中部横断道(E52中部横断自動車道)は、静岡県静岡市を起点に山梨県甲斐市を経由して、長野県小諸市に至る延長約132kmの高速自動車国道です。2021年8月29日、中部横断道の一部となる南部IC─下部温泉早川ICの開通に先立ち、「中部横断道 南部IC─下部温泉早川IC 開通式」が行われました。
中部横断道で最後の未開通区間だった南部IC─下部温泉早川IC間約13.2kmの開通により、山梨と静岡を結ぶ中部横断道南側の延長74.3kmが全線開通しました。これにより上信越道、中央道、新東名と東名高速が結ばれます。山梨県庁と静岡県庁の移動には並行する国道52号を使うと2時間45分かかりますが、中部横断道全線を利用することで1時間35分になり、約70分短縮できます。
開通区間の広域地図 資料:国土交通省
中部横断道は、NEXCO中日本施工の有料道路方式区間と国土交通省施工の新直轄方式区間に分かれます。新直轄方式とは国と地方自治体により事業を負担することで、通行は無料に設定されます。
今回の開通区間は急峻かつ狭隘な地形で、道路の高低差を少なくするため、トンネルと橋梁が全体の約7割を占めています。南部IC─下部温泉早川ICにはトンネル10本と橋梁23橋がつくられました。過酷な地形条件の下、硬い地盤と柔らかい地盤が混在する複雑な地層による難工事、自然由来重金属を含む掘削土の処理、トンネル内壁におけるコンクリート型枠板の不具合による再工事、相次ぐ作業員の死亡事故など、様々な難題が立ちはだかりました。2017年度の開通予定から3度延期され、悲願の開通になります。
今回の中部横断道全線開通により、以下のような効果が期待されます。
・物流の効率化による山梨の主要農産品の輸出支援
・新たな企業立地による地域産業の発展
・通貨交通の代替路確保や沿線集落の孤立解消
・病院へ搬送可能な圏域拡大による救命率の向上
・富士山を囲む新たな周遊観光ルートによる観光客の増加
開通式の会場は、中部横断道の身延山IC(みのぶさんインターチェンジ)です。県道10号富士川身延線から連絡路を進みます。
開通式典(挨拶、祝辞など)は身延山IC付近の和田トンネル本線上、開通セレモニー(鋏入れ・くす玉開き、通り初め)は身延山IC付近の本線上で執り行います。主催は国土交通省関東地方整備局、山梨県、身延町、南部町です。
和田トンネル内から、身延山IC方面を見てみます。インターチェンジのナンバリングとして、2に南部IC、2-2として身延山IC、3に下部温泉早川ICが振られています。
身延山ICは、地方公共団体が主体になり整備した地域活性化インターチェンジです。
10時よりトンネル本線上で開通式典が始まり、来賓など関係者およそ130名が列席しました。開式、挨拶、国会議員による祝辞、登壇者・来賓紹介、祝電披露、身延町長による御礼の挨拶、閉式と進みます。
長崎幸太郎山梨県知事は「中部横断道は物流の新たな大動脈となる重要な高速道路。山々に囲まれている本県にとっては長年待ち望んできた開通であり、経済や観光の活性化に計り知れない効果が期待される。中部横断道が国土の横断軸としてさらにその真価を発揮するために、残る山梨長野間を確実につなげることが重要」と語りました。
川勝平太静岡県知事は「中部横断道は絶景を楽しむ道路。全線開通は、ふじのくに一体化への大きな一歩」と述べました。
11時30分、開通セレモニーとして、鋏入れ・くす玉開きが行われました。
左に富士の国やまなし観光キャラバン隊長の武田菱丸、右には今年誕生したばかりの山梨県身延町マスコットキャラクターみのワンが立ち、開通セレモニーを彩ります。
引き続いて、通り初めになります。
警察車両の直後には、富士界隈ならではの陸上自衛隊による通信車両が続きます。
通り初めの動画です。
通り初めの後に続き、身延山ICから南部ICまでの本線約5.2kmを車で静岡方面へ移動します。
南部ICで折り返してきた通り初め車両とすれ違います。
走行すると、トンネルと橋梁が繋がっている箇所の多さに気づき、工事の困難さを理解できます。
富士川大橋を渡ります。
南部ICには道の駅なんぶが併設され、SAの役割を担います。
開通区間を走行したタイムラプス動画です。
2021年8月29日16時、中部横断自動車道 南部IC─下部温泉早川ICが開通しました。