駅~野方駅間 連続立体交差事業(2025年12月・新井薬師前駅)新井薬師前駅部地下状況(新宿方面を望む)

 野方方面へ進みます。新井薬師前駅付近は現在、曲線半径約300mの急曲線区間ですが、地下化完成時には曲線半径約500mの緩やかな線形に改良されます。これにより、列車とホームとの隙間は現在よりも小さくなる見込みです。

DSC02176 西武新宿線 中井駅~野方駅間 連続立体交差事業(2025年12月・新井薬師前駅)第1工区(新井薬師前駅部)野方方面

 シールド機を通過させるため、切梁(きりばり)と呼ばれる水平材の撤去が進められています。現在は4段目・5段目の切梁が一部残っており、今後これらを撤去して、シールド機の通過に備えておきます。

 第1工区(新井薬師前駅部)野方方面の壁面には、沼袋駅部へ向けて発進するシールド機の位置が青色の円で描かれていました。

DSC02186 西武新宿線 中井駅~野方駅間 連続立体交差事業(2025年12月・新井薬師前駅)第1工区(新井薬師前駅部)野方方面

 西武新宿線 中井駅~野方駅間 連続立体交差事業について、東京都建設局 道路建設部 鉄道関連事業課の木下悟志課長は次のように述べました。「本事業区間にある7か所の踏切は、すべてピーク時の遮断時間が40分以上の、いわゆる『開かずの踏切』のため、慢性的な交通渋滞や踏切事故の危険性など切実な問題を抱えている。引き続き、安全に細心の注意を払いながら工事を進め、本事業の着実な推進を図っていく。」

 西武新宿線 中井駅~野方駅間の事業は、現行の事業期間が2027年(令和9年)3月末までですが、現在、事業期間の変更について関係機関と協議を実施中とのことです。

公式:新宿線中井〜野方駅間連続立体交差事業 :西武鉄道Webサイト

■事業の概要
 事業名:西武新宿線(中井駅~野方駅間)連続立体交差事業
 事業期間:2013年度〜2026年度
     現行の事業期間は2027年(令和9年)3月末
 事業費:約1,219億円
 事業主体:東京都建設局
 工事発注者:西武鉄道株式会社
 ・第1工区(中井方面取付部・新井薬師前駅部)
  施工区間:妙正寺川〜新井薬師前駅
  工事延長:548m
  施工方法:開削工法
  施工者:鹿島・鉄建・戸田・五洋建設工事共同企業体
 ・第5工区(中井第7号踏切道付近〜沼袋第3号踏切道付近)
  施工区間:中井第7号踏切道付近〜沼袋第3号踏切道付近
  工事延長:912m
  施工方法:シールド工法(泥土圧シールド)
  施工者:大成・西武・安藤間・東急建設工事共同企業体