東京都と東京高速道路株式会社は、自動車専用道路の東京高速道路(KK線)を緑に囲まれた歩行者中心の空中回廊「Tokyo Sky Corridor(トウキョウ スカイ コリドー)」へと再生するプロジェクトに取り組んでいます。未来の歩行者空間を体感するイベント「GINZA SKY WALK 2024(ギンザスカイウォーク ニーゼロ ニーヨン)」が開催され、多くの人が有楽町・京橋・銀座・新橋を結ぶKK線の本線を歩きました。
GINZA SKY WALK 2024は2024年5月4日・5日・6日にKK線の本線上で催されました。主催は東京都、東京高速道路株式会社です。ウェブページでの事前応募申込抽選制で参加は無料、募集人数約1万5000人のところ約2万9000人の応募がありました。前回の銀座スカイウォーク(銀スカ)では募集人数約3000人のところ約1万5000人の応募があり、今回は応募枠を大幅に増やしています。
会場には4つのエリア「モビリティエリア」「プレイエリア」「エシカルエリア」「インタラクションエリア」が用意されています。
会場マップ 資料:GINZA SKY WALK運営事務局
前回、参加者はガイドとともに歩きましたが、今回は入口から出口まで一方通行で自由に歩くことができます。また今回、早朝の「高速道路上でランニング!モーニングプログラム」や夜間にビールなどを飲みながらの「銀座の夜景を特等席で眺める、ナイトプログラム」など、有料での体験が提供されました。
KK線の新橋入口から入場します。
新橋入口を進みます。
首都高都心環状線の汐留JCTから流入するKK線の本線と新橋入口の合流箇所を通ります。
歩いているエリアの由来などをまとめたGUIDE SPOTのパネルが掲示されています。パネルは新橋、日比谷、銀座、有楽町が用意されています。
2車線から1車線となり、ビルの合間を進みます。入場に必要なチケットの確認と手荷物検査が行われています。
「東京高速」と書かれたKK線のパトロールカーが展示されていました。
右へ大きく曲がるコーナーは、走行する新幹線を間近で見ることができる人気スポットです。
列車がひっきりなしに走るJR線を左手にして、直線が続きます。
モビリティの競演「モビリティエリア」です。歩行者をサポートする未来のモビリティをイメージした車両展示や試乗体験ができます。
電気自動車など、エコロジーに配慮した車両を展示しています。
線路側に席を配した休憩スペースを設置し、自由に休むことができます。
空が開け、地上部の数寄屋橋交差点に近づいてきました。左手に有楽町マリオンがあります。
晴海通りと外堀通りが交差する数寄屋橋交差点を見下ろすことができるスポットに着きました。
知的好奇心をくすぐる遊び場「プレイエリア」です。東京都が立ち上げた100年先を見据えた新たな緑のプロジェクト「東京グリーンビズ」のPRコーナーでは、タイムの種が配布されていました。「動かせるみどり」として、キャスターを取り付けたプランターを各所に配置しています。
子ども向けの遊具やワークショップを用意し、大人も子どもも楽しめる空間になっています。
各所でモビリティの試乗体験が行われています。
分岐の案内板があり、ここが高速道路であることを確認できます。
エシカル社会を体験「エシカルエリア」です。エシカルとは英語で「倫理的な」という意味で、広義的に「人や社会、環境に優しい」という意味を持たせています。再利用人工芝の上にはサステナブルステージを設置し、演奏やパフォーマンスが行われています。
地域産品ショップでの商品購入や「農福連携」(農業と福祉の連携)マルシェでの食事が可能です。
西銀座料金所の先は首都高速八重洲線に接続しています。
東京国際フォーラムを眺めながら先へ進みます。
再び右へ大きく曲がります。振り返ると、右側には西銀座料金所、左側に首都高速八重洲線から流入する際に通る西銀座乗継所を確認できます。
多様性や相互理解を楽しむ「インタラクションエリア」です。フィットネスクラブのコーナーなど、新しい自分発見ができるウェルビーイング(心身の健康や幸福)体験などが可能です。
新京橋出口に到着しました。先は白魚橋料金所があり、京橋JCTで首都高都心環状線に接続します。イベント区間はここまでとなります。
