「バスタ新宿」は、新宿駅に直結する日本最大級の高速バスターミナルです。2025年12月20日に始まった同施設を公開するツアーに先駆けて、同月10日に報道向けのモニターツアーが開催されました。
ツアー参加者は新宿駅改札近くで集合・受け付けを行い、案内スタッフに誘導されてオープニングムービーを視聴します。バスタ新宿がどのような経緯で整備され、完成に至ったのかを学ぶ構成です。
バスタ新宿は、国道20号(甲州街道)の道路空間を立体的に活用し、JR線の上に人工地盤を設けて整備されました。運営主体は国土交通省関東地方整備局 東京国道事務所で、道路施設として位置付けられています。
まずは、高速バスの乗車場がある4階を巡ります。
バスタ新宿の窓から新宿駅と直結していることを実感
待合室にはインフォメーションカウンターが設けられています。テナントエリアでは、限定土産の開発背景や店舗運営の工夫など、普段は表に出にくい取り組みが紹介されました。
待合室にあるインフォメーションカウンター
バスタ新宿の模型も展示されています。乗車と降車は4階と3階に分離されており、4階を乗車バースが並ぶ「出発エリア」、3階を降車場とタクシープールを備えた「到着エリア」とすることで、バス・タクシー・歩行者の動線が交錯しない構造を実現しています。こうした立体的な整備により利便性が向上し、低コストの国内移動手段としてインバウンド(訪日客)需要にも寄与しています。
バスタ新宿の模型。新宿駅の真上に位置していることがわかる
バスタ新宿は2016年4月に開業しました。新宿駅周辺に点在していた19カ所の高速バス乗降場を集約し、利用者動線と交通処理の効率化を図っています。現在は南は福岡県、北は青森県まで、全国約300都市へ毎日約1200便が発着し、年間利用者は約1000万人に上ります。
バスタの発券カウンター。今は発券から乗車までネットで完結できる
乗り場エリアの一角には管制室が設けられています。バスに搭載された自動料金収受システム(ETC)と連携する管制システムにより、各乗降場の停車状況をリアルタイムで把握し、渋滞や混雑状況に応じて最適な乗降ポイントを調整しています。
一角にある管制室(写真左)
通称「おにぎり」と呼ばれる国道標識の実物を手に取り、重さや質感を体験できるコーナーも用意されています。この国道標識は、バスタ新宿が国道20号の道路空間であることを示す象徴的な存在です。
持って撮影できる本物の国道標識
4階の乗車バースでは、全国各地へ向かう高速バスが次々と発着する様子を間近で見学できます。バス運行を支える現場の仕組みを実感できる場面です。
4階の出発エリア。状況によりバスが到着することもある
停車中のバスの下には鉄板が敷かれています。こうした構造的な工夫を知ることも、インフラツーリズムの魅力の一つといえます。
バスの下に敷かれている鉄板
次に、2階の「Suica(スイカ)のペンギン広場」へ移動します。
バスタ新宿から見るSuicaのペンギン広場
バスタ新宿は国土交通省が管轄する国道20号で、ペンギン広場はJR東日本の管轄のため、両者の境界を示す道界が各所に設置されています。
国土交通省が管轄を示す道界
JR線の線路上に構築された人工地盤の上を歩くことで、バスタ新宿が「線路の上に浮かぶターミナル」であることを実感できます。鉄道上空を活用した都市空間の高度利用を体感できるポイントです。
バスタ新宿2階南側の人工地盤
2007年当時の、工事中の人工地盤
2007年には、工事中の人工地盤を歩く親子向け見学会も行われていました。
最後に、3階の到着エリアを巡ります。ここにはタクシープールや東京観光情報センターが設けられています。
3階の到着エリア。状況によりバスが出発することもある
ツアーの締めくくりとして、バスタ新宿で働くスタッフへのインタビューや、通常は関係者しか立ち入れないエリアを仮想現実(VR)で見学する「バスタVR大解剖」を体験しました。隣接ビル屋上から見下ろしたバスタ新宿の全景や、通行できない構造部の内部を通じて、巨大ターミナルの成り立ちと日常運用を立体的に把握できます。
一般に公開するツアー「バスタ新宿大解剖!」は、東武トップツアーズ(東京・墨田)が月に2日、土曜日に開催しています。1日4回の開催で、各回約70分、定員は10人、参加費は2000円です。未就学児は参加不可で、小学生は保護者同伴が必要となります。事前予約制で、専用サイトから申し込みを受け付けています。
今回の報道向けモニターツアーでは管制室内部の見学は含まれていませんでしたが、高速バス運行を支える中枢機能であるだけに今後の企画で見学対象に加わると、ツアーの訴求力は一層高まりそうです。
国土交通省は、インフラを観光資源として活用する「インフラツーリズム魅力倍増プロジェクト」を推進し、バスタ新宿をモデル地区の一つに位置付けています。バスタ新宿は鉄道やバス、タクシーなど多様な交通モードが集約する公共交通ターミナルを官民連携で整備する「バスタプロジェクト」の第1号です。都市の交通結節点そのものを「見せる」試みは、今後の都市インフラを発信する手法の参考となるでしょう。


