首都高 高速大師橋更新 現場公開(2022年5月)

 首都高リニューアルプロジェクト

 高速大師橋は、多摩川に架かる首都高速1号線の橋梁です。2022年5月14日、橋梁の更新(造り替え)状況が公開されました。

 高速大師橋を含む首都高速1号線は、1968年11月の開通から50年以上が経過し、自動車による過酷な使用状況などで橋梁全体に多数の疲労亀裂が発生しています。長期に渡る耐久性の確保、維持管理しやすい構造を確保する観点から、橋梁の造り替えを行っています。既設橋を撤去し、同時に新設橋を架設します。

photo工事区間の周辺地図 資料:首都高速道路

 高速大師橋は、産業道路の大師橋の下流に位置します。多摩川のさらに下流には多摩川スカイブリッジが架かっています。

 一日当たり8万台の交通量があり、供用から54年経っていることから劣化が著しく進んでいることもあり、現在は1,200箇所以上の疲労亀裂が発生しています。これまで様々な補強を行なってきましたが、将来を見据え更新することになりました。

photo工事に関する詳細図 資料:首都高速道路

 既設橋は橋長292m(支間長:80m+132m+80m)、幅員16.5mの3径間連続鋼床版箱桁橋です。自重を軽量化し、多摩川の流れを阻害しないよう橋脚の間隔を長くしたため、たわみやすい構造になっています。

photo既設橋 写真:首都高速道路

 新設橋は292m(支間長:80m+132m+80m)、幅員18.2m、橋桁重量約4,000t、鋼3径間連続鋼床版箱桁ラーメン橋、鋼-鉄筋コンクリート複合橋脚(門型柱)3基・鉄筋コンクリート橋脚 1基(陸上部)。既設橋の橋脚は動かすことができないため、門型の橋脚となります。基礎形式は鋼管矢板井筒基礎(河川部)、鋼管杭基礎(陸上部)です。大きさや重量は東京タワーとほぼ同等になります。更新にともない現行基準に適合した構造にするため、幅員を16.5mから18.2m(両側に0.85mずつ)拡幅し、上部工の荷重が既設より大きく上回るため下部構造も合わせて造り替えます。点検や補修をしやすくするため、橋桁の下の面に恒久足場を設置します。

photo新設橋(完成イメージ) 資料:首都高速道路

 更新の手順です。現在はStep2、新設橋の組み立てを進めています。

photo施工ステップ 資料:首都高速道路

Step1:新設橋を支えるための4基の橋脚を造りました。既設橋の橋脚は動かすことができないため、門型の橋脚となります。橋脚の受け替え準備として、既設橋と新設橋を一時的に支えるための仮構台(ベント)を高速大師橋の上流側と下流側に設置しました。
工事機材や橋の部材を東京湾から大きな台船で運び込むため、羽田空港付近から現場まで2km以上の範囲に渡り、多摩川の川底を浚渫する大規模な工事が行われました。
Step2:新設橋を組み立てます。多摩川の流れを阻害しないように立てられるベントの数は限られるため、現場から離れた場所で大きな橋桁を組んで運搬します。
Step3:約2週間の全面通行止を実施して、既設橋の端部を撤去した後、ジャッキにより既設橋を上流側へ約30m移動します。
Step4:新設橋を既設橋が架かっていた位置へ約30m移動します。高欄や遮音壁の設置、舗装して開通します。
Step5:既設橋を解体、撤去して、2025年度に完了の予定です。

 中央の橋桁は横浜ヤード、川崎側橋桁は有明ヤードでそれぞれ地組し、台船に載せて現地まで運びました。潮の干満を利用し、台船から直接ジャッキで橋桁をベントの上に移動、架設します。中央の橋桁はベントへの配置を4月20日に完了しました。東京側橋桁は大型台船を横付けすることができないため、部材を中央の橋桁に運び込み、800t吊りトラベラークレーンで架設します。

