首都高講座は、首都高速道路における工事の現場や施設、車両などを見学できるイベントです。
2011年9月8日、32限目の「猛暑 汗だく トンネルツアー」が行われました。
「首都高講座 32限目:猛暑 汗だく トンネルツアー」では、中央環状品川線の建設現場でトンネル建設について学びます。
中央環状品川線の大井現場事務所へ集合、14時より開始となります。抽選に応募して当選した18歳以上の約20名が参加しました。
参加者には、資料・ヘルメット・軍手・防塵マスク・レシーバーが用意されています。まずは、工事における概要の説明を受けます。
中央環状品川線は、すでに供用されている中央環状新宿線と湾岸線とを結ぶ、中央環状線の南側部分にあたる首都高速道路。現在、3号渋谷線と中央環状新宿線は大橋JCTで結ばれていて、ここに中央環状品川線を接続することで、中央環状線が完成します。
中央環状品川線の延長は約9.4kmで、うち約8.4kmは山手通りもしくは目黒川の地下を通ります。
大井JCT(おおいジャンクション)と大橋JCT(おおはしジャンクション)の間には五反田出入口があり、1号羽田線と2号目黒線には接続しません。
中央環状品川線の施工は、内回りとなる大井行のトンネルを東京都が受け持ち、外回りとなる大橋行のトンネルと五反田出入口を首都高速道路が受け持っています。
トンネルを掘るために使われるシールド機は、円筒形の掘削機です。先端のカッターディスクで前面の土砂を掘削しながら、組み上がったセグメントを足がかりにしてジャッキの力で前進、同時に、トンネルの壁面となるセグメントというをリング状に組み立てながら進みます。
内回りと外回りの2つのトンネルは、大井JCT付近から大橋JCTへ向けて、シールド機によりほぼ同時に掘削が始まりました。2011年9月8日現在、大井行が東急東横線の下となる約6.7kmを、大橋行は山手通りの目黒警察署の下となる約5.7kmを、それぞれ通過しました。
専用の歩道橋を渡り、シールド機の発進基地である大井北たて坑へと移動します。
トンネルを形づくるセグメントがトレーラーで運び込まれ、セグメントストックヤードに積まれた後、地下へと搬入されていきます。
中央環状線のような世界規模のトンネルは、いくつかの会社がJV(共同企業体)を構成して、工事を請け負います。中央環状品川線は、東京都の発注した大井行のトンネルを大成建設JVが、首都高速道路の発注した大橋行のトンネルを鹿島JVが、それぞれ工事を請け負っています。
エレベーターで地下へと移動します。
エレベーターの横には垂直ベルコンが2基あり、トンネルの先端でシールド機によって掘られた土砂が運び出されています。1時間当たり215㎥の土砂を運び出される垂直ベルコンを2基稼働させることで、最大掘進速度で発生する386㎥の土砂に対応することができます。
地下約40mへと下りました。
55トン大型資材リフトが設置されています。1回につき4ピースのセグメントを搬入することができ、一般の大型車両も積載できます。
生コンを補充するための装置があり、坑内へ搬入されたトラックミキサー車により運搬されます。
シールド機により掘り進められた、トンネルの断面が広がります。トンネルは外径12.3m、内径11.5m。大量の資材や土砂をスムーズに運搬するため、床板により上下が分離されています。
床板の上部では、汎用車両により生コンや資材を運搬、連続ベルコンで掘削された土砂が運ばれます。
床板の下部では、タイヤ式自走のセグメント搬送台車によりセグメントが搬送されます。
セグメントの幅は過去最大となる2m、厚さ40センチm。大8つと小1つを組み合わせることにより、リングを1つ、すなわちトンネルを2m分をつくることができます。
セグメント搬送台車は最高時速15km、1編成(5輌)で1リング分のセグメントを搬送します。
坑口に用意されたバスに乗り、シールド機が掘り進めているトンネルの先へと移動します。
土被りと呼ばれるトンネルの深さは、最小で五反田出入口付近の約14m、最大で南品川換気所付近の約46mとなっています。
バスで、トンネルの先端部より1.5km手前まで進みます。
緩やかなカーブが続きます。トンネルの上部にある緑色のダクトは、トンネルの先端部へ新鮮な空気を送る役割を担います。
汎用車両がすれ違う場合、トラックミキサー車が優先となります。どの汎用車両も、ナンバープレートは黒一色となっています。
トンネルの先端部より1.5km手前でバスから降り、床板の上部を徒歩で進みます。床板の下部には、セグメント搬送台車のレールが延びています。
カメラのレンズが一瞬にして曇ってしまうほど、高い湿度となっています。
ここから1.5km先では、シールド機がトンネルを掘り進めています。階段を上がり、通路を進みます。
床板がなくなり、セグメント搬送台車のレールが延びています。
床板をつくる作業が進められています。
鉄筋組立やコンクリート打設が行われています。
シールド機の後方には4台の後続台車が続き、シールド機やセグメント供給装置をサポートします。
鋼製のセグメントによりつくられた横連絡坑は、道路が開通すると、非常時の避難口となります。
セグメント供給装置の後方部分へとたどり着きました。
セグメント供給装置の中へと入っていきます。
轟音とともに、セグメントを積んだセグメント搬送台車が走ります。
シールド機の後方部分へとたどり着きました。
振り返り、セグメント供給装置の前方部分を見てみます。
バキューム装置により、セグメントが降ろされていきます。
シールド機の後方には、パネルで情報が表示されています。
シールド機へ、セグメントが次々と送り込まれます。
セグメントにはポリプロピレン繊維が混入されていて、耐火機能を持っています。また、大きな建物の下など荷重がかかる箇所では新しく開発された、背面が鉄板で覆われている合成セグメントが使われています。
さらに階段を上って先へ進むと、シールド機の先端部を見ることができます。シールド機は外径12.55m、長さ14.22m、重さ約2,000トンです。4階建てのビルの高さがあります。1ヶ月で約400m掘り進みます。
バキューム装置でセグメントを持ち上げるバキューム式のエレクターで、セグメントの割れや欠けが防止されています。
ここにて「首都高講座 32限目:猛暑 汗だく トンネルツアー」は終了となります。
中央環状品川線の開通により、新宿と羽田空港との所要時間が約40分から約20分に短縮されます。渋滞緩和、経済力強化、防災力強化、環境改善など、さまざまな効果が見込まれています。