5月4日18時50分より小池百合子東京都知事による視察が始まりました。複数人が乗車可能な大型のモビリティに試乗します。
都知事の視察動画です。
19時になると、ステージで小池都知事、東京高速道路株式会社の加藤浩取締役社長、KK線再生プロジェクトの齋藤精一共創プラットフォームコンダクターの3者によるトークが始まりました。
加藤社長は「KK線を歩行者中心の公共的空間に整備するため、2つのことを考えている。一つは地元の方の多くの意見を取り入れることで、地元の方に愛されるような施設をつくりたいということ。もう一つは、いろいろな専門家の意見を聞いて整備に生かしたいということ。さまざまな意見を聞く場として共創プラットフォームを設けた。多くの意見をまとめ上げる共創プラットフォームのコンダクターを齋藤精一氏にお願いした」と齋藤氏を紹介しました。
齋藤氏はスライドを用いながら、「共創の力で地域と企業をつないで、みんなで一緒に会話をしながらつくっていくプロジェクト。これからしっかりと透明性を持って皆と対話しながら計画を進めたいと考えている」と述べました。
小池都知事は「2030年を目指して3000万人までインバウンド(訪日外国人)を増やすべく、いろいろなプログラムを組んでいる。新たな観光地を創出することがその一つで、例えば東京都庁の壁面にゴジラのプロジェクションマッピングを行い、これまで誰もいなかった夜の広場に昨日までで約1万人もの人が入った。東京に行くならKK線に行こう、そういう形になればよいと思う」と語りました。
KK線は、東京高速道路株式会社が運営する全長約2kmの自動車専用道です。1959年に一部開通、1966年に全通しました。戦後の銀座復興と渋滞緩和のため、銀座周辺の外堀、汐留川、京橋川を埋め立てて高架道路を建設し、首都高都心環状線および首都高八重洲線と接続することで都市高速道路網の一環として機能してきました。KK線の大部分は銀座1丁目から8丁目にかけて14棟あるビルの屋上を通ります。道路建設費と運営費をビル賃貸の収益でまかなうことで、通行無料の自動車専用道路を提供しています。
東京高速道路(KK線)の位置図 資料:東京高速道路株式会社
KK線は首都高ではなく、東京高速道路株式会社が運営しています。首都高路線から白魚橋、西銀座、汐留に設けられている乗継所を通過して通行が無料のKK線に入り、10分以内に首都高路線へ戻る場合、首都高を出た扱いにはならないよう設定されています。ETC(自動料金収受システム)利用によりノンストップで通行が可能です。
現在、首都高都心環状線における日本橋区間の地下化や築地川区間の地下化、延長約800mのシールドトンネルを含む新たな地下ルートとなる新京橋連結路など、整備完了のめどを2030年代から2040年代として銀座エリア全体の路線整備が進んでいます。
周辺高速道路の整備路線図 資料:東京都
首都高日本橋区間は構造物の損傷が激しく、老朽化対策として更新事業が必要なため、周辺のまちづくりと連携して地下化を推進しています。地下化にあたっては、渋滞緩和を図るため江戸橋JCTの都心環状線連結路を廃止し、環状機能を八重洲線に転換します。
八重洲線と接続するKK線は大型車の通行に対応していないことや、大規模更新工事を実施する築地川区間との連携が可能であること、晴海線整備によるネットワークの進展により更なる交通の円滑化が期待されることなどから、新たな都心環状ルートとなる新京橋連結路を整備します。
KK線の通過交通が新京橋連結路に転換し、自動車専用道路としての役割は大きく低下することから、KK線が通る既存施設の上部空間を歩行者中心の公共的空間として再生、活用する方針が決まりました。
幅員が約16m以上の区間における整備の将来イメージ 資料:GINZA SKY WALK運営事務局
KK線を再生するTokyo Sky Corridorは2020年代から工事に着手、2030年代から2040年代にかけて完成する予定です。歩行者中心の公共的空間としての再生にあたっては、植栽、アートなどの導入、視点場の工夫や、日本の文化、有楽町・京橋・銀座・新橋など沿線地域の多様な個性をアピールするなどにより、世界から注目される観光拠点を目指します。