京急大師線 東門前駅─小島新田駅間 地下化切替工事

京急電鉄

京急大師線は、京急川崎駅と小島新田駅を結ぶ京浜急行電鉄の鉄道路線です。京急大師線の一部を地下化し、踏切除却による交通渋滞の解消が川崎市と京浜急行電鉄によって進められています。
2019年3月2日の一夜間、「京急大師線 東門前駅─小島新田駅間 地下化切替工事」が実施されました。

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京急川崎駅─小島新田駅の延長約5kmを2期区間に分け、ほぼ全線を地下化し、15箇所ある踏切のうち14箇所を除却する目的で連続立体交差事業が計画されました。1993年6月に都市計画決定、1994年3月に都市計画事業認可を取得して、事業に着手しています。

しかし、費用に対する効果や社会経済状況の変化などで京急川崎駅─川崎大師駅の2期区間については「中止」、川崎大師駅─小島新田駅までの1期区間については「事業継続」とすることが2017年11月に決定しました。

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中止となった2期区間は計画当初、約804億円の工事費が見込まれていました。事業の実現見通しやコスト削減の可能性低下、費用便益比の結果、踏切状況などから中止となりました。2期区間に残された4つの踏切に対しては、単独立体交差化や代替路確保による踏切除却など、代替案の検討が進められています。

産業道路の踏切を含む東門前駅─産業道路駅─小島新田駅の延長1.2kmを1期①区間とし、2006年より延長約980mの地下化工事を進めてきました。東門前駅から川崎大師駅(鈴木町駅すり付け)の延長1.2kmを1期②区間として、2019年度の工事着手を予定しています。
工事は川崎市と京急で協定を締結し、協定に基づいて京急が建設会社に発注する形態で進めています。

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2019年3月2日の営業運転終了後から翌3日の午前にかけて、これまで使用していた地上の線路から、準備を進めてきた地下の線路に切り替える工事が行われました。これにより東門前第3踏切道、産業道路第1踏切道、産業道路第2踏切道の3踏切が除却され、平面交差が解消されます。また、東門前第2踏切道が廃止され、通行不可となります。

3月2日23時過ぎ、東門前駅真横の東門前第1踏切道から見た産業道路駅方面です。ここから先の産業道路駅を含め、小島新田駅の手前までが一晩で地下化します。

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線路には工事桁が組み込まれています。

東門前駅─産業道路駅─小島新田駅は、4つの工区に分けられています。

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各工区の施工者は、東門前駅側から以下の通りです。
 第1工区 大成、京急、東亜JV
 第2工区 大林、戸田、前田、三井住友JV
 第3工区 鹿島、西松、大豊JV
 第4工区 東急、京急、安藤・間JV

今回、東門前第1踏切道と東門前第2踏切道の間に位置する東門前小学校の屋上から撮影しました。東門前駅側の第1工区、起点側切替部を見渡すことができます。

第1工区での作業は大きく分けて、軌道を扛下(こうか)する「工事桁ジャッキダウン」と、従来の軌道が載っていた工事桁を撤去する「工事桁クレーン撤去」があります。

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第1工区の東門前駅側は、地下に向けて軌道に傾斜をつけていきます。産業道路駅側は、現在の軌道と工事桁を撤去して、地下に敷設してある軌道を使用できるようにします。

3月2日【23時55分】下り線の終車が東門前駅を出発しました。東門前第1踏切道で工事関係者が待機しています。

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この日の切替工事について、工事全体で約1700名が従事しています。

3月3日【0時27分】東門前第1踏切部の軌道扛下作業です。

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踏切板やアスファルト舗装を撤去後、あらかじめまくら木に設置した高さ調整材を抜き取り、軌道を低下させます。

【0時5分】工事桁ジャッキダウン区間です。工事桁ジャッキダウンの準備作業として、レールとまくら木を固定する締結装置の撤去作業が進みます。

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【0時37分】軌道扛下区間と工事桁ジャッキダウン区間の境界です。軌道扛下作業として、まくら木の高さ調整材の撤去が進みます。

産業道路駅方面を望みます。中央遠方には首都高速道路の大師JCTが見えます。

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すぐ手前には事前に廃止となった東門前第2踏切道がありました。

【0時37分】工事桁クレーン撤去区間です。

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工事桁クレーン撤去の際に支障となる電車線を撤去しています。

【1時28分】工事桁クレーン撤去区間です。レールを吊り上げます。

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ローラーを使用して、人力にて作業区間外へレールを送り出します。

動画(33秒)です。レールを手で送り出している様子がわかります。

【2時10分】工事桁クレーン撤去区間です。

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工事桁クレーン撤去の際に支障となる足場板を人力で撤去しています。

【2時30分】クレーンによる工事桁撤去が始まりました。旧東門前第2踏切道付近を連続で見てみます。

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【3時45分】工事桁が撤去されると、地下から新設の軌道が見えてきました。

タイムラプス動画(9秒)です。

【3時34分】工事桁ジャッキダウン区間と工事桁クレーン撤去区間の境界です。

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工事桁ジャッキダウン区間の終点側を約1220mm扛下、工事桁クレーン撤去区間に事前敷設した軌道と接続します。

【3時41分】工事桁クレーン撤去区間です。

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工事桁支持杭の切断作業が行われています。切断後、クレーンで軌道外へ搬出します。

【3時59分】工事桁ジャッキダウン区間です。ジャッキダウンした工事桁の固定完了後、軌道高さの調整に移ります。

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【4時16分】高さ調整作業実施前に転落防止、作業効率向上のため足場板を設置します。

【4時6分】東門前第1踏切部では、軌道扛下が完了しました。

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踏切道復旧作業を進めています。

【4時10分】工事桁クレーン撤去区間では工事桁の撤去が完了し、新しい軌道が完全に姿を現しました。

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目で見てわかる大きな動きのある作業は完了しました。

3月3日10時過ぎ、東門前駅真横の東門前第1踏切道から見た産業道路駅方面です。地下化が完了しました。

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「京急大師線 東門前駅─小島新田駅間 地下化切替工事」はここまでとなります。
下り線(京急川崎発)は10時04分から、上り線(小島新田発)は10時06分から、それぞれ運転再開となりました。

今回の工事について、京浜急行電鉄 鉄道本部立体交差部大師線連立課の関根慎二課長補佐は以下のように述べました。
「住宅密集地での切替工事のためスペースが限られており、施工計画の立案に苦慮しました。大型クレーンを設置するため、沿線の小学校や企業などから借地させていただくなど多大な協力があったからこそ、今回の切替工事を実現することができました。感謝いたします」

事業名:川崎都市計画都市高速鉄道事業
工事費:約1,426億円(1期①区間:約642億円)
事業主体:川崎市
施行者:京浜急行電鉄株式会社

参考:京急電鉄オフィシャルサイト