首都高講座は、首都高速道路における工事現場や施設、車両などを見学できるイベントです。2013年12月3日、第47回目となる「品川線の建設状況を学ぼう!」が開催されました。今回は中央環状品川線の建設について学びます。
首都高速道路株式会社は、都心から放射状に延びる高速道路網を環状で結ぶ「3環状」のうち、最も内側を走る「中央環状線」の整備を進めています。2009年度に3号渋谷線と4号新宿線を結ぶ中央環状新宿線の約4.3kmを供用。2014年度中に3号渋谷線と湾岸線を結ぶ中央環状品川線の約9.4kmを建設し、これらの路線を接続することで、延長約18.2kmの日本最長のトンネル「山手トンネル」が完成します。これにより、全長約47kmの中央環状線が全通することになります。
中央環状品川線の位置図 出所:首都高速道路
抽選に応募して当選した20名が参加しました。大井JCT付近にある中央環状品川線の大井現場事務所へ集合、14時より工事における概要の説明を受けます。
中央環状品川線の延長約9.4kのうち、約8.4kmは山手通りもしくは目黒川の地下を通るトンネル、約0.6kmは高架、約0.4kmは擁壁になります。大井JCTと大橋JCTの間には五反田出入口を設置し、大橋JCT方面への入口と大井JCT方面への出口がつくられます。1号羽田線と2号目黒線には接続しません。
中央環状品川線の詳細図 出所:首都高速道路
トンネルはシールド機によるシールド工法で構築しました。先端のカッターディスクで前面の土砂を掘削しながら、組み上がったセグメントを足がかりにしてジャッキの力で前進し、同時にトンネルの壁面となるセグメントをリング状に組み立てながら掘進します。
内回りと外回りの2つのトンネルは、シールド機により大井北たて坑から大橋JCTへ向けてほぼ同時に掘削を始め、2012年3月22日に掘進が完了しました。現在はトンネル内部の施工が進んでいます。
中央環状品川線は、内回りとなる大井行のトンネルを東京都が担当し、外回りとなる大橋行のトンネルと五反田出入口を首都高速道路が担当しています。中央環状品川線が完成して中央環状新宿線とつながると、道路トンネルとしては日本で第1位、世界で第2位の長さになります。
用意されたマイクロバスで大井JCTへ移動します。パネルで、大井JCTの全体を見ます。大井JCTは首都高速道路の高速湾岸線と1号羽田線とを接続するJCTで、ここに中央環状品川線を接続します。
大井JCTのB連絡路を歩きます。完成すると、中央環状品川線から高速湾岸線の横浜方面へ進む道路になります。今後は舗装が行われます。
大井JCTの内側です。連絡路が構築されつつあることがわかります。
高速湾岸線の千葉方面を臨むと、D連絡路が伸びています。完成すると中央環状品川線から高速湾岸線の千葉方面へ進む道路になります。まだ道路は接続していません。
先へ進みます。案内板を設置する箇所になります。
高速湾岸線の横浜方面を臨みます。右下に、すでに供用しているA連絡路を見ることができます。
A連絡路は、高速湾岸線の横浜方面から1号羽田線へと向かうための連絡路です。高速湾岸線の千葉方面と横浜方面が合流して1号羽田線へと進むことのできる箇所でしたが、中央環状品川線への接続に先立ち、高速湾岸線の千葉方面からは高速1号羽田線へ行くことができなくなりました。
高速湾岸線の横浜方面から、これまでの高速1号羽田線へ向かう連絡路に、中央環状品川線へ分岐する連絡路が接続します。
今後は、コンクリートが流し込まれていきます。
乗ってきたマイクロバスまで戻ります。左下には、高速湾岸線の千葉方面および横浜方面から中央環状品川線へと入る坑口を確認できます。
先には、中央環状品川線のトンネルを見ることができます。中央環状品川線から高速湾岸線の千葉方面および横浜方面へと向かう車は、このトンネルから出てくることになります。
マイクロバスに乗り、大井JCTから出て、先ほど上から見た坑口より中央環状品川線の大橋行のトンネルへ入ります。
地上と地下約50mを結ぶ勾配が続きます。
トンネルを構築するための資材を地上から運びおろしたり、掘った土を地上に出すために使われた大井北たて坑に着きました。中央環状品川線のトンネルの空気を入れ替えるための換気所が建てられます。中央環状品川線に設置される換気所は、大井北換気所・南品川換気所・五反田換気所・中目黒換気所の4箇所になります。
中央環状品川線の大橋行のトンネルを通り、大橋JCT方面へと進みます。
マイクロバスを降り、Uターン路を通って、東京都が施工を担当する大井行のトンネルへ移動します。
作業車が隣接のシールドトンネルを使って折り返すためのUターン路です。中央環状品川線では6箇所、設置しています。
隣接するシールドトンネルを行き来するための横連絡坑(よこれんらくこう)は24箇所、設置しています。Uターン路と合わせて、道路が開通すると非常時の避難口になります。
通常の道路において車は左側通行ですが、進行方向の右側に反対車線があります。工事が進む中央環状品川線のトンネル区間では、トンネルのために見た目にわかりませんが、進行方向の左側に反対車線があります。これにより、五反田出入口において左側車線での分岐や合流となり、快適な走行が可能になります。また、事故や火災の際の避難通路を道路と道路の間に集中することができます。
再び、大橋行のトンネルを通り、大橋JCT方面へと進みます。側壁のところどころに空間が確保されています。
火災の際に使われる消火設備が設置される箇所です。
トンネルの上部に四角い穴が開けられている箇所を通過します。トンネルの内部で発生する排気ガスを排出して、きれいな空気を吸入するための換気所が設置されます。
五反田出入口となる区間に到着、マイクロバスを降ります。地中で並行する外回りと内回りのシールドトンネルを連結して、五反田出入口を設置します。
坑口から約4.6kmにある五反田出入口は、中央環状品川線のほぼ中央に位置しています。完成すると、大橋JCT方面から山手通りへの出口および、山手通りから大橋JCT方面への入口となります。大井JCT方面への出入りはできません。トンネルの側壁の一部が撤去される「切開き躯体工」のため、反対側のトンネルの側面を見ることができます。
たて坑内からパイプ(鋼管)を地中に挿入して、ルーフ(屋根)を造る「パイプルーフアーチ工法」を採用しています。非開削工法による施工のため、地上への影響が抑えられます。
工期延期の原因となった出水の発生についての対策として、凍結工法が採用されています。
マイクロバスで大井現場事務所へ戻り、終了となります。
中央環状品川線の開通により、新宿と羽田空港との所要時間が約40分から約20分に短縮されます。渋滞緩和、経済力強化、防災力強化、環境改善など、さまざまな効果が見込まれています。