リニア中央新幹線と工事への理解を地元住民や多くの人々に深めてもらうため、2022年10月3日に「さがみはらリニアビジョン」が中央新幹線 神奈川県駅(仮称)新設工事の現場で催されました。
JR東海が事業を進めるリニア中央新幹線は時速約500kmで走行する超電導リニアモーターカーにより、品川ー名古屋間を最速で40分、品川駅ー大阪間を最速67分で結ぶ新幹線です。品川駅ー神奈川県駅ー(山梨リニア実験線)ー山梨県駅ー長野県駅ー岐阜県駅ー名古屋駅を結びます。(中間駅は仮称)
さがみはらリニアビジョンは、プロジェクションマッピングの投影や様々な展示により、事業や工事についての理解を深めながらリニア中央新幹線にまつわる未来を体感できます。リニア中央新幹線の一般向けの大規模イベントとしては、工事現場において今回が初めての開催となります。会場はJR・京王電鉄橋本駅南口の駅前、中央新幹線 神奈川県駅(仮称)新設工事現場内(相模原市緑区橋本2丁目)になります。
2022年10月1日~4日の計4日間に事前予約した約2,600名が、各日4回(初日は1回のみ)に分かれて参加しました。先着順、料金は無料です。初日はJR東海の金子慎代表取締役社長や奥村組の奥村太加典代表取締役社長、黒岩祐治神奈川県知事、本村賢太郎相模原市長、赤間二郎衆議院議員による点灯式が行われました。
入場チケットを受付で提示し、会場に入ります。
主催は東海旅客鉄道(JR東海)、奥村組・東急建設・京王建設共同企業体、奥村組・東急建設・日本国土開発共同企業体、協力は神奈川県、相模原市です。
イベントではプロジェクションマッピング、盛土体験&歩行体験、各種展示ブースが用意されています。
イベントの地図
順路に沿って進みます。
神奈川県駅は開削工法で作業を進めています。駅延長約680m、最大幅約50m、深さ約30mの地下構造です。
工事区間の詳細地図 資料:JR東海
名古屋側で国道16号と交差する箇所69mは非開削トンネルで、道路を挟んで設けた立坑からシールド機で馬蹄型トンネルを掘削するURT工法を採用します。その先は名古屋へ向かって3580mの中央新幹線第2首都圏トンネルを施工します。
名古屋方面を臨みます。
農業科を主としていた県立相原高校の跡地を工事ヤードとして活用しています。敷地には実習で使用した牧場や農場があったため、広大な土地を確保できました。2019年10月より校舎の解体し、2020年7月から掘削を進めています。掘削面積は3万m²、掘削土量は80万m³です。現在は45万m³(25mプール50~60杯)ほど掘削しました。2022年10月の工事進捗率は30%ほどとなっています。
両側の仮土留壁から約1m内側に駅の函体を構築します。地下3階構造で、最下部が2面4線のホーム階になります。現在は深い箇所で約20mまで掘り下げていてます。
都心部で地下駅を構築する際の多くは地上から連壁を打って、狭い空間で作業します。ここでは広大な敷地があり、地盤もかなり固い安定した関東ローム層のため、斜めの壁となる法面と呼ばれる法切掘削部を構築しながらより迅速に掘削できます。
これより地下は砂や礫が多い砂礫層になるため、地下に地中連続壁を打ち、掘削が進められます。約30m掘り下げた後、駅舎構造物を構築していきます。
反対側の品川駅方面を臨みます。駅舎構造物の中心が掲示されています。
端へ向かうほど、幅が狭くなっています。
品川駅から橋本駅まで現在の所要時間は1時間ほどですが、リニア中央新幹線では約10分に短縮します。
施工会社により、様々な大型重機が点在して展示されています。
25トンラフタークレーンです。最大25トンの物を吊り上げることができます。タイヤで自走できるため道路を走行可能で、4つのタイヤで舵を取るため小さい半径(最小回転半径5.1m)で曲がることができます。
テレスコクラム1.3m³級です。伸縮式アームにより、最大25mまで掘削できます。重機の先端が貝殻に似ていることから現場ではクラムシェルと呼ばれ、掘削時は箱型アームが何段も伸びて、地下の土砂をシェルで1回に1.3m³を掴むことが可能です。箱型アームを縮め、ダンプトラックに土砂を積み込みます。
周辺には電力の架空線が多いため、クレーンなどが架空線に接近しすぎるとレーザーバリアシステムにより警報装置が作動します。
掘削で使用するスロープの幅も広く確保されています。法面には乾燥防止を目的として白いコンクリートが吹き付けられています。
プロジェクションマッピングは掘削斜面をスクリーンに見立てて、横約30m、縦約15mサイズの映像が投影されています。
JR東海による、0系からN700系にいたる東海道新幹線の歴史からリニア中央新幹線へ至るコンセプトムービーは圧巻です。浮上走行する仕組みや、150km/hで車輪を格納し500km/hに到達する様子などが描かれています。
想像できる未来を、超えよう。/JR東海
リニア中央新幹線は、ガイドウェイと呼ばれる従来の鉄道のレールに相当する構造物と、モーターに相当する地上コイルで構成される超電導リニアの重要な要素に沿って走行します。
工事概要の映像では、上空から見た工事ヤードなども見ることができます。
GO!リニアというタイトルのもと、リニア中央新幹線に期待を寄せた子供たちのイラストとメッセージが華やかに展開します。
さがみはらリニアビジョン(GOリニア版)
森川葵さん演じる奥村組の女性社員「奥村くみ」からのメッセージ、橋本駅の歴史、リニア中央新幹線とともにある未来の相模原市を鉄腕アトムが導く「さがみロボット産業特区: ROBOT TOWN SAGAMI」のアニメなど、多種多様な映像が披露されました。
盛土体験へ移動します。
神奈川県駅新設工事では、地下を掘削して駅を構築した後に、掘削で発生した土を埋め戻します。掘削した土を埋め戻すまでの期間、工事ヤードで盛土し仮置きします。この日のイベントでは高さ約6mの盛土に登り、高さと安全性を体感できました。
最大で8~10mとなる盛土の構築が完了した後は、工事現場を見学できるようなスペースとして一般開放することや、行政や地元と連携して有効に活用することが検討されています。
盛土の上にも重機が展示されていました。
各種展示ブースではJR東海、施工会社、神奈川県、相模原市が展示ブースを出展しています。
イベントの地図
JR東海のブースでは、パネル展示や模型による磁気浮上走行により、リニア中央新幹線を知ることができます。
ガイドウェイとなるパネルでリニアを挟む模型は、親子で挑戦する光景も見られました。
この日は地域の住民を中心に来場し、イベントを楽しみながらリニア中央新幹線や神奈川県駅の工事への理解を深めました。
(2024年3月29日追記)リニア中央新幹線についてJR東海は2027年開業を断念し開業時期未定と発表しました。静岡での工事には10年程度かかるとしていて、開業は2034年以降になる計算です。
(2023年12月15日追記)リニア中央新幹線についてJR東海は2027年度以降の開業を目指すと発表しました。
■工事の概要
施工場所:相模原市緑区橋本2丁目ほか
工期:2019年6月26日~2027年3月31日
発注者:東海旅客鉄道株式会社
受注者:中央新幹線神奈川県駅(仮称)新設工事共同企業体 (代表構成員:株式会社奥村組)(構成員:東急建設株式会社、京王建設株式会社)