建設現場体感DAYとは、工事や建設現場など土木の世界になじみのなかった人々が、普段見ることのできない建設現場や供用前の高速道路を歩いて見学できる、土木の日協賛のイベントです。
2017年11月12日、建設中の阪神高速道路6号大和川線で「建設現場体感DAY:阪神高速道路大和川線建設現場見学会」が行われました。
6号大和川線は、大阪府堺市の4号湾岸線から松原市の14号松原線に直結する、大和川の南側を沿って東西に走る延長約9.7kmの道路です。2019年度末の全線開通を目指し、大阪都市再生環状道路の一部として整備が進んでいます。
6号大和川線が開通すると、奈良方面(E25西名阪自動車道)から大阪・神戸の湾岸方面に向かう車が都心の1号環状線を経由せずに移動できるので、環状線や都心に向かう14号松原線の渋滞が大幅に緩和される見込みです。
見学会は、大阪府堺市の遠里小野(おりおの)町付近の大阪府道高速大和川線建設現場を会場として、9時30分から12時までと13時から15時30分までの2部制で行われました。事前に応募した約1600名の中から当選した人のうち、約400名が参加しました。
会場入口のゲートを通ります。
受付があり、参加者はパンフレットや記念品を受け取って進みます。
地下会場には体験コーナー・PRコーナー、大和川線シールドトンネル見学コーナーがあり、遠里小野換気所会場では少人数での遠里小野換気所見学ツアーが用意されています。
供用後に非常口となる階段から、地下会場へ移動します。
6号大和川線の西行きトンネルです。様々な体験コーナー・PRコーナーが並んでいます。
コンクリートねりねり体験コーナーです。コンクリートを練って作品づくりができます。
好きな色のコンクリートを選び、型で形を決めて、デコレーションします。数日でコンクリートが乾くと、オリジナルの小物が完成します。
ミニパワーショベルチャレンジコーナーです。
ミニパワーショベルを操り、ボールの中のぬいぐるみを1分30秒以内に何個すくえるかを競います。
ピタッ!とチャレンジ測量体験コーナーです。⼯事⽤の測量機器を使って正確な距離を測定します。2つのチャレンジが用意されています。
ひとつは、ローラー距離器で遊ぼうです。10歩で何メートル歩けるかを予想して、ローラー距離器で正確な距離を測り、感覚を把握する体験です。
もうひとつは、トータルステーション体験です。トータルステーションは距離と角度を正確に測ることができる機器です。選んだカードに書かれた距離を体感で決めて、トータルステーションで測った正確な距離と近ければ、景品を受け取ることができます。
反対車線となる6号大和川線の東行きトンネルにもPRコーナーがあります。
地上を掘って箱型のトンネル構造物(ボックスカルバート)を構築し、元の地表面まで土砂を埋め戻した開削トンネルになっています。6号大和川線の東西の端は、天井部から光が入る掘割構造です。
阪神高速技術のコーナーでは、TECMOS(阪神高速損傷早期発見テクノロジー)を胸に掲げた心強いキャラクターが出迎えてくれます。TECMOSは、PDCAサイクル(維持管理サイクル)を適切かつ効率的に実施するためのサポートツールです。
阪神高速パトロールのコーナーでは、パトロールカーの装備などを見ることができます。
西行きトンネルへ戻ります。休憩コーナーが用意されています。
阪神高速道路の工事のお知らせに登場するマスコットとして誕生したもぐらのコージくんは、ミチコさん、ドームくん、ミロちゃんの4人家族を支えるお父さんです。
事業PRコーナーとして、「〜ミッシングリンク〜⼤和川線/淀川左岸線延伸部・西船場JCT/⼤阪湾岸道路⻄伸部ー⻑⼤橋の仕組みー」「⾼速道路リニューアルプロジェクト(⼤規模更新・修繕事業)」があります。
模型があり、会場の周辺がわかります。
レンガでアーチ橋をつくる体験が行われています。橋の両側を固定してレンガを組み、レンガの間に砂をつめて固めます。
完成したアーチ橋は、子供だけでなく大人でも歩くことができます。
アーチ橋の上から力がかかると、反作用でアーチ橋の両端から内側に押す力が生まれ、支えることができます。阪神高速道路では7号北神戸線の大滝橋や水晶山橋がアーチ橋となっています。
地盤凍結工法の説明が行われています。地盤凍結工法は、地下水を含む土を凍らせて地盤を固める工法です。凍結した土は水を通さず、コンクリートと同じくらいの強度があります。工事が完了すると土は元に戻ります。
実際の工事では、地中に埋設したパイプに不凍液を通して土を凍らせます。不凍液の代わりの液体窒素を使用したデモが行われました。軟らかい土の塊を液体窒素に入れると、固い土に変化することがわかります。
