環状七号線地下広域調節池(石神井川区間)工事 発進立坑(妙正寺川立坑)

河川

環状七号線地下広域調節池は、環状七号線および目白通りの地下で東京都が整備を進めている調節池です。2022年4月22日、「環状七号線地下広域調節池(石神井川区間)工事」が進む発進立坑(妙正寺川立坑)を取材しました。

環状七号線および目白通りの地下には、トンネル式調節池「神田川・環状七号線地下調節池」と「白子川地下調節池」がすでに稼動しています。環状七号線地下広域調節池(石神井川区間)の整備は、神田川・環状七号線地下調節池と白子川地下調節池を連結し、より効果の高い調節池を築く工事です。

中野区野方5丁目にある発進立坑(妙正寺川立坑)から環状七号線および目白通りの地下を通り、練馬区高松3丁目の到達立坑(石神井川立坑)まで、延長約5.4kmのトンネルをシールド工法で構築します。また、稼働したトンネルの維持・管理するための中間立坑を練馬区豊玉中3丁目にニューマチックケーソン工法で構築し、中間立坑とトンネルの連結管を開放型シールド工法で整備します。

photo
資料:東京都第三建設事務所

この調節池の整備が完了すると、総延長13.1km、総貯留量143万m³(小学校のプールおよそ4,800杯分)の国内最大となる地下調節池が完成します。1時間あたり最大75ミリの降雨に対応した洪水を貯留するとともに、白子川、石神井川、妙正寺川、善福寺川、神田川の計5河川間にまたがることから、貯留量を複数の流域間で相互に融通することで、1時間あたり100ミリの局地的かつ短時間の集中豪雨にも高い効果を発揮します。

トンネルは泥水式シールド工法で構築します。掘削するシールド機は外径13.45m、長さ12.91m、重量約2,500t、装置推力は163200kN(2400kN×68本)です。
ビット(超硬合金製の刃)を装着した緑色のカッターヘッドによる回転で、土砂を削り取ります。一方、粘性を持たせた泥水を送泥管でカッターヘッド後部のチャンバーへ送り、圧力をかけて地山の土水圧に対抗させて切羽(掘削面)の安定を図ります。掘削された土砂は、泥水と一緒に排泥管で地上に搬出されます。

photo

掘削と同時に、セグメントと呼ばれる円弧状のブロックを組み合わせてトンネルの壁を構築します。トンネルを円筒形にすることで、地中のあらゆる方向からの力に対して安定した高い強度を保つことができます。シールド機は組み立てたセグメントをシールドジャッキで押し、進行方向へ掘進します。

西武新宿線野方駅から南側へ徒歩5分ほどに位置する中野区野方5丁目の施工ヤードに、稼働している妙正寺川取水施設とシールド機の発進立坑があります。

photo

環七通りや目白通りの地下32~40mを北側へ向かって掘削し、練馬区高松三丁目にある到達立坑まで、延長約5.4kmのトンネル式地下調節池を構築します。

妙正寺川の上部に施工ヤードを整備し、隣接して発進立坑が構築されています。施工ヤードの朝礼看板には、現在の現場状況を大型パネルで表示しています。

photo

photo

写真左上が掘進する進行方向になります。発進立坑を上部から見ると、掘削を進めているシールド機が発進した後に残された茶筒のような仮セグメントと、写真右下には棒状の反力支保工を確認できます。シールド機は発進時、反力支保工を反力にして前に進む力を得ます。

エレベーターに乗り、地下約30mへ移動します。青色の送泥管と橙色の排泥管が伸びています。

photo

角ばった壁の内側にはドロップシャフトと呼ばれる、らせん状の管路を設置しています。妙正寺川からの多量の水が落下する際に渦流を形成して衝撃を和らげます。立坑内は、供用している神田川・環状七号線地下調節池から水が入らないようRCコンクリートで壁を構築しています。

通常、シールド機は発進する前に発進坑口部分の躯体壁を取り除くか、鉄筋の替わりに炭素繊維などの切除が容易な特殊な材料を用いた壁にしておきますが、この工事では発進立坑の厚さ2.9mある鉄筋コンクリート壁をシールド機で直接切削して発進しました。鉄筋コンクリート製の立坑をシールド機で直接切削する工法は初めての事例となります。

photo

photo

2020年3月、シールド機による立坑の切削を開始した直後、ビットの損傷が確認されました。ビットをサイズアップして強化したものに交換するなどの対応策を講じて切削したところ、鉄筋コンクリート壁から突出した鉄筋や底部に堆積した鉄筋屑がビットに衝突し、衝撃でビットの一部が欠損しました。

