環状七号線地下広域調節池 石神井川区間 中間立坑(練馬区豊玉中)

 環状七号線地下広域調節池

 環状七号線地下広域調節池は、環状七号線および目白通りの地下で東京都が整備を進めている調節池です。2023年2月6日、環状七号線地下広域調節池石神井川区間の工事が進む、練馬区豊玉中の中間立坑を取材しました。

 環状七号線および目白通りの地下には、トンネル式調節池の「神田川・環状七号線地下調節池」と「白子川地下調節池」がすでに稼動しています。環状七号線地下広域調節池 石神井川区間の整備は、神田川・環状七号線地下調節池と白子川地下調節池を連結し、より効果の高い調節池を築く工事です。

 環状七号線地下広域調節池の整備が完了すると、総延長13.1km、総貯留量143万m³(小学校のプールおよそ4,800杯分)の国内最大となる地下調節池が完成します。1時間あたり最大75ミリの降雨に対応した洪水を貯留するとともに、白子川、石神井川、妙正寺川、善福寺川、神田川の計5河川間にまたがることから、貯留量を複数の流域間で相互に融通することで、1時間あたり100ミリの局地的かつ短時間の集中豪雨にも高い効果を発揮します。

photo工事区間の周辺地図 資料:東京都第三建設事務所

 中野区野方5丁目にある発進立坑(妙正寺川立坑)から環状七号線および目白通りの地下を通り、練馬区高松3丁目の到達立坑(石神井川立坑)まで、延長約5.4kmのトンネルを構築します。また、稼働したトンネルを維持・管理するための中間立坑を練馬区豊玉中3丁目に構築し、中間立坑とトンネルを結ぶ連結管を整備します。

 本管となるトンネルは、泥水式シールド工法で構築しています。掘削するシールド機は外径13.45m、長さ12.91m、重量約2,500t、装置推力は163200kN(2400kN×68本)です。トンネルの内径は12.5mになります。

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 ビット(超硬合金製の刃)を装着した緑色のカッターヘッドによる回転で、土砂を削り取ります。一方、粘性を持たせた泥水を送泥管でカッターヘッド後部のチャンバーへ送り、圧力をかけて地山の土水圧に対抗させて切羽(掘削面)の安定を図ります。掘削された土砂は、泥水と一緒に排泥管で地上に搬出されます。

 掘削と同時に、セグメントと呼ばれる円弧状のブロックを組み合わせてトンネルの壁を構築します。9分割したセグメントで、1リングを形成します。トンネルを円筒形にすることで、地中のあらゆる方向からの力に対して安定した高い強度を保つことができます。シールド機は組み立てたセグメントをシールドジャッキで押し、進行方向へ掘進します。

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 2023年2月4日現在、シールド機は野方駅手前を掘削しています。

photo2023年2月4日現在の掘削位置 資料:東京都第三建設事務所

 練馬区豊玉中の中間立坑では、シールド機がトンネル掘削の際に使用する泥水処理施設を構築しています。
 中野区野方の発進立坑から掘進したシールド機が中間立坑の真横を通り過ぎた後、中間立坑から横穴を開けて、トンネルと中間立坑を連絡管で繋ぎます。その後、シールド機への泥水の供給や土砂搬出など、基地としての機能を発進立坑から中間立坑に移行します。

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 施工ヤードの朝礼看板には、現在の現場状況を大型パネルで表示しています。

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 立坑の内部へ移動します。

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 立坑を上部から覗きます。地下深くなるほど立坑外部からの土水圧が高くなるため、立坑内側の壁面が段階的に厚くなっています。

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 立坑の大きさ(底版下の刃口部サイズ)は15.6m×12.1m、深さは約52.4mになります。立坑および、立坑とトンネルを結ぶ連絡管の周りにおける地盤改良はすでに完了しています。

photo立坑の断面図 資料:東京都第三建設事務所

 立坑は、ニューマチックケーソン工法で構築しました。空気の圧力を利用して掘削し、ケーソンと呼ばれる函(はこ)を沈下させる工法です。風呂の浴槽で空気が入った状態の洗面器をお湯の中に沈めても、洗面器の中にお湯が入ってくることはありません。空気の圧力でお湯の浸入を防いでいるためです。この原理を用いたのがニューマチックケーソン工法で、洗面器の中が作業室、洗面器の縁がケーソンの刃先にあたります。

photoニューマチックケーソン工法の略図 資料:東京都第三建設事務所

 まず、地上でコンクリートの躯体を造ります。その後、作業室と呼ばれる下部の空間にケーソンショベルを取り付け、躯体の底を掘削します。作業室には地下水圧と釣り合う圧縮空気を送り込み、地下水が入り込まない状態にします。掘削を進めていくと、躯体の重量を地盤が支えることができなくなり、重みで躯体が沈みます。この方法で、地下約50mの立坑を構築しました。

 仮設階段を下りて、地下約50mから地上を見上げます。

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 中間立坑は扉を隔てて、ドライエリアとウェットエリアの2つに区切られます。稼働した際、水が入り込まないドライエリアと、連絡管と繋がって水が入り込むウェットエリアです。仮設階段があるドライエリアから、ウェットエリアへ移動します。

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 連絡管を施工する箇所です。

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 連絡管は、トンネルの掘削に合わせて、トンネルの壁となる鉄製のセグメントをその場で組み立てる開放型シールド工法でつくられます。施工中に土砂が崩れないように、施工箇所の地盤改良や、掘削箇所の周囲を鋼管(パイプルーフ)で補強します。

photo立坑での開放型シールド工法 資料:東京都第三建設事務所

 シールドトンネル本管を掘削する際に使用する給水や排水などのパイプが用意されています。

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 地上へ戻ります。環状七号線寄りに構築された建屋の中には、土砂を脱水する振動ふるいなどが設置されます。建屋は振動する設備のため、コンクリートが詰まった重さのある特殊なパネルで覆われています。これにより、騒音や低周波が外部に漏れることを防ぎます。

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 建屋の中へ移動します。シールド機から排泥管で地上へ送られた土砂を含んだ泥水は、振動ふるいや土砂脱水篩により、礫や砂利といった一次処理土と泥水に分けられます。

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 一次処理土は埋め立てなどで再利用します。泥水は調整してシールド機へ送り、再び使用されます。

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 施工ヤードでは現在、泥水処理の水槽を囲う鉄骨を構築しています。鉄骨の上部には、濾過しきれなくなった泥水を脱水・圧縮して二次処理土(脱水ケーキ)にする、フィルタープレスと呼ばれる装置を設置します。二次処理土は、産業廃棄物として最終処分場へ運んで処理します。ピットに溜まる土砂は、3台のバックホウを用いてピットから掻き出し、ダンプトラックで搬出されます。中間立坑は今後、すべての設備がハウスで覆われ、防音対策をとって設備として稼働することになります。

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 トンネルがすべて完成し地下広域調節池として機能すると、中間立坑は泥水供給や土砂搬出のための設備がなくなり、洪水で溜まった土砂などを片づける清掃車両をトンネルに出し入れするための管理施設が整備される予定です。

■工事の概要
 工事名:環状七号線地下広域調節池(石神井川区間)工事
 施工場所:中野区野方五丁目地内〜練馬区高松三丁目地内
 工期:2017年3月9日〜2025年12月18日
 工事費:約987億円
 発注者:東京都(第三建設事務所)
 受注者:大成・鹿島・大林・京急建設共同企業体

公式:環状七号線地下広域調節池(石神井川区間)工事