環状七号線地下調節池は、環状七号線の地下で東京都が整備を進めている調節池です。2007年5月19日、環状七号線地下調節池 善福寺川取水施設 完成を祝う会が催されました。
水害が多発する神田川、善福寺川、妙正寺川の安全度を早期に向上させるため、環状七号線の地下約40mに、延長4.5km、内径12.5mのトンネル式地下調節池を建設しています。台風などの大雨で一定以上の水位になった河川の水を環状七号線地下調節池に流し込み、水位が下がった頃、再び河川に戻す役割を持ちます。約54万㎥の洪水を貯留できる施設になります。
資料:東京都第三建設事務所
この調節池は施設の規模が大きく、全体の完成には相当の時間を必要とすることから、早期に事業効果を発揮させるため第一期と第二期に事業を分割して整備しました。
第一期事業
約24万㎥の洪水を貯留する「延長2.0kmのトンネル」と神田川から洪水を流入させるための「神田川取水施設」を建設しました。工事は1988年に着手し、1998年度管理棟等の完成により事業が完了、施設の完成に先立つ1997年4月から取水を開始しました。
資料:東京都第三建設事務所
第二期事業
第一期トンネルと接続する、約30万㎥の洪水を貯留可能な「延長2.5kmのトンネル」と善福寺川の「善福寺川取水施設」および妙正寺川の「妙正寺川取水施設」を建設しました。工事は1995年に着手、善福寺川取水施設は2005年9月より取水を開始し、今回、管理棟や電気・設備等を含め取水施設のすべてが完成しました。また、妙正寺川取水施設については、2007年3月から土木施設の完成により取水を開始し、2008年3月には電気・設備等を含め、取水施設を完成させる予定になっています。
式典は杉並区堀ノ内二丁目の、善福寺川と環状七号線が交わる場所につくられた善福寺川取水施設で行われます。
テープカット、調節池のゲート操作、地元の小学生の代表を交えての、くす玉開きと進みます。
ゲート操作の状況が、会場の左右に設置されたモニタに表示されました。
式典の会場には、善福寺川取水施設の模型を展示しています。実際に水を流すことができ、洪水の流れをわかりやすく理解できます。
トンネルは円筒状の泥水式シールド機で構築しました。カッターヘッドと呼ばれる巨大なカッターで掘削し、同時にセグメントと呼ばれるピースを組み合わせて壁を構築します。
式典の終了後、善福寺川取水施設を見学します。
資料:東京都第三建設事務所
施設は管理棟、ゲート棟、円形の機械棟の3つの建物で構成されていて、公園等が備わっています。公園等を含む敷地面積は約9,700㎡です。
取水施設の地下には、護岸沿いの越流堰、地下に水を落とす流入孔、トンネルへ導水する連絡管渠、貯留した水を川へ排水するポンプ設備や換気設備等が備わっています。取水の立坑は本体外径27.6m、深さ地上より約57m、流入孔径は内径7.0mです。
平常時、53.0mの越流堰により、善福寺川の水は取水施設へ流入できないようになっています。
大雨の警戒態勢時は導水路の取水ゲートを閉じ、越流堰を下げて、導水路に水を溜めます。次の段階では導水路の管理ゲートを下げて、調節池に取水します。
機械棟の乗用エレベーターを使って地上から43mまで降り、立坑機械室へ移動します。
立坑機械室と、水が流れ落ちる立坑流入部との間には、2重の厚い鉄の扉が備わっています。
河川の水は、導水路、沈砂池を通り、流入孔を流れて地下57mの減勢池まで落下します。流入孔を洪水がそのまま流れると勢いで壁面や底が損傷してしまうため、渦を巻くことで勢いが減るドロップシャフトと呼ばれる方法を採用しています。
流入孔と呼ばれる大きな穴から流れ落ちた水は、減勢池で勢いを減らします。
水は減勢池から内径6mの連絡管渠へ流れます。建設されてから数年が経っているため、修理すべき箇所を白色でマーキングしています。
連絡管渠の中間には、子どもたちによる河川にまつわるイラストが入ったセグメントを配置しています。
連絡管渠と環七地下調整池との接続部分に着きました。
連絡管渠を通った水は、調整池に貯められます。
1993年の台風11号では3,117戸もの浸水家屋の被害が発生しましたが、激特事業による護岸整備と環状七号線地下調節池の洪水貯留効果により、2004年の台風22号においては台風11号と同じ規模でありながら浸水家屋は46戸に抑えられています。