新東名(新秦野IC─新御殿場IC) 建設現場見学会(河内川橋・山北スマートIC・高松トンネル)

新東名(新東名高速道路)

 NEXCO中日本 東京支社は2023年12月14日、2027年度の開通に向けて建設を進めている新東名(新秦野IC─新御殿場IC)の建設現場を報道関係者に公開しました。

 新東名(E1A新東名高速道路)は、海老名南JCT─豊田東JCT間を結ぶ延長約253kmの高速道路です。建設中の新秦野IC─新御殿場ICの約25kmが完成すると、新東名は全線開通になります。新秦野IC─新御殿場ICの間には山北スマートIC、小山PA・小山スマートICを設置します。

photo新東名の工事区間に関する広域地図 資料:NEXCO中日本

 この日の見学会は、秦野工事事務所が管轄する約14.2㎞の区間で施工中の河内川橋、山北スマートIC、高松トンネルを巡ります。約4ヶ月前の7月にはスケールにびっくり! 新東名の建設現場を見て学ぼう!として、山北スマートICと河内川橋の建設現場が親子向けに公開されました。

 工事が進む河内川橋と山北スマートICの完成予想図です。トンネルとトンネルの間に、橋梁とスマートICを構築します。

photo河内川橋と山北スマートICの完成予想図 資料:NEXCO中日本

 河内川橋の建設現場へ移動します。
 河内川橋は、丹沢山地の急峻な谷に流れる河内川を跨ぐ、多径間連続鋼・コンクリート複合バランスドアーチ橋です。バランスドアーチ橋としては日本最大の規模となります。河内川橋の上下線と他1橋の上下部工を施工しています。急峻かつ狭隘な地形で資材や車両を運搬するため、インクラインと呼ばれる巨大なエレベーターや工事用トンネルを設けて工事を進めています。

 写真上は2023年7月、写真下は2023年12月です。橋の最大の特徴であるアーチ部の施工が最盛期を迎えていて、現段階でアーチ部のおよそ5割を施工しています。

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 河内川橋の完成予想図です。橋長は上り線約771m、下り線約692m、橋脚両岸の間隔は約220m、河内川からの高さは約125m、河川両岸のアーチを支える橋脚の高さは最高で88mになります。

photo河内川橋の完成予想図(左岸が東京側) 資料:NEXCO中日本

主要工事諸元は以下の通りです。 
・河内川橋(上り線):鋼コンクリート複合8径間連続バランスドアーチ橋/
 橋長771.0m、橋脚7基、橋台2基、大口径深礎杭、深礎杭、場所打ち杭
・河内川橋(下り線):鋼コンクリート複合7径間連続バランスドアーチ橋/
 橋長692.0m、橋脚6基、橋台2基、大口径深礎杭、深礎杭、場所打ち杭
・河内川第二橋(下り線):PRCポータルラーメン橋/
 橋長22.5m、橋台2基、深礎杭

 アーチの付け根となる基礎は大口径深礎杭を採用。深さ約30mの立坑を掘削、直径16mの基礎を打ち込んで、その上に約20mの橋脚を施工しました。

photo工事に関する詳細図 資料:NEXCO中日本

 河内川橋の左岸から全体を見渡します。アーチ部は、橋の両側からアーチを伸ばす張出し架設で進めています。

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 先端に移動作業足場を設置し、3か月ほどかけて構築した約6.5mのコンクリートブロックを張り出し両側それぞれ16ブロック施工することで架設を進め、最後に中央をつなげてアーチが完成します。アーチ部分の構築後、アーチの上に柱を設置し、その上部に鋼製の桁を設置します。床版や壁高欄などを設置して完了となります。

photoアーチ部分の先端に移動作業足場を設置

 右岸の崖上には、P3橋脚へのアクセスのために全長230mの工事用トンネルを設け、急峻な地形への対応と工程短縮を図っています。

photo工事用トンネル

 山北スマートICの予定地へ移動し、高台から東京方面に広がる建設現場を臨みます。
 山北町で唯一となる高速道路への出入り口になります。新東名の工事で発生した土砂の盛土上部に山北スマートICを設置します。盛土は高さ約80m、約320万m³で、東京ドーム約2.6杯分に及びます。

photoドローンとともに臨む神奈川県方面

 施工にあたっては3Dレーザースキャナやドローンを使った測量、マシンガイダンス・マシンコントロール重機を使った施工、点群データを用いた検査など、測量・設計から施工・検査に至るまですべてのプロセスでICT(情報通信技術)を活用しています。これにより、建設業の人手・熟練工不足の解決や、保全業務の効率化など様々な効果を享受できます。

 専用のタブレットを使用し、AR技術により現況と完成予想を重ね合わせて確認することが可能です。

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 リアルタイムにオペレータへ情報を提供するシステムを搭載した重機が作業を進めています。

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 山北スマートICの予定地には小田原北条氏の山城だった河村新城跡があり、発掘調査が行われました。

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 高松トンネルへ移動します。
 松田町と山北町をつなぐ高松トンネルは地質が脆く、掘削面が崩落したり、大量の湧水が発生したりするなどして工事が難航しています。専門家の助言を踏まえ、水抜きのボーリング工やコンクリートの吹き付けなどの対策を講じながら工事を進めています。全長は約2.9kmで、掘削は約5割完了しています。

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 上り線の坑口から、高松トンネル内部へ移動します。

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 壁面に高松トンネル工事と表示されています。

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 トンネル掘削の工法はNATM(ナトム)を採用し、一日あたり4~5m程度の速さで掘削しています。

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 掘削中に500t/h近い湧水が発生しましたが、前方へボーリングを行い地山の状況を確認すると同時に排水を行ない、現在は200t/hほどになっています。

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 断層破砕帯区間での掘削において、2022年9月にトンネルの変形や切羽(掘削の最前部)の崩落が発生し、2023年5月まで掘削を一時停止し、切羽の崩落対策などを実施しました。脆弱な地山への対策として、工事の安全性やトンネル本体の耐久性を高めるため、鏡吹付コンクリートやインバートストラットなど対策を実施しています。

 約1.5km進み、切羽に到着しました。掘削断面上部に長さ12.5mの鋼管を挿入し、薬液を注入することで地山を安定させる長尺鋼管フォアパイリングを採用しました。また、掘削面を安定させるためコンクリート吹付や地質により鏡ボルトを設置しています。

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 ドリルジャンボで鋼管の挿入が行われています。

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 鋼管を挿入する動画です。

 火山灰が堆積してできた緑色凝灰岩です。水分量が少ないと固さはありますが、水分を含むことで柔らかくなり、触るだけで崩れてしまいます。

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 今回見学した区間を含む新秦野IC─新御殿場IC間はの工事進捗率は約8割です。安全を最優先に工事の促進を図り、2027年度の開通を目指すとしています。

■工事の概要
 ・河内川橋
  発注者:NEXCO中日本
  受注者:鹿島建設・大成建設JV
 ・川西工事
  発注者:NEXCO中日本
  受注者:清水建設・岩田地崎建設JV
 ・高松トンネル工事
  発注者:NEXCO中日本
  受注者:清水建設・ピーエス三菱・岩田地崎建設JV