鉄筋コンクリート製の立坑切削完了後にビット交換を行うこととし、シールド機の先端が水圧や土圧を受ける状況を考慮して、立坑切削部周辺の地盤改良を実施しました。

photo
資料:東京都第三建設事務所

photo
資料:東京都第三建設事務所

2021年12月に残りの鉄筋コンクリート壁の直接切削を完了、2022年2月末にはシールド機のビットの交換作業を終え、3月22日より掘削を再開しています。

トンネルの内部に入りました。シールド機の後部を確認できます。

photo

photo

シールドトンネルの内径は12.5mとなります。9分割したセグメントで、1リングを形成します。

シールド機中心の下部には、セグメントを所定の位置に設置するエレクターが装備されています。黄色の部材は形状保持装置です。

photo

photo

通常のトンネルと違い、内側に入った水の圧力がかかるため、トンネルの壁となるセグメントは鋼材とコンクリートが一体になった嵌合方式合成セグメントを採用しました。はまり合う関係を嵌合(かんごう)といい、セグメント端の嵌合継手部は凹凸で組み合う形状になっています。シールドの線形と荷重条件に応じて、標準では幅長1800mm、弧長4879mm、3か所ある急曲線部(曲線半径100m)では幅長700mmのオールテーパセグメントを配置します。
現在、セグメントは120tクローラークレーンで地上から1ピースずつ降ろしていますが、将来的には立坑にリフトを設置し台車ごとセグメントを降ろします。

後方で組み上げたセグメントを押すシールドジャッキです。シールドジャッキの伸びによって、シールド機は掘進します。可動式セグメント組立足場により、目視で作業できるようになっています。

photo

photo

余掘り量を少なくし、精度よく急曲線を掘り進めるため、中折れジャッキを備えています。左右に最大4.3度屈曲することが可能です。

シールド機の最前部に着きました。

photo

前部の奥にはチャンバーがあります。

後部から、シールド機が掘削した箇所を見ます。現在は環状七号線に入る手前まで掘削しています。

photo

今後は160mくらい掘進したところで段取り替えとして反力支保工や仮のセグメントをすべて撤去し、立坑にリフトを設置、シールド機の後ろに泥水を送るポンプや裏込め設備電気の設備などを搭載した後続台車を接続して、2023年1月から本格的に掘進する予定です。

2020年2月26日に行われたシールドマシン発進式典で、関係者により寄せ書きされたセグメントが組み込まれています。

photo

photo

小池百合子東京都知事の部分は白地になっています。

地上へ戻り、泥水処理の施設へ移動します。手前に一次処理設備部、土砂ピット、二次処理設備部、奥がプラント設備部となります。施設は近隣への日照を考慮し、透明な防音パネルになっています。

photo

photo

シールド機から排泥管で地上へ送られた土砂を含んだ泥水は、一次処理設備部へ送り、振動ふるいや土砂脱水篩により礫や砂利といった一次処理土と泥水に分けます。一次処理土は再利用します。

砂利などを取り除いて一次処理設備部から送られた泥水は、プラント設備部で調整してシールド機へ送って再利用します。プラント設備部には泥水の調整槽や裏込め設備が備わっています。

photo


(動画6秒)

粘土分などが増え濃くなり、一次処理設備部で取り除けない泥水は二次処理設備部で粘土分を取り除きます。二次処理設備部で出た泥水は水素イオン濃度や濁度などを調整した後に放流します。残った脱水ケーキと呼ばれる二次処理土は、産業廃棄物として最終処分場へ運んで処理します。

photo

土砂ピットには1.4㎥のバックホウを2台配置し、土砂をダンプに積み込みます。

工事について、大成JVの金野正一作業所長は「本工事で施工する地下調節池は、近年頻発している局地的な大雨や、台風等にとても有効な施設であると思っている。環七通りや目白通りといった重要な幹線道路の直下を掘削するので、地上へ影響を与えないように慎重に施工管理を行い、早期に供用を開始できるように確実に工事を進めていく」と述べました。

工事の概要は以下の通りです。
工事件名:環状七号線地下広域調節池(石神井川区間)工事
工期:2017年(平成29年)3月9日〜2023年(令和5年)3月14日(工期延伸予定あり)
発注者:東京都(第三建設事務所)
受注者:大成・鹿島・大林・京急建設共同企業体
施工場所:中野区野方五丁目地内〜練馬区高松三丁目地内
工事概要:シールドトンネル 内径12.5m、延長約5.4km
     中間立坑 15.5m×12.0m、深さ52.4m、面積186m²
     連絡管 内径4.25m、延長12.1m
総事業費:約987億円

公式:環状七号線地下広域調節池(石神井川区間)工事