首都高 高速大師橋更新 現場公開(2023年5月-6月)

 首都高リニューアルプロジェクト

 高速大師橋は、多摩川に架かる首都高速1号線の橋梁です。高速1号羽田線高速大師橋の更新(造り替え)について首都高速道路では数回、報道機関に現場を公開しました。

 高速大師橋は1968年の開通から50年以上が経過、一日当たり8万台の交通量があることから劣化が著しく進み、1,200箇所以上もの疲労亀裂が確認されていました。様々な補強対策を行なってきましたが、新たな疲労き裂の発生が確認されていることもあり、長期的な安全性を確保する観点から橋梁の架け替え工事を進めました。2018年1月から工事に着手、2023年6月に2週間の通行止めを経て、6月10日に開通となります。

photo周辺地図と更新区間 資料:首都高速道路

 高速大師橋は、産業道路の大師橋の下流に位置します。

 既設橋は橋長292m(支間長:80m+132m+80m)、幅員16.5mの3径間連続鋼床版箱桁橋です。1968年に供用しました。

photo既設橋 写真:首都高速道路

 下部工はT型RC単柱橋脚、橋桁の重量は約2,300tです。自重を軽量化し、多摩川の流れを阻害しないよう橋脚の間隔を長くしたため、たわみやすい構造でした。

 新設橋は橋長292m(支間長:80m+132m+80m)、橋梁重量約4,000t、幅員18.2mの鋼3径間連続鋼床版箱桁ラーメン橋。橋脚形式は、鋼-鉄筋コンクリート複合橋脚(門型柱)3基、鉄筋コンクリート橋脚1基(陸上部)、基礎形式は鋼管矢板井筒基礎(河川部)、鋼管杭基礎(陸上部)です。

photo新設橋の完成イメージ 資料:首都高速道路

 上部工の荷重が新設橋より大きく上回るため、下部工も合わせて造り替えます。河川部は門型橋脚、陸上部は矩形型橋脚になります。鋼重は約4,100tあり、長さと重さは東京タワーとほぼ同等です。橋桁の下の面に恒久足場を設置することで、維持管理性と橋桁の耐久性が向上します。

 通常であれば、橋桁の造り替えには年単位の通行止めが必要になります。非常に多い交通量の影響を最小限にするため、さまざまな工夫を凝らし、通行止めをわずか2週間にとどめて橋梁の架設を完了させました。

photo施工ステップ 資料:首都高速道路

 工事は既設橋の下流に新設橋を事前に構築し、2本の橋を上流側にスライドして置き換える「横取り一括架設工法」を採用しました。新設橋の橋脚を構築し、下流側に橋桁を組み立て、2週間の全面通行止を実施して移動用レールとジャッキにより既設橋と新設橋を上流側へ約30m移動します。既設橋は、新設橋の開通した後に解体します。

新設橋は3径間で、それぞれの橋桁は以下の通りです。
 川崎側橋桁(P4-P5ブロック):長さ約82m・重さ約1300t
 中央の橋桁(P5-P6ブロック):長さ約132m・重さ約1900t
 東京側橋桁(P6-P7ブロック):長さ約74m・重さ約700t

 これまで、2022年5月の現場公開では新設桁の一部となる川崎側橋桁の運搬を、2022年11月の現場公開では既設橋と3径間が連結した新設桁を見ることができました。

開通の1ヶ月前に、報道機関向け現場公開が集中して行われました。
 ・5月15日:新設桁 初公開
 ・5月27日:通行止め初日
 ・5月29日:通行止め3日目
 ・6月9日:通行止め最終日

●5月15日:新設桁 初公開
 架け替えに向けた事前の準備作業が概成したため、新設桁が公開されました。東京側、多摩川下流から新設桁を見ます。

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 新設桁がスライドを完了すると、梁が伸びている箇所を門型橋脚と溶接して一体化します。スライドする前のため、一体化前の橋脚上部だけを見ることができます。

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 東京側、多摩川上流から見ます。ベントの上に、既設桁と新設桁をスライドさせる移動用レールを設置しています。

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 移動用レールと桁の間に、横取り設備を確認できます。

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新設桁の上部へ移動します。通行止めを2週間という短い期間にするため、以下のような工夫が盛り込まれています。
 ・スライド(横取り)による一括架け替え
 ・あらかじめ橋をほぼ完成させて通行止期間を短縮
 ・雨天でも工事可能な環境を整備して確実に工程を管理

 路面の舗装は上下2層構造で下の層(基層)まで多くの範囲で施工が完了し、照明柱や壁高欄、案内板など橋上の設備の多くは設置を終えています。

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 雨天での舗装の施工時に備えた屋根を設置しています。

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 新設桁をスライドした後、ジャッキダウンし全断面溶接で橋脚を接合します。雨天でも工事が進められるように防雨施設を設置しています。

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 川崎側、新設桁の終端です。通行止め期間の横取り一括架設に向けて準備が進みます。

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●5月27日:通行止め初日
 2023年5月27日朝5時から6月10日朝5時までの2週間、以下が通行止めになりました。

photo通行止め区間 資料:首都高速道路

高速神奈川1号横羽線 大師出入口ー高速1号羽田線 平和島出入口(上り・下り)
高速1号羽田線 昭和島JCTー高速湾岸線 東海JCT(上り・下り)

