リニア中央新幹線 さがみはらリニアフェスタ2025

リニア中央新幹線

 リニア中央新幹線とその工事への理解を多くの人々に深めてもらうため、2025年10月25日・26日の両日、中央新幹線神奈川県駅(仮称)新設工事の現場で「さがみはらリニアフェスタ2025」が開催されました。

 JR東海が建設を進めるリニア中央新幹線は、時速約500kmで走行する超電導リニアにより、品川ー名古屋間を最速40分、品川ー大阪間を最速67分で結ぶ計画です。品川駅ー神奈川県駅ー(山梨リニア実験線)ー山梨県駅ー長野県駅ー岐阜県駅ー名古屋駅を結びます。(中間駅は仮称)

 リニアフェスタは神奈川県・相模原市との共催。会場はJR・京王電鉄橋本駅南口近くの中央新幹線 神奈川県駅(仮称)新設工事現場内(相模原市緑区橋本2丁目)です。事前申込制でしたが、当日入場も可能でした。25日は12時〜20時、26日は10時〜17時に入退場できます。

 神奈川県駅でのイベントは過去3回、開催されています。

 リニアフェスタの会場には地上ステージ、展示ブース、飲食ブースが用意されています。

photoリニアフェスタ会場のレイアウト 出所:JR東海

 13時20分よりオープニングセレモニーとして、トラックステージで地元の高校生たちによる華やかな演奏で幕を開けました。

photo華々しく演奏する相模原弥栄高等学校吹奏楽部

 続けて主催者挨拶として、JR東海の丹羽俊介代表取締役社長と神奈川県の黒岩祐治県知事が登壇。黒岩県知事は、かながわ観光親善大使でバレエダンサーの上野水香さんが神奈川県駅の地下工事現場で舞う「白鳥の湖」の映像を紹介しました。

photo熱を込めて映像を紹介する黒岩県知事

 会場内のトラックステージとグリーンステージ、2つの地上ステージでは両日、音楽ライブやお笑い、フラメンコ、ダブルダッチ、ダンスパフォーマンス、よさこい、サンバなど多彩な演目が繰り広げられ、観客を沸かせました。

 雨天ながらも、普段入ることができない空間で多くの人がイベントを楽しんでいます。

photo開放された工事の現場

 地上部の桟橋から、工事が進む神奈川県駅の品川方を眺めます。神奈川県駅は県立相原高校の移転跡地を中心に工事が進む、国道16号と交差する地下3層の大規模地下構造物です。延長約680m、最大幅約50m、深さ約30mの地下函体を開削工法で構築し、底部からホーム2面と線路4線の駅構造物を構築します。品川方の東端部は第一首都圏トンネルに接続します。

photo品川方の工事エリアを望む

 反対側の名古屋方は国道16号との交差部となり、非開削工法(URT工法)で大断面トンネルを構築しました。西端部は第二首都圏トンネルに接続します。

photo名古屋方の工事エリアを望む

 開削エリアの外には、掘削で発生した砂礫層の土を仮置きして積み上げています。駅の躯体を構築した後に埋め戻します。

photo仮置きしている掘削で発生した土

 工事現場に隣接するイノベーション創出促進の拠点「FUN+TECH LABO」(ファンタステックラボ)では、15時30分より次世代型太陽電池実証開始式が催されました。式典には神奈川県の黒岩県知事、PXPの栗谷川悟社長、日揮の山口康春社長、JR東海の丹羽社長、相模原市の本村賢太郎市長が参加。軽量で窓に貼り付け可能なシースルー型太陽電池のお披露目と、その発電電力を活用したイルミネーション点灯式が行われました。

photo窓や壁に貼られている次世代型太陽電池

 次世代型太陽電池(カルコパイライト)は、JR東海、PXP、日揮、相模原市が共同で開発。薄型で軽量、割れにくい特性があり、これまで設置が困難だった壁面や窓、空き地などにも設置できます。発電した電力は室内機器や防犯カメラ、イルミネーションなどに活用されます。低コスト化が見込まれることから、次世代の太陽電池として今後、飛躍的な普及が期待されています。

 第二首都圏トンネルの掘削始点となる国道16号交差部トンネルの工事施工ヤードへ移動します。
 神戸の工場で製作されたシールド機は、陸上で輸送できる大きさに分割し、工事施工ヤードに搬入。2機のクローラークレーンを使用して地上で仮組みし、750tクローラークレーンで地下へ降ろしてシールド機を組み立てます。クローラークレーンには恐竜を模した装飾が施されており、750tクレーンは「リーニアス」、350tクレーンには「ハシロン」と、それぞれに愛称が付けられています。

photo恐竜を模した大型クレーン

 深さ約36m、幅約30m、延長約20mの立坑を、仮設階段で降ります。

photo国道16号交差部トンネルの立坑

 立坑の地下では、第二首都圏トンネルを掘削するシールド機の組み立てが進んでいます。現在は土を削るカッターヘッドの組み立てを終えました。

photo立坑で組み立てが進むシールド機

 国道16号交差部トンネルの先端からシールド機が掘削することになります。

photo国道16号交差部トンネルの西端

 シールド機は外径約14m、機長約15m。最大で1日に約20m、1か月で約380mを掘進する予定です。神奈川県駅の西端部から相模川の左岸までの約3.6kmを掘り進めます。

photoカッターヘッドの組み立てを終えたシールド機

 シールド機の後部では、組み立て作業が進められていました。

photo組み立て途中のシールド機後部

 18時になると、地下工事現場内の特設ステージで「地下交響(ちかこうきょう)〜Echoes of The Earth」が開演。神奈川ゆかりのオペラ歌手2名とトロンボーン奏者4名がJR東海のテーマソング「会いにいこう」などを奏で、神奈川県駅の地下空間に荘厳な響きを満たしました。

photo地下で幻想的な音楽パフォーマンス

 リニア工事の展示ブースでは、ペーパークラフトやシールド工法の説明映像など、さまざまなコーナーが用意されています。

photoリニア工事の展示ブース

 鉄筋コンクリートを打設する際に鉄筋を固定する「スペーサー」という部材に、自由なメッセージを描くことができます。スペーサーは工事で使用します。

photoスペーサーにリニアへの夢を描く参加者

 開催両日とも雨天だったものの、25日は約3,500人、26日は約3,400人、合計約6,900人が来場しました。

 リニアフェスタ2025にて、JR東海の丹羽社長は「こうしたイベントを通じて多くの方に工事現場を身近に感じてもらい、リニアへの理解と協力を得ていきたい」と語り、神奈川県の黒岩県知事は「開通前の神奈川県駅を、今後もエンターテインメントを発信する場として活用したい」、相模原市の本村市長は「神奈川県やJR東海と連携し、神奈川県駅の建設とまちづくりを共に進めていきたい」と述べました。

 リニア中央新幹線について、JR東海は開業時期を未定としています。

■工事の概要
 施工場所:相模原市緑区橋本2丁目ほか
 工期:2019年6月26日〜2027年3月31日
 発注者:東海旅客鉄道株式会社
 受注者:中央新幹線神奈川県駅(仮称)新設工事共同企業体 (代表構成員:株式会社奥村組) (構成員:東急建設株式会社、京王建設株式会社)

公式:リニア中央新幹線|JR東海