リニア中央新幹線・新山梨環状道路 地域インフラ見学会

リニア中央新幹線

 山梨県は建設産業の重要性や魅力を広く知ってもらうことを目的に、県内在住の小学5年生から大学生までの希望者とその家族を対象とした「地域インフラ見学会」を2025年8月5日に開催しました。参加者は、建設が進む笛吹市内の「新山梨環状道路(東部区間)」と中央市内の「リニア中央新幹線 常永川橋りょう」を見学。また同日、常永川橋りょうに隣接する「リニア中央新幹線 釜無川橋りょう」の工事について、JR東海が報道公開を行いました。

●新山梨環状道路(東部区間)

 見学会はまず、峡東浄化センター(笛吹市)の会議室で新山梨環状道路の事業説明から始まりました。

photo新山梨環状道路の事業説明を聞く参加者

 新山梨環状道路は、甲府都市圏の交通円滑化や甲府市と周辺市町との連絡強化などを目的とした全長約43kmの環状道路で、北部区間、東部区間、既に開通している西部区間(中部横断自動車道と重複)、南部区間で構成されています。山梨県では現在、甲府市落合町から笛吹市石和町広瀬までの約5.5km区間で事業を進めています。

photo新山梨環状道路全体計画。南側にリニア山梨県駅 出所:山梨県

 仮想現実(VR)を用いた工事状況の体験も行われ、参加者は直感的に内容を理解できました。

photo参加者はVRも使用して工事を理解

 続いてバスで、小瀬スポーツ公園近くの東油川IC建設現場へ移動。ここでは路体築造のための盛り土工事を進めています。参加者は重機に試乗して運転席からの眺めや操作感を体験し、建設現場の迫力を実感しました。

photo重機に試乗する参加者

 南部区間方面では、平等川や濁川を渡る橋梁工事が進行中です。

photo先は新山梨環状道路(南部区間)につながる予定

 一方、北部区間方面では橋台の設置が進み、今後は工場製作の橋桁を架設する予定です。

photo先は新山梨環状道路(北部区間)につながる予定

●リニア中央新幹線 常永川橋りょう

 次に、リニア中央新幹線の常永川橋りょうの工事現場を見学します。この橋は、リニア中央新幹線山梨県駅予定地から西へ約5kmに位置しています。

photo釜無川橋りょう他の工事位置図 出所:JR東海

 中央市総合防災公園近くの常永川橋りょうP2ヤードに案内されました。

photo中央市総合防災公園付近から眺める常永川橋りょう

 昇降階段で、高さ約19mの橋りょう上部へ移動します。

photo写真左のゲート内が常永川橋りょうP2ヤード

 橋完成後には、橋上部に上り線・下り線の走行路を整備。レールに相当するガイドウェイや防音防災フードなどを設置します。カーブ区間では走行時に生じる遠心力を抑えるため、ガイドウェイに傾斜を設け、車体が自然に内側へ傾くようにします。これにより走行の安定性が確保されます。

photo常永川橋りょうの上部(名古屋方)。ガイドウエーの鉄筋が見える

photoガイドウェイ整備後のイメージ図 出所:JR東海

 道路や長大河川などの上では足場を組めないため、端部に移動作業車を設置してコンクリートを張り出す「張り出し工法」を採用していることが説明されました。

photoパネルを見ながら説明を受ける参加者

 常永川橋りょう上の端部からは名古屋方、品川方の双方を望むことができました。

photo名古屋方は張り出し工法が進む

photo品川方

●リニア中央新幹線 釜無川橋りょう

 JR東海の報道公開として、釜無川橋りょうの工事箇所へ移動します。長さ225mの常永川橋りょう、JR東海が施工済みの68m区間、長さ754.2mの釜無川橋りょう他、高架橋の区間が連なり、長さ1,238mを釜無川橋りょう他新設工事として進めています。

photo建設する釜無川橋りょう他新設工事の図 出所:JR東海

 名古屋方には、釜無川を渡る橋脚が連なっています。

photo釜無川橋りょうの名古屋方

 品川方には、先ほど見た常永川橋りょうと、手前にJR東海が施工済の区間を確認できました。

photo釜無川橋りょう付近から見る品川方

 工事は2021年4月に全体着工し、基礎や橋脚といった下部工はおおむね完成。橋桁などの上部工は5割強まで進捗しています。釜無川における工事は水位が低い11月から翌年5月末までに限定されていますが、2026年8月の完成を目指して工事が続けられています。

photo釜無川橋りょう付近。先は品川方 写真提供:JR東海

 JR東海 山梨東工事事務所の岡崎真人所長は「安全と環境に配慮しながら、地域と共生できる工事を進めていきたい」と話し、山梨県県土整備部 建設業対策室の鈴木伸太郎室長は「建設産業の役割を若い世代に知ってもらい、将来の担い手確保につなげたい」と話しました。

 見学を終えた参加者からは「規模の大きさに驚いた。早くリニアに乗ってみたい」との声が聞かれました。時速500kmでの営業運転を目指すリニア中央新幹線の建設は、着実に進んでいます。

■工事区間の概要
 名称:釜無川橋りょう他新設工事
 工事場所:山梨県中央市・南アルプス市地内
 発注者:独立行政法人 鉄道建設・運輸施設整備支援機構
 施工者:中央新幹線、釜無川橋りょう他特定建設工事共同企業体(鉄建・コーアツ・東鉄JV)