首都高速道路 羽田線(東品川桟橋・鮫洲埋立部)更新事業の現場見学会

 首都高リニューアルプロジェクト

 首都高速道路の羽田線(東品川桟橋・鮫洲埋立部)は、長年にわたる過酷な使用により損傷が進み、現在、構造物の更新(造り替え)が進められています。2025年10月22日、報道機関向けに「首都高速道路 羽田線(東品川桟橋・鮫洲埋立部)更新事業の現場見学会」が開催されました。

 羽田線の東品川桟橋・鮫洲埋立部は、都心と羽田空港を結ぶ重要な幹線です。1963年の開通から60年以上が経過し、1日約7万台という交通量に加えて海面に近く腐食しやすい環境下にあることから、構造物の老朽化が進行。近年では重大な損傷も確認されていました。

photo老朽化が進行した羽田線の橋脚 出所:首都高速道路

 このため、羽田線 東品川桟橋─鮫洲埋立部(約1.9km)を「SHUTOKO RENEWAL PROJECT」の第一弾として、構造物を根本から見直すリニューアル工事が進められています。

 工事は本線の交通機能を維持しながら、う回路を設けて交通を切り替え、半断面ずつ造り替える方式で進めています。
 2016年2月 工事着手、上り線う回路設置
 2019年9月 上り線切替・大井JCT通行止解除
 2020年6月 下り線切替
 2025年10月 下り線切替
 2026年春以後 上り線切替→大井JCT切替→迂回路撤去

photo工事のステップ 出所:首都高速道路

 2017年9月には、羽田線(上り)う回路の現場公開が行われました。

 工事区間は、海面に近い約1.3kmの「東品川区間(東品川桟橋)」と、埋立地に整備された約0.6kmの「鮫洲区間(鮫洲埋立部)」に分けられます。

photo工事区間の詳細図 出所:首都高速道路

 まずは、東品川区間を見ます。本線と海水面の距離を空けることで、塩分による損傷を避けます。橋脚は防食対策を強化、維持管理用足場「恒久足場」を設けました。長期的な耐久性と維持管理性に優れた構造に造り替えています。

photo東品川区間の構造 出所:首都高速道路

 更新された本線は、東京海の平均的な海面の高さから道路面までの高さが最大約20mと、かなり高くなっています。また、並行するモノレールからの離隔を確保しています。

photo海水面から離された東品川区間 出所:首都高速道路

 更新された下り線の本線へ移動します。この区間の供用に伴い、現在車が走行している下り線は上り線として切り替えられます。左側には、湾岸線大井JCTの合流箇所を確認できます。

photo更新された下り線、先は芝浦方面

 反対側です。湾岸線大井JCTのランプの右側では、う回路(上り線)を車が走行しています。

photo先は勝島方面

 本線の下部へ移動します。更新前の本線の一部が残っていて、モノレールよりも低い位置を通っていたことがわかります。

photo更新前の本線の一部

 本線を支える橋脚が連なります。施工場所を鋼管矢板で囲うように締め切って、内側の水を排出して工事を進めています。

photo本線を支える橋脚が連なる

 海の中に建つ鋼製の橋脚です。そのままではすぐに錆びてしまうため、海水面付近には「ステンレスライニング」という錆びにくい厚さ1.2mmのステンレス鋼板を巻き付けています。それ以外の部分には、通常の塗装に加え、錆びにくい金属を吹き付ける「金属溶射」を施しています。

photoステンレスライニングが施された橋脚

 鋼管矢板で囲われた内側に入りました。普通の塗装は30年程度で錆びますが、この橋脚は100年以上錆びないとされています。

photo最下部から橋脚を見上げる

 本線上に降った雨水が、橋脚内のパイプを通って海面付近まで排水される構造を確認できます。

photo橋脚に備え付けられたパイプ

 東品川区間の桁下空間に設置されている恒久足場に入ります。

photo恒久足場の扉

 恒久足場の内部は高さが1.8m以上あり、本線の点検や補修をしやすいことが特徴です。従来は時間をかけて仮設の足場を組んで点検していたため、恒久足場は迅速さにも寄与します。また、恒久足場が飛来塩分をシャットアウトすることで、本線が腐食に対してもより強い構造になっています。

photo恒久足場の内部、上部は本線の床版

 恒久足場の内部には、避難経路図も掲示されています。

photo恒久足場の避難経路図

 東品川区間と鮫洲区間の境に来ました。

photo先が鮫洲区間

 鮫洲区間を見ます。地盤改良した地面上に中空の「プレキャストボックス」を配置して、恒久足場と同様に維持管理空間を確保しています。

photo鮫洲区間の構造 出所:首都高速道路

 モノレール側に設置された、更新前の本線の一部を転用した通路を通り、プレキャストボックス内部に入ります。

photo維持管理空間の扉

 プレキャストボックス内部は高さを2.0m以上確保していて、維持管理性を向上しています。プレキャストボックスはエポキシ樹脂被覆鉄筋を採用、耐久性があります。

photoプレキャストボックス内部

 羽田線(東品川桟橋・鮫洲埋立部)更新事業について更新・建設局の石田高啓事業推進部長は、「地盤改良や施工スペースの確保など苦労も多かったが、大きなプロジェクトをひとつ成し遂げたという充実感がある。100年先まで安全・安心な構造であり続ける、信頼ある高速道路を維持していきたい」と話しました。

 2025年10月29日午前1時に羽田線(下り)を更新線へ切り替えます。2026年春以後には、上り線切替、大井JCT切替、迂回路撤去を順次実施し、羽田線(東品川桟橋・鮫洲埋立部)更新事業はいよいよ最終段階を迎えます。

■工事の概要
 路線名:高速1号羽田線
 延長:約1.9km
 事業費:約1600億円

公式:東品川桟橋・鮫洲埋立部更新