首都高講座は、首都高速道路における工事の現場や施設、車両などを見学できるイベントです。
2012年11月30日、41限目の「横浜環状北線の建設状況を学ぼう2」が行われました。
「首都高講座 41限目:横浜環状北線の建設状況を学ぼう2」では、横浜環状北線の建設現場でトンネル建設について学びます。
横浜環状北線の新横浜たて坑の建設現場へ集合、14時より開始となります。抽選に応募して当選した18歳以上の約20名が参加しました。
見学の参加者には、資料・ヘルメット・軍手・防塵マスク・レシーバーが用意されています。まずは、工事における概要の説明を受けます。
首都高速道路の横浜環状北線は、横羽線の生麦JCT(なまむぎジャンクション)と第三京浜道路の横浜港北JCT(よこはまこうほくジャンクション)を結ぶ、約8.2kmの自動車専用道路です。
横浜市の交通ネットワークの骨格を形成する横浜環状道路の北側に位置することから「きたせん」とも呼ばれています。
2017年3月に「[K7]高速神奈川7号 横浜北線」という名称で開通します。
横浜北線の延長線上には、東名高速道路と接続する横浜環状北西線も予定されています。
横浜環状北線のトンネルを掘るために、「シールド機」と呼ばれる巨大な円筒形の掘削機が使われます。延長約8.2kmの約7割がシールド機によるトンネル構造です。
シールド機は、最大級といわれる外径12.49m、長さ11.5m、重さ1,500トン。高さは3階建てのビルと同じくらい、重量はジャンボジェット機の約7.5倍ほどもあります。
シールド機を使うことにより、地上を掘り起こす必要がなくなります。家屋の移転は少なくなり、周辺環境を保全することができます。
先端のカッターディスクで前面の土砂を掘削すると同時に、トンネルの壁面となるセグメントというパーツをリングにして組み立てながら、組み上がったセグメントを足がかりにしてジャッキの力で前へと進みます。
トンネルは、新横浜たて坑から子安台換気所までの約5.5kmを、「ナッピー号」「コッピー号」と名づけられた2機のシールド機が同時に、止まることなく掘削していきます。ナッピー号は外回り(生麦行き)のトンネル、コッピー号は内回り(港北行き)のトンネルをつくります。愛称は一般公募により選ばれました。
建設現場には、2,500分の1となる巨大な航空写真が掲示されていて、ナッピー号とコッピー号の位置がわかります。
建設ヤードへと移動します。トンネルを施工するために必要な様々な資材や機材をストック、搬入および搬出する施設です。
建設ヤードにはシールド機が発進していった、たて坑と呼ばれる縦穴があります。シールド機は神戸の工場でつくられ、運ぶために分解されて、2日間かけて搬入されたたて坑で組み立てられました。今はトンネルを掘り進めています。
深さ約30mとなる、たて坑を見下ろします。
トンネルの壁となるセグメントが、次々に運ばれていきます。
セグメントはたて坑の下まで下ろされて、トンネルを掘り進めるシールマシンまで運ばれます。
トンネルの壁となるセグメントが積まれています。9個のセグメントを円筒に組み立ててリングを1つつくると、約2mのトンネルができます。1枚当たりの重さは約9トン、全部で5,000リングを製作する予定となっています。
「SFRCセグメント」と呼ばれ、通常のセグメントと比較して、鋼繊維(Steel Fiber)を混ぜることにより耐久性が向上、ポリプロピレン繊維(PP)を混ぜることで耐火性が向上するなど、様々なメリットがあります。
「床版」が準備されています。掘られたトンネルを上下に仕切り、道路の床となる部材です。上はコンクリートで舗装されて道路となり、下は避難通路となります。
「風管」が準備されています。シールド機が掘り進めるトンネルの先端まで、地上の新鮮な空気を送り込む資材です。
建設ヤードを出て、階段で地下へと移動します。
ナッピー号が掘り進めている、外回り(生麦行き)のトンネルへと向かいます。
先ほど上から見た、建設ヤードのたて坑に着きました。新横浜たて坑の地下約30m、シールド機が発進していった箇所となります。2010年7月23日に行われた「首都高速道路 メルマガ講座 横浜環状北線(きたせん) 新横浜たて坑」では、ほぼ同じ箇所で、組み立て途中のシールド機を見ることができました。
シールド機が掘り進んだトンネルは「シールドトンネル」と呼ばれ、断面は円形になっています。路面となる床板が敷かれていて、舗装されると道路が完成します。上部に設置されている風管では、トンネルの先端へ向かって絶えず新鮮な空気が送り込まれています。
