多摩川スカイブリッジ 報道機関向け内覧会

一般道路

 多摩川スカイブリッジは、羽田空港と川崎臨海部をつなぐ橋梁です。「多摩川スカイブリッジ 報道機関向け内覧会」が開通前の2022年3月9日に行われました。

 これまで羽田空港跡地と呼ばれていた羽田空港周辺は、名称が「羽田グローバルウイングズ(HANEDA GLOBAL WINGS)」に変わり、羽田空港に近い立地を活かしたまちづくりが行われています。また、多摩川で羽田空港の対岸にあたる川崎市殿町は「キングスカイフロント(KING SKYFRONT)」と呼ばれ、空・陸・海すべてのルートが充実している国際戦略拠点になっています。

photo開通区間の広域地図 資料:川崎市

 羽田グローバルウイングズとキングスカイフロントをつなぐための羽田連絡道路に架かる橋梁が、多摩川スカイブリッジです。2つのエリアを結び国際的なピジネス拠点を形成することで、競争力のある事業展開が期待されています。

 東京都、川崎市および国土交通省航空局が事業の施行者になり、川崎市が工事施工者として整備しました。施工は五洋建設・日立造船・不動テトラ・横河ブリッジ・本間組・高田機工(五洋JV)です。事業費は約300億円(橋りょう部:東京都と川崎市で折半負担約260億円・川崎側取付部:川崎市負担約40億円)。2017年秋より工事を開始し、2019年には令和元年東日本台風で河川内に大量の土砂が堆積したため工期が1年延びましたが、2022年3月12日に無事開通となります。名称は公募により決定しました。

 羽田連絡道路の道路延長は約840m、多摩川スカイブリッジの橋梁延長約675m。標準幅員17.3mで、多摩川に架かる橋梁で最も長く、最も下流に位置します。羽田空港と隣接しているため、航空法による高さ制限があります。鋼3径間連続鋼床版箱桁(複合ラーメン)を採用し、川崎側のアプローチ部を鋼2径間連続鈑桁としました。

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 河口に広がる生態系保持空間を保全するため河川内の橋脚は2基とし、最大支間長は240mで、国内で最大の複合ラーメン橋になります。

 川崎側から、多摩川スカイブリッジの橋上を歩いて渡ります。
 河口の水平基調の景観との調和から高欄は横桟(よこざん)形式で、橋上での開放感を体験できるよう考慮されています。

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 川崎側は国道409号と市道殿町39号線、羽田側は環状八号線に、それぞれ接続しています。

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 この日は、完成までの軌跡と従事した関係者の写真などが載った横長のパネルが設置されていました。

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 自転車は自転車道のみ走行可能で、車と同じ方向に進むよう案内されています。原動機付自転車(50cc未満)および自転車を除く軽車両は通行できません。

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 橋の下には生態系保持空間があり、まざまな生物が棲む多摩川河口の干潟を一望できます。高さ1.2mの高欄はよじ登りづらくするため、手すりがつかみにくい幅広の楕円形になっていて、支柱を歩道側に傾斜させています。

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 ポール照明がなく高欄が低いため、開放感があります。桁高を抑えて構造物などの突起物を少なくすることで、鳥類の飛翔を妨げないつくりになっています。

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 生態系への影響を抑えるため、夜間の明かりは光が川面に当たりにくい低位置照明を採用しています。

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 東京湾アクアラインの換気施設である風の塔を、東京湾の沖合に眺めることができます。

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 多摩川の航路がある箇所が橋梁で一番高い位置になり、道路は7%の勾配になっています。

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 歩道には約30m間隔で足元にアクセントタイルと案内板が設置されています。案内板は現在地を示すものから干潟に生息する生物の紹介、有名な場所までの距離、中には多摩川のやや上流にある穴守稲荷神社を意識した初日の出の方向まであり、楽しみながら歩くことができます。

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 先へ進むと環状八号線に接続しています。羽田空港が広がり、手前には東京モノレールが横切ります。

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 工事について振り返ります。

photo開通区間の詳細地図 資料:川崎市

 施工は、P4橋脚の作業構台の設置から開始しました。

 河川の潮流がある中で、長さ47.0m、直径1.2mの鋼管矢板69本を1~2cm単位の精度で打設します。鋼管杭に杭同士をつなぐ継手がついたものを鋼管矢板といい、50mの固い地盤まで打ち込み、つなぎ合わせて橋脚の基礎にします。P3橋脚も同様に進めます。

photo工事に関する詳細図 資料:川崎市・五洋JV

 基礎内部の土砂を深さ約21m掘削します。コンクリートプラント船で鋼管矢板の基礎と橋脚を一体化させる底盤・頂版コンクリートの打設を行い、橋脚柱部を構築します。

photo工事に関する詳細図 資料:川崎市・五洋JV

 約14か月かけてP4橋脚が完成、河川の水を締切っていた鋼管矢板を切断し、橋脚の姿が現れました。

photo工事に関する詳細図 資料:川崎市・五洋JV

 P4橋脚が完成したことを受け、鋼桁架設が始動します。千葉県富津市で組み立てた橋桁(柱頭部)を台船で川崎まで運搬し、橋桁の一部である約100tのブロック3個を固定式起重機船と呼ばれるクレーン船で架設。さらにブロック1個を架設し、P4橋脚上の架設は完了となります。P3橋脚も同様にブロック4個の架設を行った後、P3-P4橋脚間の台船架設を行いました。

 P3-P4橋脚間240mのうち、まずは羽田側の約70mの橋桁を架設します。中間には橋脚が2基しかなく、支間長が長いことから、橋脚と橋脚の間に仮設の橋脚(ベント)を立てて橋桁を支えながら架設しました。

photo工事に関する詳細図 資料:川崎市・五洋JV

 橋桁5か所で、水面の干満差を利用した「台船一括架設工法」を採用しました。約1,000tの橋桁を4,000t級の巨大な台船に載せ、千葉県富津市から約2時間半かけて川崎まで運搬して架設。多摩川の中間部は両側の橋桁を利用した「台船吊上げ架設工法」で架設しました。

 多摩川の護岸付近の橋桁は、水深が浅く台船での一括架設ができません。羽田側は先に架設した橋桁の上にレールを敷いてトラベラクレーン(桁架設用の揚重機械)を設置し、分割した橋桁ブロックを順次張り出す「張り出し架設工法」で進めます。

photo工事に関する詳細図 資料:川崎市・五洋JV

 川崎側は生態系保持空間がありベントを設置できないことから、「送り出し架設工法」で2径間(72m)の橋桁を架設しました。川崎側の施工ヤードで組み立てた主桁を、手延べ機と呼ばれる先行桁に設置し、水平ジャッキ装置で受けて送り出す作業を繰り返します。全長104mの主桁を1回目約47m、2回目約36m、3回目約66mの合計約149m送り出し、トラベラークレーンで河川上に張り出し架設した主桁と接続しました。

 2021年2月、羽田空港と川崎臨海部が1本の橋桁でつながり、歩道や自転車道、車道などの橋面工の施工を進めました。鋼製の橋梁部の舗装には通常の道路舗装に使われるアスファルトではなく、グースアスファルト混合物を基礎に使用しています。水密性が高く、たわみに追従しやすい性質を持っているため、鋼床版の防水層としての機能を有しています。

 2022年2月26日には多くの一般市民が多摩川スカイブリッジを歩き、羽田空港や東京湾などの風景を楽しみました。

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 2022年3月12日に川崎市主催の開通式が行われ、同日15時に開通します。