高速大師橋は、多摩川に架かる首都高速1号線の橋梁です。首都高速道路は2022年11月16日、高速1号羽田線高速大師橋の更新（造り替え）状況を公開し、高速1号羽田線の工事による終日通行止めを2023年5月下旬から2週間実施すると発表しました。
高速大師橋は1968年の開通から50年以上が経過、一日当たり8万台の交通量があることから劣化が著しく進み、現在は1,200箇所以上もの疲労亀裂が確認されています。首都高速道路ではこれまで様々な補強対策を行なってきましたが、新たな疲労き裂の発生が確認されていることもあり、長期的な安全性を確保する観点から橋梁の架け替え工事を2018年1月から進めています。
工事区間の周辺地図 資料：首都高速道路
高速大師橋は、産業道路の大師橋の下流に位置します。多摩川のさらに下流には多摩川スカイブリッジが架かっています。
既設橋は橋長292m（支間長：80m+132m+80m）、幅員16.5mの3径間連続鋼床版箱桁橋です。
既設橋 資料：首都高速道路
自重を軽量化し、多摩川の流れを阻害しないよう橋脚の間隔を長くしたため、たわみやすい構造になっています。
新設橋は292m（支間長:80m+132m+80m）、幅員18.2m、橋桁重量約4,000t、鋼3径間連続鋼床版箱桁ラーメン橋、鋼-鉄筋コンクリート複合橋脚（門型柱）3基・鉄筋コンクリート橋脚 1基（陸上部）。既設橋の橋脚は動かすことができないため、門型の橋脚となります。基礎形式は鋼管矢板井筒基礎（河川部）、鋼管杭基礎（陸上部）です。
新設橋（完成イメージ） 資料：首都高速道路
現行基準に適合した構造にするため、幅員を16.5mから18.2m（両側に0.85mずつ）拡幅し、上部工の荷重が既設より大きく上回るため下部構造も合わせて造り替えます。橋桁の下の面に恒久足場を設置することで、点検や補修をしやすくします。
既設橋の下流に新設橋を事前に構築し、2本の橋を上流側にスライドして置き換える「横取り一括架設工法」を採用することで、わずか2週間の通行止めで橋梁の架設を完了させます。
新設橋を支えるための橋脚構築→新設橋の組み立て（現在）→全面通行止を実施してジャッキにより既設橋と新設橋を上流側へ約30m移動（2023年5月下旬から2週間）→新設橋の開通および既設橋の解体、という手順で進みます。
施工ステップ 資料：首都高速道路
新設橋は3径間で、それぞれの橋桁は以下の通りです。
川崎側橋桁（P4-P5ブロック）：
長さ約82m・重さ約1300t 2022年5月架設完了
中央の橋桁（P5-P6ブロック）：
長さ約132m・重さ約1900t 2022年4月架設完了
東京側橋桁（P6-P7ブロック）：
長さ約74m・重さ約700t 2022年8月架設完了
半年前となる現場公開（2022年5月）では、新設橋の一部となる川崎側橋桁を運搬しました。現在、3径間はすべて連結し、長さ292m、重量約4,000tの新設桁として全体を見ることができます。大きさや重さは高さ333m、重量約4,000tの東京タワーとほぼ同じです。
高速大師橋付近の空撮写真
多摩川の下流側から高速大師橋へ船で移動します。
中央の橋桁は横浜ヤードで地組し、台船に載せて現地まで運びました。
新設橋の下を通ります。横に並ぶ既設橋が見えてきました。
既設橋の下から東京側を見ます。橋桁をスライドする橋桁移動設備（ベント）が設置されています。2023年5月下旬から2週間で、ジャッキにより既設橋を上流側へ約30m移動し、既設橋が架かっていた位置に新設橋を約30m移動します。
川崎側を見ます。東京側と同様にベントを確認できます。6基のベントで橋桁をスライドさせます。
川崎側の橋桁は有明ヤードで地組し、台船に載せて現地まで運びました。現在、橋上では高欄や照明などの設置工事が進んでいます。
2023年5月下旬から2週間の通行止めとなる区間は以下の通りです。
上り：高速神奈川1号横羽線 大師入口─高速1号羽田線 平和島出口
高速1号羽田線 昭和島JCT─高速湾岸線 東海JCT
下り：高速1号羽田線 平和島入口─高速神奈川1号横羽線 大師出口
高速湾岸線 東海JCT─高速1号羽田線 昭和島JCT
通行止期間での混雑が予想されるため、車の利用を控えるか、う回ルートを利用するよう首都高速道路では呼びかけています。
■工事の概要
工事費：437億円
発注者：首都高速道路株式会社
受注者：大成・東洋・IHI・横河 高速大師橋更新事業異工種共同企業体（JV）
公式：高速大師橋リニューアル