内装工のモデル区間として、配管用開口部や集水桝開口部など、トンネルに設置される設備の一部が先行してつくられています。
壁のところどころには、地上部分での位置の表記がされています。約4m上には、横浜市営地下鉄あざみ野行きが通っています。
床板で区切られた下の部分には、避難通路として整備されます。トンネルで火災が発生した際などは、設置されたスロープで道路の下へ避難することになります。
作業車への注意として、急勾配速度注意と書かれています。
「新横浜換気所」となる場所に着きました。換気所とは、トンネルを走る車の排気ガスをきれいにして上空へ送り、外の空気をトンネルへ送るための施設です。
換気所や分合流部となる一部の箇所では、コンクリート製のセグメントではなく、鋼製セグメントが使われます。シールド機でつくったトンネルの一部を取り外す必要があるためです。
たて坑からのリングの数を示す「数字+R」という表記がされています。140R=140リング、1リングは約2mなので、新横浜換気所は新横浜たて坑から約280mの地点ということになります。
新横浜換気所は、シールドトンネルの外側を掘って、施設をつくっていきます。
昇降口から、床板の下へと移動します。
避難通路となる予定の、床板の下となります。セグメントを運ぶ台車のためのレールが敷かれています。
床板の上で見た、内装工のモデル区間での、配管用開口部の真下にあたる配管用箱抜き部があります。
新横浜換気所となる箇所では、シールドトンネルの下部が完全に撤去され、建物の基礎となる工事が進められています。
円形のシールドトンネルの一部が切り取られて、断面を見ることができます。
先は、生麦JCT方面となります。ここにて折り返します。
建設ヤードで見た床板があることを確認することができます。
床板は少しだけ上側に反っていて、上からの加重がかかっても損傷がないように計算されています。
床板の上に戻り、生麦JCT方面へと進みます。
作業する方々が使用する自転車が駐輪されています。
自転車の使用について、いくつかのルールが決められています。
資材を運搬する作業車が停まっていました。積載重量40トン、自身重量18トン、長さ13.7mとなっています。
前後に運転席が設けてあり、ターンすることなく前後に移動することができます。
新横浜たて坑から300リング目、約600mの地点となります。
掘った穴とセグメントの間には10cmほどの隙間があり、セグメントに開けられた穴から裏込を注入して埋めています。
先は、生麦JCT方面となります。
ここにて折り返します。
新横浜換気所まで戻り、シールドトンネルを外側から、上へと移動します。
切り取られたシールドトンネルの断面を見ることができます。
約15mほど上がり、新横浜換気所を移動します。
シールドトンネルを上部から見ることができます。
外側から見た外回りのシールドトンネルの、生麦JCT方面となります。
外側から見た外回りのシールドトンネルの、港北JCT方面となります。
階段を上り、地上へと移動します。
新横浜換気所の地上へと出てきました。
シールドトンネルの端部の位置として、断面のパネルが掲示してあります。
新横浜換気所の外へ出て、新横浜たて坑の建設現場へと戻ります。
シールド機を遠隔で操作や調整する中央制御室となります。現場は無人ではなく、エレクターを操作する人、後方から運んできた材料を前に送り出す人など、常時10数名のクルーが中に入っています。
シールド機の先端では、約500個のカッタービットと呼ばれる歯で構成された「カッター」を回転させて土を掘りると同時に、「エレクター」によってセグメントが組み立てられ、トンネルの壁をつくっていきます。
出された土は「スクリューコンベア」で地上を通り鶴見川の対岸まで送られ、土砂搬出構台でダンプトラックに積み替え大黒中継所まで高速経由で運搬し、横浜市港湾局の南本牧埠頭の埋め立てで再利用されます。一日あたり500台〜600台のトラックで運ばれます。
シールド機のナッピー号とコッピー号はそれぞれ、1ヵ月間で約240m進み、約2年間で新横浜たて坑から子安台換気所まで到着する予定となっています。
ここにて「首都高講座 41限目:横浜環状北線の建設状況を学ぼう2」は終了となります。
横浜環状北線の開通により、新横浜と羽田空港との移動は10分短縮の約30分、新横浜と鶴見との移動は15分短縮の約15分となります。広域的な交通利便性が向上、新横浜都心・京浜臨海部などの活性化、生活環境の改善など、さまざまな効果が見込まれています。