 閉鎖されている大師料金所の上から、高速大師橋を眺めます。大師入口が閉鎖されています。

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 スライド前の新設桁を確認できます。

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 これより2日間かけて既設橋両端の端部桁を切断します。

photo提供:首都高速道路㈱、撮影:㈱共映

 東京側は約5m、川崎側は約6m切断し、切断した端部桁は120t吊クレーンで川崎側に配置したクレーン台船に吊り下ろして撤去しました。

photo提供:首都高速道路㈱、撮影:㈱共映

●5月29日:通行止め3日目
 架け替えはまず、5月28日夜間より既設桁を所定の位置まで約30mスライドします。続けて5月29日に、新設桁を約30mスライドします。

photoスライドの手順 資料:首都高速道路

 新設桁は周辺の建物に当たらない位置に組み立てたため、移動用レールに対して斜め方向にスライドする必要があります。東京側に約3m短くなっているため、その間隔を活用します。

 5月28日22時30分頃、既設桁のスライドが始まりました。重量約3,800tの桁を上流側に約30m、約2時間で移動します。

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photo既設桁のスライド 提供:首都高速道路㈱、撮影:㈱共映(上下2枚とも)

 既設桁の架台下部に取り付けたPC鋼材を4基のダブルツインジャッキで引っ張り、移動用レールの上をスライドさせます。5月29日深夜0時30分頃、既設桁が所定の位置に到達しました。

 5月29日朝、スライドを完了した既設桁と、スライドの準備が進む新設桁です。

photo提供:首都高速道路㈱、撮影:㈱共映

 スライドしたことで、切断面を見ることができます。

photo提供:首都高速道路㈱、撮影:㈱共映

 5月29日13時頃、新設桁のスライドが始まりました。

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photo新設桁のスライド 提供:首都高速道路㈱、撮影:㈱共映(上下2枚とも)

 重量約4,000tの橋梁(総重量は約4,500t)を上流側に約30m、斜め方向に約5m、約4時間かけてスライドします。橋桁の架台下部に取り付けたPC鋼材を5基のダブルツインジャッキで引っ張り、移動用レールの上をスライドさせます。

 5月29日17時頃、新設桁は所定の位置に到達。この後、約1日かけて位置の微調整を行いました。

photo提供:首都高速道路㈱、撮影:㈱共映

 5月30日夜間、東京側の約3m短くなっている箇所に、端部桁を架設します。

photo提供:首都高速道路㈱、撮影:㈱共映

 河川内に設置した橋脚の柱部分と新設橋橋脚の梁部分を防雨施設の中で溶接し、橋全体を固定します。鋼板の厚さ9.5cm、直径5.5mの円柱橋脚4本の周りを約60周溶接しました。溶接延長は約8.4kmに及びます。1つの柱につき4名×4柱で16人の2交代制にて実施しました。

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photo防雨施設と溶接 提供:首都高速道路㈱、撮影:㈱共映(上下2枚とも)

 溶接を完了した後は、橋脚の梁のボルトを本締めし固定します。

 6月2日午後より台風2号の影響で工事が約1日中断しました。

 タイムラプス動画です。

 スライド後に可能になった部分の壁高欄などを施工、温度変化などによる橋の伸び縮みに対応するための伸縮装置や落下防止装置を設置し、路面の表層舗装などを行います。

●6月9日:通行止め最終日
 翌日の開通に先立って、通行止め解除直前の新設橋が公開されました。真新しい新設橋の横に既設桁があります。既設橋は2025年度末までに撤去される予定です。

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 現行基準に適合した構造にするため、幅員を16.5mから18.2m(両側に0.85mずつ)拡幅しています。

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 首都高速1号羽田線と首都高速神奈川1号横羽線の境界のため、神奈川1号横羽線の0キロポストを掲示しています。

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 橋はややカーブしていることがわかります。

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 多摩川で東京都と神奈川県の都県境があるため、警察の管轄が変わります。

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 東京側の接続部分です。

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 川崎側へ戻ります。一部の壁高欄は、夜間に車線規制により設置を完了します。

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 先は大師出口および大師料金所になります。

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 2週間の通行止め期間中、約2,200人の作業員・警備員が従事しました。

photo提供:首都高速道路㈱、撮影:㈱共映

 高速大師橋は予定通り、2023年6月10日午前5時に開通しました。

 首都高速道路株式会社の前田信弘代表取締役社長は次のようにコメントしています。
「通行止期間中は、首都高速道路及び通行止区間周辺の一般道路で通常以上の渋滞・混雑が生じるなど、お客さま及び通行止区間周辺の一般道路をご利用されている皆さまには大変ご迷惑をおかけしましたが、工事や渋滞緩和へのご理解とご協力をいただき、誠にありがとうございました。今後も、「首都高リニューアルプロジェクト」を進めるなど、お客さまへ安心・安全な首都高速道路を提供し、首都圏のひと・まち・くらしを結び、豊かで快適な社会の創造に貢献してまいります。」

■工事の概要
 工事費:437億円
 発注者:首都高速道路
 受注者:大成・東洋・IHI・横河 高速大師橋更新事業異工種共同企業体(JV)

公式:高速大師橋リニューアル