三河島水再生センターは、主に東京都の荒川区と台東区の汚水を再生させる、東京都下水道局の下水処理施設。
東京都下水道局が主催する「下水道施設見学ツアー」の一部として、三河島水再生センターにおける汚水の処理の流れを見学しました。
普段、目に触れる機会の少ない下水道施設や下水道工事の現場を見学ために、東京都下水道局が初めて開催したバスでの下水道施設見学ツアー。100名の定員に対して7倍の応募がありました。
下水道は、下水道管・ポンプ所・水再生センターの、3つの重要な施設で成り立っています。そのうちのひとつである下ンプ所を見学するため、4班に分かれたうちの1班は、「三河島水再生センター」「勝島ポンプ所 工事」「勝島ポンプ所流入管渠(りゅうにゅうかんきょ)」とまわります。
三河島水再生センターは、1922年(大正11年)3月に「三河島汚水処分場」として運転を開始した、日本で最初の近代的な下水処理施設です。敷地には「高度処理施設」と、2007年に重要文化財(構造物)に指定された「旧三河島汚水処分場喞筒場(ポンプじょう)施設」、新旧の施設があります。
レンガ造りの門からは歴史の重みを感じることができます。
事務棟にて、下水道のしくみと役割、三河島水再生センターの特色を聞きます。
荒川区・台東区の全部、文京区・豊島区の大部分、千代田区・新宿区・北区の一部から流れてきた汚水は、三河島水再生センターできれいにされた後、隅田川へ流されます。面積は3,936ヘクタールあります。
敷地を、歩いて進んでみます。まずは、1922年(大正11年)から1999年までの77年間ほど使われた、主に三河島汚水処分場と呼ばれていた頃の施設を、下水の流れに沿ってたどります。
「日本の下水処理発祥の地」と記された石碑があります。1992年に、開設満70周年を記念して建てられた碑です。
パネルや写真が掲示されていて、歩いている地下の様子がわかるようになっています。大正の頃から使われている半円形の「導水渠」が地下にあり、下水は処分場に入ると、途中で2つに分かれます。
2つに分かれて流れてきた下水は、それぞれ東西の2カ所にある、「阻水扉室(そすいひしつ)」を通ります。片方の阻水扉室にて下水の流れを阻止することで、保守点検が可能になっています。
下水は、地下にある沈砂池(ちんさち)という池をゆっくりと流れることで、土砂や大きなゴミを取り除かれます。沈砂池は長さ19.7m、幅5.45m、有効水深1.21m。地上には土砂を吸い上げる揚砂機室(ようさきしつ)と、「ろ格機室(ろかくきしつ)」が設置されています。
ろ格機室には、ろ格機が設置され、浮いている大きなゴミが取り除かれます。
ろ格機室では、85年以上前に布設されたとされる錆鉄管の一部が展示されています。2007年の漏水修理の際に発掘された、都の紋章と大正10年という刻印が入った管で、現在も再生水管として使われているとのことです。
2つに分かれて沈砂室を通った下水は馬蹄形レンガ敷きの下水管を通って、再びひとつになって流れます。下水管は、幅288cm・高さ183cm。
下水は「旧主ポンプ室」へと流れていました。水は低いところへと流れるため、下水管も地下へ地下へと深くなってきます。深くなりすぎないように、途中で下水をくみ上げる施設がポンプ室です。赤レンガの建物は、当時オーストリア・ウイーンで流行していたセセッションという芸術様式で、左右対称の構造となっています。桁行68.3m・梁間15.5mあります。
旧主ポンプ室には10台の汚水ポンプが設置され、下水の水位が上げられていました。
天井には、資材を移送するための「揚重機(ようじゅうき)」が設置されています。プレートには「株式会社/東京石川島造船所/大正9年製造」「六噸半(6トン半)」と記されています。
このポンプ室は、1999年まで使われたとのことです。近代下水処理場喞筒場施設の構造を知る上で貴重であると評価され、2007年12月に国の重要文化財(構造物)に指定されました。
1914年(大正3年)から1985年(昭和60年)まで使用されていた、レンガ造りの下水管。地下鉄浅草駅の改良工事の際に取り出されました。幅60.6cm・高さ90.9cmあります。
昭和9年頃、ろ過で使われた、回転させて空気を取り入れるためのパドル。パドル式活性汚泥法と呼ばれていました。
次に、1999年から使われている高度処理施設を、汚水の流れに沿ってたどります。上部は荒川自然公園として利用されています。
集められた下水は、1日に約40万トンが処理されています。きれいになった約40万トンの水のうち、約25万トンは隅田川へ放流され、残りの約15万トンは「東尾久浄化センター」で再処理、同じく隅田川に流されています。汚泥は「砂町水再生センター」へ送られます。
沈砂池を流れて土砂や大きなゴミが取り除かれた下水は、「第一沈殿池」で、2時間から3時間かけて下水をゆっくり流し、下水に含まれる沈みやすい汚れを沈殿させます。
ここでの下水は「生下水(なまげすい)」と呼ばれ、強い臭いを発します。
「反応槽」へ流されます。微生物の入った泥(活性汚泥)を加え、空気を送り込み、へ流され、6時間から8時間かけてかき混ぜます。下水の汚れを微生物が分解、細かい汚れは微生物に付着して、沈みやすいかたまりになります。
誤って落ちてしまうと自力では二度とはい上がることはできないとのことです。
「第二沈殿池」では、反応槽でできた泥(活性汚泥)のかたまりを3時間から4時間かけて沈殿させ、上澄み(処理水)と汚泥とに分離します。
この後、塩素接触槽にて処理水を塩素消毒して、大腸菌などを殺菌してから、隅田川へと放流します。
下水は、15時間かけて、9割の汚れを落とした後、隅田川へ放されることになります。
「水道施設見学ツアー 三河島水再生センター」はここで終了となります。普段、何気なく流している下水について、あらためて考えるよい機会となりました。
下水の処理量は時間によってものすごく変動が激しく、ここ最近ではワールドカップがCMに入った瞬間、皆がいっせいにトイレを使うため使用量が一瞬にして1.5倍くらいになったとのことです。
三河島水再生センターは、重要文化財としてひろく一般に広められるべく、毎年春には「桜と施設見学会」、11月には「東京文化財ウイーク」が行われ、一般公開されます。
公式:東京都下水道局