西武新宿線他2路線(東村山駅付近)連続立体交差事業 工事現場見学ツアー

西武鉄道

 西武鉄道の東村山駅において、駅と線路を高架化することで地上の踏切を除去する「新宿線東村山駅付近連続立体交差事業」が進んでいます。一般を対象にした「西武新宿線他2路線(東村山駅付近)連続立体交差事業 工事現場見学ツアー」を取材しました。

 見学ツアーは東京都道路整備保全公社主催、東京都・西武鉄道の協力で2025年2月21日に催されました。参加者は東村山駅に隣接する連続立体交差化事務所に集合します。

photo高架化が進む西武鉄道東村山駅駅舎の西側。写真の左側が所沢方

 事務所で公社職員による挨拶と東村山駅付近における連続立体交差事業についての概要説明が行われました。東村山駅付近での一般を迎えての見学ツアーは今回が初めてとなり、約10倍もの倍率で当選した14名が参加しました。

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 連続立体交差事業は東京都が事業主体となり、地元区市・鉄道事業者が相互に連携して、道路と鉄道を連続的に立体交差化する事業です。連続立体交差事業は鉄道事業者主体による事業と思われがちですが、踏切除却による交通渋滞の解消などを目的とした「道路整備」の一環として施行する都市計画事業として、地方公共団体(※)が事業主体となって実施します。
※都道府県または政令指定都市・特別区・人口20万人以上の都市

 東村山駅付近における連続立体交差事業では、西武鉄道新宿線、国分寺線および西武園線の東村山駅付近の約4.5kmについて鉄道を高架化し、交通量の多い府中街道など5か所の踏切の除却および2本の都市計画道路と立体交差します。また、地域の一体化や都市計画道路などの整備を併せて推進します。2012年10月に都市計画決定、2013年12月に都市計画事業認可、2015年1月に工事着手しました。工事は駅部から着手し現在は高架橋構築工事を進めていて、完成した箇所から高架へ切り換え、2030年度に事業完了の予定です。

 事業延長約4.5kmのうち、新宿線約2.3km、国分寺線約0.8km、西武園約1.4kmとなっています。立体交差化により解消される踏切道は、久米川第2号(府中街道)、久米川第3号(鷹の道)、東村山第1号(多踏切)、東村山第2号、(園)東村山第3号です。交差する都市計画道路は東村山 3・3・8号、東村山 3・4・10号になります。

photo工事区間の施工者区分 出所:西武鉄道

 工事は以下の4工区で進めています。工区名、企業体名、区間・延長は以下の通りです。
  第1工区(新宿線:久米川~東村山間、国分寺線:東村山~小川間)876m
   大林・東急・熊谷建設工事共同企業体
  第2工区(東村山駅部)355m
   西武・清水・京王建設工事共同企業体
  第3工区(東村山駅部)287m
   鹿島・五洋・京急建設工事共同企業体
  第4工区(新宿線:東村山~所沢間、西武園線:東村山~西武園間)
   前田・鴻池・竹中土木建設工事共同企業体

 連続立体交差事業が完成すると沿線地域の慢性的な交通渋滞が解消されます。また、踏切での事故がなくなり、道路と鉄道それぞれの安全性が向上します。さらに、鉄道により隔てられていた沿線地域の一体化により安全で快適なまちづくりが推進され、駅へのアクセスの向上や周辺地域の防災性の改善が図れます。

 現場へ移動します。現況の東村山駅上部で新しいホームの工事が進んでいます。

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 参加者は東村山駅東側の工事用階段を上ります。

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 高架上へ移動しました。大型クレーンで資材を地上から高架上へ運び、ホーム上家の構築を進めています。

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 構築中の東村山駅ホーム東側、先は所沢方です。新宿線上りが通ります。

photo新宿線上りが通る区間。まだレールが敷かれていない

 東村山駅ホームを背にして第1工区(久米川ー東村山駅中間部)、新宿方の東側を見ます。レールを敷く位置にガイドを配置しています。

photo新宿方、新宿線上りのレールが敷かれる区間

 新宿方、東村山駅の西側です。新宿線下りと国分寺線のレール敷設が完了しています。

photo左側が国分寺線、右側は新宿線下り。新宿線の先は高架が続く

 国分寺線のレールです。先は、新宿線と国分寺線の交差部になります。

photo国分寺線。新宿線の先は高架が続く

 新宿線と国分寺線の交差部は、新宿線の上下線を東側に、国分寺線を西側の仮線に移設し鉄道高架橋を構築します。高架橋完成後、鉄道施設工事を進め、新宿線下り、国分寺線・西武園線の順に高架上へ切り換えます。東側に高架橋を構築し新宿線上りを高架上に切り換えます。仮線用地に側道を整備して工事は完成します。

photo交差部の施工順序 出所:東京都

 新宿線上りの高架先端から新宿方を見ます。新宿線と国分寺線が交差する付近の高架橋構築状況、地上には現況の新宿線を確認できます。

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 新宿線下りの高架では、架線柱に架線を設置する工事が行われています。

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 架線工事用軌陸車で作業を進めています。

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 振り返り、東村山駅ホームがある所沢方を見ます。地上には久米川第3号(鷹の道)踏切があります。

photo国分寺線から見た所沢方。現在は久米川第3号(鷹の道)踏切の手前まで新宿線上りの高架が来ている

 壁面には防音パネルが備わっています。レールは運行時に磨かれてきれいになります。

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 軌道、電力、信号通信の工事を進めています。

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 東村山駅ホームへ進み、第2工区(東村山駅部)を見ます。

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 駅部は最初に駅施設の仮設化を行い、仮設地下道に切り換えました。今後は既存の駅舎を撤去し高架橋を構築します。工事の進捗に合わせて新宿線下り、国分寺線と西武園線、新宿線上りの順で高架上に切り換えます。仮設地下道を撤去した後、地中梁を設置して工事は完成します。

photo東村山駅部の施工順序 出所:東京都

 高架ホームから見た新宿方です。

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 ホームでは、ホームドアや待合室の設置が進んでいます。

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 東村山駅ホームから所沢方を見ます。ホームと上家はほぼ完成しています。

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 2024年度は高架橋構築工事、ホーム・上家工事、コンコース構築工事を進めました。一般部でも高架橋構築工事を進め、軌道、電力、信号通信の工事を行っています。2025年度に、新宿線下りを高架上へ移動する予定です。

 西武鉄道は「鉄道における工事の特殊性として、駅部については鉄道が運行していない夜間のおおむね2〜3時間で作業を完了しなければならず、また、中間部については工事に必要な土地を沿線の皆様から譲っていただく交渉などにも時間がかかるため、工期がどうしても長くなってしまう。これまで10年かかっているが、これからも周辺への影響を最小限に抑えて短工期化の取り組み、安全を守りながら工事を進めていく」とのことです。

公式:新宿線東村山駅付近連続立体交差事業 :西武鉄道Webサイト