首都高講座は、首都高速道路における工事の現場や施設、車両などを見学できるイベントです。
5限目は「開通1周年企画!国内最先端の神山町換気所を学ぼう」が行われました。
「首都高講座 5限目:開通1周年企画!国内最先端の神山町換気所を学ぼう」では、開通1周年を迎える首都高速道路中央環状新宿線(山手トンネル)の、神山町換気所について学びます。
山手通りにある神山町換気所へ集合、14時より開始となります。抽選に応募して当選した18歳以上15組30名が参加しました。
駒場東大付近の、山手通りの中央分離帯に3本の高い排気塔を見ることができます。工事が進む、首都高速道路中央環状新宿線(山手トンネル)の神山町換気所です。
参加者はヘルメットをかぶり、3本の排気塔のうち1本の真下にある、ハッチの中の階段を下ります。
換気所の内部へ入ります。
換気ファン室へ移動して、山手トンネルの概要と工事や設備の説明を受けます。
首都高速道路では、3号渋谷線(大橋JCT)・4号新宿線(西新宿JCT)・5号池袋線(熊野町JCT)の延長約11kmを一直線に結ぶ、中央環状新宿線(山手トンネル)と呼ばれる道路の工事を進めています。約11kmすべてが、山手通りに沿った地下約30mの、片側2車線のトンネルとなっています。
山手トンネルのうち、4号新宿線(西新宿JCT)と5号池袋線(熊野町JCT)とを結ぶ約7kmは、開通して今年で1周年となりました。現在は、2010年度(平成21年度)の開通を目指して、3号渋谷線(大橋JCT)と4号新宿線(西新宿JCT)とを結ぶ約4kmの工事が進められています。
トンネルを走る車から排出される排気ガスや、万が一に発生した火災などの煙を排出するため、山手トンネルには神山町換気所を含めて9カ所の換気所が設置されています。
地上に設置された四角い「給気塔」から入った空気は道路の下の送空ダクトを通り、道路へと送られます。排気ガスを含んだ空気は道路の上から排気され、道路の下の送空ダクトを通り、換気所へと集められます。集められた排気ガスは、環境基準を充分に満たした空気に浄化された後、「排気塔」から上空へ吹き上げられて拡散されることになります。
トンネルの排気の流れに沿って見て行くことにします。
トンネルの中の排気ガスは、巨大な送風機である「換気ファン」により、送空ダクトを通して集められます。
火災が発生した際の排煙を集めるためにも使われます。換気ファンには振動対策が施されています。
換気ファンから発生する大きな音を軽減するため、「消音装置」が設置されています。筒状の装置を通ることにより騒音は規制基準値以下に低減、静かな公園および図書館の室内程度になります。
反対側から拡声器を使って叫ばれた声は、消音装置を通るとささやくような声になります。
集められた排気ガスは、「SPM除去装置・低濃度脱硝装置」を通ることで、無害に近い空気へと生まれ変わります。排気ガスに含まれる浮遊粒子状物質(SPM)は一日平均で80%以上、二酸化窒素(NO2)は一日平均で90%以上と、大幅に除去され、大気汚染を防止します。
低濃度脱硝装置には「吸収式」と「吸着式」があります。山手トンネルの要町・上落合・中落合・東中野の4箇所の換気所では吸収式を採用、本町・西新宿・代々木・神山町・大橋の5箇所の換気所では吸着式が採用されています。吸収式と吸着式に大きな性能の差はありません。
きれいになった空気は、排気塔の真下へ送られます。
高さ45mの排気塔を使って吹き上げられた空気は、毎秒約10m(時速約36km)の速さで約100mの高さまで上り、拡散されます。
排気塔から排出された二酸化窒素は環境基準と比べて数百分の一以下となり、地表付近への影響は非常に小さくなります。
換気塔の真下から見上げると、換気塔が六角形であることを確認することができます。
トンネルに設置される、様々な防火設備が並びます。火災が発生した際、ドライバーが利用する設備として、「消火器・泡消火栓」「押ボタン式通報装置」「非常電話」「非常口」などがあります。
デモンストレーションとして、消火器・泡消火栓などを手に取り、火災をシミュレーションします。力がない人でも、楽に操作をすることができるようになっています。
換気ファンなど様々な大型の設備を搬入するために、施設の通路は広い幅が取られていました。
階段を下り、道路となるトンネルへと向かいます。
トンネルは、筒状のシールド機という機械で掘られました。トンネルの上半分は道路に、すでに見えていない下半分は外からの空気や中からの排気ガスが通る送空ダクトなどが通ります。
「セグメント」と呼ばれるトンネルの壁面は3種類のマテリアルで構成されていて、色により違いを確認することができます。
黒色の金属は「DCセグメント(鋳鉄 ちゅうてつ)」、白色の金属は「STセグメント(鉄)」、白色のコンクリートは「RCセグメント(鉄筋コンクリート)」。通常はRCセグメントで構築され、トンネルに負荷がかかる部分にはDCセグメントが、後に壁面に穴を開ける部分にはSTセグメントが使われます。
3号渋谷線(大橋JCT)方面となります。
先へ進むと、大橋JCTに接続します。
4号新宿線(西新宿JCT)方面となります。
先へ進むと、西新宿JCTに接続します。
トンネルから避難する流れで歩きます。まだ工事が進む、待避所がありました。
地上部へ避難するため、通路を抜けます。
今回は特別に、非常口からの避難を体験することができました。地上部につながる非常口への階段を上がります。
地上部非常口扉手動開放装置を押すことにより、非常口が開かれます。
非常口は、重りによりハッチを制御する構造となっています。
非常口が開かれました。工事が進む今の段階においても、開かれることは滅多にありません。
地上部に出ることができました。山手通りの中央分離帯となります。
非常口を閉めるためには、ハンドルを回し続ける必要があるようです。
ここにて「首都高講座 6限目:開通1周年企画!国内最先端の神山町換気所を学ぼう」は終了となります。
中央環状新宿線の開通により、渋滞緩和、経済力強化、防災力強化、環境改善など、さまざまな効果が見込まれています。