和田ポンプ施設は、神田川および善福寺川における、中野区本町から杉並区堀ノ内付近の浸水被害を軽減するために整備された施設です。
2011年6月4日、「和田ポンプ施設見学会」が行われました。
東京都下水道局では、雨期となる毎年6月を「浸水対策強化月間」と定めて、浸水に対する準備と下水道の役割についてPRするイベントを各所でおこなっています。東京都杉並区の和田ポンプ施設では、見学会が開催されました。
街が発展して、地面が土からアスファルトへと変わると、雨として降った多量の雨水は、地面へと染み込むことができず大挙して下水道へと流れ、河川(神田川)に放流されます。
ところが、和田弥生幹線のある地域一帯は比較的地盤が低く、豪雨の際に神田川の水位が上昇すると、地域に降った雨を河川に放流することが難しくなります。その結果、河川に放流できなくなった雨水は行き場をなくして街にあふれ、浸水被害を及ぼしてきました。
そこで、豪雨にて一定の量を超えた雨水は、下水道を経由して地下深くにつくられた巨大な貯留管に貯められ、晴れた日に汲み上げられて下水道へと戻されて、落合水再生センターにて処理し河川に放流する仕組みが造られました。この一連の役割を担うのがポンプ施設です。
過去、神田川や善福寺川の周辺の地域では、浸水戸数1,000戸を超えるような大きな浸水に見舞われていました。地下に下水道の巨大な貯留管「和田弥生幹線(わだやよいかんせん)」と2ヵ所のポンプ施設「和田ポンプ施設」「弥生ポンプ施設」、全長4.7kmにもなる6本の集中管と39箇所の分水人孔が設けられることにより、周辺の浸水被害は大きく軽減することとなります。
和田ポンプ施設より少し離れた環状七号線の地下には、河川の貯留施設「環状七号線地下調節池(かんじょうななごうせんちかちょうせついけ)」により、周辺地域の浸水被害を軽減しています。
和田弥生幹線:低地に溜まる雨水を貯めて浸水を防止
環状七号線地下調節池:河川があふれる前に水を貯めて浸水を防止
和田弥生幹線と環状七号線地下調節池はアプローチが異なり、接続していません。
2007年3月に完成した和田ポンプ施設は、神田川と善福寺川の合流個所の付近に設けられています。見学会が開催され、この日は自由に施設を見ることができます。
施設に入ると、パネルや映像などで、概要を知ることができます。
和田弥生幹線分水システム模型が展示され、実際の水を使って施設の説明を受けることができます。
下水に流入した雨水の一部は、各所にある分水人孔から張り巡らされた集中管を経由して集められ、ドロップシャフトを使い地下約50mにある集水人孔まで流れ落ちて、連絡管を通り、貯留管となる和田弥生幹線へと流されます。水が落下するエネルギーによる騒音を防ぐため、また、威力で施設が壊れることがないよう、回転させながら水を下まで落とし込む「ドロップシャフト」という方式が採用されています。
10時30分から14時までの間に8回、東京都下水道局の方の案内により、和田弥生幹線がある地下14階まで入坑することができます。参加者は、用意された長靴に履き替えます。
ドロップシャフトがある地下6階までは自由に入坑することができます。
地下14階まで、階段が続きます。
まずは地下1階へと下りていきます。
神田川幹線へと流れる主配水管です。
主配水ポンプが設置されています。
さらに階段を下りていきます。
ドロップシャフトへの流入管となる、雨水が集められる6本の集中管のうち、2本が和田ポンプ施設に接続されています。上が内径2.4mの南台幹線、下は内径2mの南台西幹線となります。
集中管から流れてきた雨水は、地下6階にあるドロップシャフトの中をらせん状に回転しながら、地下約50mの流出口まで流されます。ドロップシャフトは内径2.5m、高さ27m。日本最大級となります。
中央の穴からは空気が抜けます。ペットボトルに水を入れて回転させ、口を下に向けると、水が早く静かに出る仕組みを応用しています。
ドロップシャフトから見上げると、地上の位置を確認することができます。
反対側から見下ろすと、最深となる地下14階を確認することができます。
再び階段を下りていきます。ドロップシャフトを横から見ることができます。
側面にはドロップシャフトと書かれています。
ドロップシャフトの流出口のある集水人孔が近づいてきます。壁によって2つの部屋に分けられ、片方はドロップシャフトからの流出口があり、もう片方は汲み上げるためのポンプが備わっています。
ポンプが備わっている部屋には水が溜まっています。汲み上げられた雨水は、落合水再生センターへと送られ、きれいになった後に神田川へ流されます。
階段を地下13階まで下りました。
壁に設置された扉をくぐると、ドロップシャフトの流出口がある集水人孔となります。
階段を地下14階まで下りました。地上を見上げます。
振り返ります。下りてきた階段と、ドロップシャフトの流出口を見ることができます。
ドロップシャフトの流出口の中に入って、水が流れ落ちてくる先の上を見てみます。
大量の雨水が、らせん状に流れ落ちる構造になっています。
ドロップシャフトから集水人孔まで流れ落ちた雨水は、ドロップシャフトへの流出管となる、連絡管を流れます。
連絡管の先には和田弥生幹線があります。
懐中電灯を頼りに内径3.5m、長さ約150mの連絡管を進みます。
連絡管と和田弥生幹線との連結部分に着きました。
貯留管である和田弥生幹線です。本郷通りに沿って延び、暗がりの先には弥生ポンプ施設があります。
内径8.5m、長さ約2.2km。小学校のプール400杯分ほどの約12万㎥を貯めることができます。
和田弥生幹線の約12万㎥と、各集水管に貯めることができる約3万㎥と合わせて、貯留量は最大で約15万㎥となります。約573ヘクタールもの地域の雨水を集めることができる計算です。
普段はまったく明かりのない空間で、反対側も真っ暗です。
来た連絡管を戻ります。
集水人孔が見えてきました。1階まで階段を上ります。
施設では、映像資料も見ることができます。豪雨で雨水が流れ込んでいる連絡管と和田弥生幹線との連結部分です。
1993年の台風11号では1,135棟もあった浸水被害ですが、和田弥生幹線の貯留を開始して以来、浸水被害が激減しています。最近では2009年の台風18号において、平成5年の台風11号とほぼ同規模の降雨があったにもかかわらず、浸水被害はほとんど発生しませんでした。
「和田ポンプ施設見学会」はここまでとなります。
今回の見学においては、124名の方が訪れました。また、別の日には社会科見学として、二日にわたり約80名の小学生(4年生)が見学したとのことです。
浸水対策や水質改善となる下水道管が、今後も整備されていくことを願います。
お忙し中、案内をしてくださいました東京都下水道局の方々へ、厚く御礼を申し上げます。
公式:東京都下水道局