 新設橋の橋桁は以下の通りです。
  川崎側橋桁(P4-P5ブロック):長さ約82m・重さ約1300t
  中央の橋桁(P5-P6ブロック):長さ約132m・重さ約1900t
  東京側橋桁(P6-P7ブロック):長さ約74m・重さ約700t

photo工事に関する詳細図 資料:首都高速道路

 橋長と桁長の関係は以下の通りです。
 ・川崎側橋桁は橋脚横梁も含む長さでP5橋脚横梁幅(約4m)の半分の約2m分支間長より長くなっています。
  ⇒80m+約2m=約82m
 ・東京側径間のうちP6橋脚横梁幅(約4m)の半分(約2m)は水上運搬した中央径間の橋桁に含んでいます。
  ⇒80m-約2m-約3m≒74m
 ・東京側径間の点線部は2023年度の通行止め時に設置予定(約3m)です。

photo工事に関する詳細図 資料:首都高速道路

 現場へ移動します。多摩川の上流側から高速大師橋を見ると、ベントが構築されていることがわかります。

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 橋桁をベントの上で移動することで架設します。

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 中央の橋桁における、これまでのベント上への設置を振り返ります。
 中央の橋桁は横浜ヤードで浜出ししました。橋桁を組み立てる際に使用したトルシア型高力ボルトは1本あたり20tの力で締め付けることができ、この工事全体では約5万本使われます。

photo写真:首都高速道路

 吊り能力3000tのフローティングクレーンで吊り上げます。

photo写真:首都高速道路

 リフトアップ能力3400tのジャッキを搭載した6000t級台船に積みます。

photo写真:首都高速道路

 約2時間で多摩川沖に到着、多摩川が水深3m以上になる潮位を見計らって多摩川河口に入りました。

photo写真:首都高速道路

 多摩川スカイブリッジの下をくぐる際は、台船が橋脚に接触することがないようスペーサー台船を配置して物理的に隔離しました。潮位が下がるのを待ってから通過し、多摩川スカイブリッジ付近で再び係留、潮位が上がるの待って移動を再開。ジャッキで持ち上げた橋桁をベントの上に進入させて、潮の干満を利用し潮位が低くなってくる状況を見据えながら、ベントへ荷重を掛け替えて設置しました。

photo写真:首都高速道路

 この日の公開は、川崎側橋桁の水上回転になります。5月9日に有明ヤードで浜出しした川崎側橋桁は、リフトアップ能力3400tのジャッキを搭載した台船に積載され、架設位置付近まで運ばれました。

photo写真:首都高速道路

 東京側に用意された現場公開会場から、川崎側を見ます。川崎側橋桁を載せた台船が現場水域の下流に待機しています。

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 川崎側橋桁の長さは約82m、台船の船長は約75mです。橋桁の径間が短いため、ベントの間隔も狭くなっています。台船が進入するため、台船の向きに対して橋桁を直交積みする必要がありました。

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 14時10分頃、係留位置からウインチ操作で待機位置まで回転を開始しました。台船がアンカーを軸にして反時計回りに約135度回転します。台船のバランスなどを考慮しながら架設位置に向きを合わせる必要があります。わずか15分ほどで回転を完了し、約30分間後に架設位置手前まで移動しました。

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 タイムラプス動画です。

 翌日未明、中央の橋桁と同様に、潮位とジャッキを利用してベントに荷重を掛け替えて橋桁の設置を完了しました。

photo提供:首都高速道路㈱、撮影:㈱共映

 首都高速道路 更新・建設局局長の諸橋雅之氏は「高速大師橋の更新は、首都高速1号線を2週間ほど通行止めにする必要がある。首都高の利用を控えていただいたり、湾岸線や他の道路へ迂回してほしい」と協力を呼びかけました。

■工事の概要
 工事費:437億円
 発注者:首都高速道路株式会社
 受注者:大成・東洋・IHI・横河 高速大師橋更新事業異工種共同企業体(JV)

公式:高速大師橋更新