大和川線シールドトンネル見学コーナーの入口です。シールド機が掘進して造ったシールドトンネルとなっています。遠里小野たて坑から西行きトンネルを歩きます。
大和川線のシールドトンネルは、阪神高速道路施工区間(本線)、大阪府施工区間(本線)、大阪府施工区間(ランプ部)の区間ごとに、3台のシールド機がそれぞれ使われました。本線を掘るシールド機は、片側のトンネルを掘削した後、たて坑で転回してもう片側のトンネルを掘削しました。
阪神高速道路施工区間(本線)西行きトンネルの、遠里小野たて坑から100m、浅香山たて坑まで900mの箇所です。遠里小野たて坑を発進したシールド機は、浅香山たて坑を通り常盤西たて坑まで約2,041mの西行きトンネルを掘削した後、転回して遠里小野たて坑まで東行きトンネルを掘削しました。
すべり台形式の避難通路の入口となります。シールドトンネルの路面の下にはボックス構造の避難通路が造られ、避難通路の側部は埋め戻されました。
トンネルで災害が発生した際、すべり台を降りて、避難通路へ移動します。大和川線シールドトンネルのすべり台形式の避難通路は、関西で初めての採用となります。
避難通路を通り、遠里小野たて坑へ戻ります。
約100m歩き、遠里小野たて坑へ戻りました。シールド機が発進した箇所となります。
振り返り、浅香山たて坑方面を見ます。シールド機が掘り進めた、円形の穴を確認できます。
大和川線シールドトンネル見学コーナーの出口です。
西行きトンネルを通って、受付まで戻ります。
西行きトンネルです。この先には鉄砲出入口があり、さらに進むと4号湾岸線の三宝JCT(さんぼうジャンクション)と接続します。
東行きトンネルです。先は常盤出入口、天美出入口、三宅西出入口が造られ、14号松原線と接続し、近畿自動車道、西名阪自動車道、阪和自動車道、阪神高速道路が接続する松原JCT(まつばらジャンクション)につながる予定です。
遠里小野換気所見学ツアーに参加します。受付で申し込み、少人数で遠里小野換気所をめぐります。換気所は、トンネルの中で発生する排気ガスをほぼ無害にして、上空へ放つ施設です。
各階にある設備を見ていきます。
電気集じん機が設置されているフロアへ移動して、設備の説明を受けます。
トンネルの内部で車から発生した排気ガスは、天井のジェットファンにより集められ、排風機によって電気集じん機と消音装置を通ってきれいな空気になった後、上空へと放たれます。すべての設備は1車線につき1台、設置されています。
電気集じん機です。
たばこの煙ほどの大きさ(0.01μm)からバクテリアほどの大きさ(10μm)の微小粉じんを電気の力で集めることによって、通過する排気ガスをきれいな空気にします。
排風機です。巨大なファンで、空気を上空へと送り込みます。
排風機の、内部の写真が貼られています。
消音装置です。54個の消音装置を通ることで、ファンによる騒音が120デシベルから90デシベルまで下がります。
拡声器を使っての実験が行われました。消音装置を通ることで、拡声器の音声は日常会話ほどの音量になります。
ここにて「建設現場体感DAY:阪神高速大和川線建設現場見学会 at 遠里小野」は終了となります。
阪神高速道路6号大和川線が開通することで、以下のような期待される効果があります。
・奈良県内からの交通が集中する西名阪沿線地域と大阪・神戸の湾岸地域を結ぶアクセスが向上
・大規模地震発生など災害応急活動の中心となる「堺泉北港堺2区基幹広域防災拠点」から内陸部へのルートの確保
・環状線や大阪港線などの都心部の渋滞区間を避けたルートが選択可能
・大和川線と並行する一般道路の交通が大和川線に流れることによる渋滞緩和
・大阪府内での大気汚染物質や二酸化炭素の排出量が削減
イベント会場周辺における■工事の概要
大和川線における阪神高速道路(株)の事業費:約2,589億円
<開削トンネル工事>
■遠里小野第1工区開削トンネル工事
発注者:阪神高速道路
施工者:清水・奥村建設工事共同企業体
■遠里小野第2工区開削トンネル工事
発注者:阪神高速道路
施工者:清水・奥村建設工事共同企業体
<換気所工事>
■遠里小野換気所新築その他工事(竣工)
発注者:阪神高速道路
施工者:ナカノフドー建設
<シールドトンネル工事>
■大和川線シールドトンネル工事
発注者:阪神高速道路
施工者:鹿島・飛島建設工事共同企業体
<換気所設備工事>
■大和川線トンネル換気設備工事
発注者:阪神高速道路
施工者:パナソニック環境エンジニアリング