東名 日本坂トンネル非常設備の見学

NEXCO中日本

 子どもたちに高速道路をより身近に感じてもらうため、中日本高速道路(NEXCO中日本)東京支社は小学生とその保護者を対象にした夏休み親子見学会「ハイウェイみて!みて!ツアーズ」を毎年、夏休み期間に各地で開催しています。2025年は新東名高速道路の建設現場見学を中心に、はたらくクルマの体験乗車など計7コースのツアーを実施。そのうちのひとつ、8月1日に行われた「高速道路の施設見学会」に参加しました。

 この日の見学内容は東名高速道路の「日本坂トンネル内の設備見学」と「はたらくクルマ特別試乗」です。41組111人の応募があり、保護者同伴の小学生18人が参加しました。参加者はまず、点検のため一時通行止めにしている東名高速道路上り線の日本坂トンネル左ルートへ移動します。

photo点検のため規制中の日本坂トンネル左ルート

 日本坂トンネルは静岡市と静岡県焼津市を通る、上り線が右ルート2車線と左ルート2車線の計4車線、下り線は3車線の道路トンネルで、上り線の左ルートは全長2380m。毎月1回程度、通行止めにしてトンネル内を点検しています。
 トンネル内でバスを降りた参加者は、トンネル内に設置されたさまざまな防災設備を見学します。

photo日本坂トンネル左ルートのトンネル内

 ジェットファンは、トンネル上部から吊り下げられた換気設備です。風を送ることで、車両の排ガスや火災発生時の煙を排出し、視界を良好に保ちます。トンネル内にはほかにも風向風速計、排ガスなどによる視界不良を検知する煙霧透過率計、一酸化炭素濃度計といった計測・換気設備を備えています。

photoトンネル上部に設置しているジェットファン

 非常用設備として、壁面には消火栓が設置されている。これは火災の初期消火や延焼防止のために使用するもので、内部には長さ30mのホースが格納されています。火災検知器は火災時に発生する光を検知し、その発生状況や位置を道路管制センターへ知らせる仕組みです。

photoトンネル壁面に設置された消火栓と火災検知器

 消火栓を使った消火体験が行われ、小学生たちはロードコーンに向けて放水しました。

photoトンネル内での消火体験

 火災や事故などの非常時に反対側のトンネルへ避難するための非常口(避難連絡坑)を、およそ750mごとに設置しています。避難時には反対側車道を規制します。

photo反対側のトンネルへつながる非常口

 非常口の扉を開けると避難連絡坑につながっていて、その通路を通って反対側のトンネルへ到達する構造になっています。

photo非常口の先にある反対側のトンネル

 水噴霧設備は、トンネル火災発生時に天井のヘッドから霧状の水を噴射し、火勢を弱め延焼を防ぎます。実際に水が噴射され、参加者は傘を手に、天井から降り注ぐ水の中を歩きました。

photo水噴霧設備から出る水の中を歩く参加者

 電話ボックスの中にある非常電話を見ます。火災や事故発生時に道路管制センターへ直接連絡できる設備で、トンネル内ではおよそ200mごとに設置しています。

photo非常電話。受話器を持ちボタンを押すだけで通話可能

 情報収集・提供設備として、走行車両に情報を伝えるトンネル内情報板(E型情報板)、交通状況や火災・事故の発生状況を遠隔監視するCCTVカメラ、避難者を非常口へ誘導する誘導表示板なども設置されています。

 次に参加者はバスで静岡IC直結のNEXCO中日本 静岡保全・サービスセンターへ移動します。見学会のために、道路巡回車や標識車、リフト車、路面清掃車、散水車など、道路の保全に活躍する「はたらくクルマ」が一堂に会しています。

photo静岡保全・サービスセンターに展示された「はたらくクルマ」

 高所での点検や清掃に使用するリフト車の荷台などさまざまな車両に試乗することができ、装備品にも触れることができました。

photoリフト車の荷台に乗り高所を体験

 道路巡回車の案内で珍しい表示をお願いしたところ、「ミサイル落下情報」が表示されました。

photo道路巡回車の表示例「ミサイル落下情報」

 見学会を終え、参加者からは「何気なく通っているトンネルに、こんなに多くの設備があるとは知らなかった」「多くの車両が道路を守っていることが分かった」といった感想が寄せられました。

 1979年7月11日、日本坂トンネルで追突事故により火災が生じ7人が死亡、173台の車両が焼失する事故が発生しました。トンネルにおける防災設備の不備が指摘されました。いつ起こるかわからない事故に備えるための貴重な体験の場として、今回のイベントは大きな意義がありました。